第65話:その魔王は勝機を語る。~解析された「進化」~
【前回までのあらすじ】
覇王の居城にて、ついに始まった歴史的な円卓会議。
しかし、顔を合わせた途端に殺気をぶつけ合う覇王アンドレアと女王ディネルース。
マクマリスは、即座に決裂しかけた彼らを黙らせるため、衝撃の映像を公開する。
そこに映っていたのは、無敵を誇る彼らが機械生命体に蹂躙され、無残に死にゆく「未来の敗北」の姿だった。
マクマリスは動じることなく解説を続けた。
「この胸部にある赤いコアが奴らの心臓だ。薄いベールに保護されていて、体は水晶のように硬い。我々の武器は全く通じなかった」
「武器が通じない……だと?」
「そうだ。だが、雷属性に耐性がないことも分かっている。サイロスの魔法剣士部隊が全軍の武器に雷属性付与をすることで、多少は渡り合えた」
サイロスが独り言のように呟く。
「私が……」
マクマリスは改めて皆を見渡して言う。
「敵の武装は、腕のブレードによる近距離攻撃と、海水を圧縮して胸部より噴射する遠距離攻撃の二パターンを確認している。もっとも、今後対峙する際に、武装が更に追加されている可能性も考えられるがな」
ザルティムが髭を撫でながら尋ねる。
「つまり、その敵は新たに武器を作り出す機能があるということかね?」
「正確に言うと、武器だけではない。装甲についてもアップデートができる」
「アップデートとな……」
「生物の進化を短期間で行うようなものだ。私がエスペル島で初めて対峙したときには、遠距離攻撃の機能はなく、装甲も鋼鉄程度のものだった」
ガエサルが隻眼を光らせる。
「この大陸に来た個体は、エスペル島での戦いを踏まえて、武装と装甲を強化したというのか?」
「その通りだ。たかだか一週間ほどの間に進化するとは、私ですら盲点だった」
ウルスヌスがテーブルを叩いた。
「そんな敵に勝ち目あんのかよ? 俺たち、未来じゃ負けてんだろ?」
マクマリスはウルスヌスを見る。
「確かに負けた。だが、あの時はディネルースも源流も、アルフィリオンもララノアもいなかった」
「あぁん? なんで、連邦さんは戦ってくれなかったんだよ? 怖くて逃げ出したか?」
ウルスヌスの挑発に、ララノアが色めき立って立ち上がった。
「貴様、無礼だぞ! 訂正しろ!」
アルフィリオンが杖に手をかけ、源流も愛刀の鯉口を切る。その様子を見て、四天王らも武器に手をかける。
再び、殺気が辺りを包む。
その一触即発を止めたのは、意外にもディネルースだった。
「ララノア、座りなさい。貴方たちも武器から手を離すのよ」
静かな一言で、ララノアが座り、アルフィリオンと源流も殺気を消す。
ディネルースはウルスヌスに微笑んだ。
「にわかに信じがたい話ではあるのだけれど……連邦は帝国に敗れて、機械生命体が上陸する時には、私たちはこの世にいなかったんですって」
彼女は冷たい笑みを深めた。
「ごめんなさいね。私たちがいなかったばかりに、大変な思いをさせてしまったみたいで」
そして覇王を見る。
「でも今度は大丈夫よ。頼りない貴方たちを、私たちが守ってあげるんだから」
覇王が大笑いした。
「ぶわはははは! 女王、冗談が上手くなったな! 我々に負けた分際で、我々を守るだと? 聞いたか、お前たち」
ウルスヌスも鼻で笑う。
「そのお笑いのセンスを活かして、兵士たちの緊張を和らげる任に就いてもらいましょう!」
フッ、とディネルースから笑みが消えた。
部屋の温度が絶対零度まで下がる。
「……死になさい。絶対零度」
ディネルースの両手から凄まじい冷気が溢れ出す。
それを感知し、ザルティムとスーリンディアも即座に迎撃魔法の詠唱を開始する。
しかし、一足早く魔法を放ったのはマクマリスだった。
「時間停止魔法!」
キィィィン……。
大会議室の円卓が、色のない空間に包まれた。
だが、今回は物理的な時間を止めるのではない。魔力の流れ、因果の時間を断ち切る精密操作。
ディネルースの分子運動を停止させようとする冷気、ザルティムたちの熱エネルギー。双方が霧散する。
「なんと……」
詠唱を強制中断されたザルティムが驚く。
「魔法を無効化させる空間を作るとは……」
スーリンディアも目を丸くする。
マクマリスは魔法を維持したまま、ディネルースを諭した。
「こんなことで、約束を反故にする気か」
ディネルースは舌打ちし、詠唱の体勢を解いた。
「……分かったわよ。でも、仕掛けてきたのは私ではなくてよ」
マクマリスは覇王と四天王たちにも鋭い視線を向けた。
「貴様らも大概にしろ。同じことを何度も言わせるな」
覇王はバツが悪そうにマクマリスを見る。
「……すまない。お前たちも辛抱しろ。魔王、話を続けてくれ」
場が鎮まったのを確認し、マクマリスは停止魔法を解き、大きく息を吐いた。
その際、視界の端にララノアを捉えたが、彼女の口元が微かに緩んでいるように見えた。できる男への評価か、あるいは単なる安堵か。
マクマリスは動じることなく、まず源流を見た。
「未来では敗れたが、今度は連邦の幹部も揃っている。源流は覇王と渡り合えるほどの剣豪だ」
続いてアルフィリオンを見る。
「アルフィリオンは私以上の死霊術の使い手。彼のアンデッドは大きな戦力になる」
カーラが唇を噛む。
「アンデッドなど……」
マクマリスは気にすることなく続ける。
「ララノアは頭の回転が早く、完璧にタスクをこなす。後方支援の要となるだろう」
そしてディネルースを見る。
「ディネルースは、エスペル島を襲った先代魔王ガングダードを退けるほどの実力者だ。その火力は計り知れん」
最後に、ヘギルを見た。
「そして、ヘギル。最高の頭脳の持ち主。彼が作り出す武器は我々の希望となる」
マクマリスはディネルースに断りを入れた。
「事後報告になってすまないが、ヘギルには未来のヘギルが考案、もしくは開発済みの設計図を渡してある。……ヘギル」
【次回の予告】
「毎分六百発の雷撃。高周波振動剣。……勝てるぞ!」
時間停止で場を制したマクマリスに続き、ヘギルが提示したのは「未来の兵器群」。
魔導突撃銃、竜の鱗を使った複合装甲、そして禁断の「魔導鎧」。
男のロマンと殺意が詰まった新装備の数々に、四天王すらも興奮を隠せない。
そして装備が整った今、マクマリスは守りではなく「攻め」の一手を提示する。
「奴らが来る前に、海の底へ殴り込みに行くぞ」
魔導兵器のお披露目。
第66話は、明日の21時40分更新です!
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