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その43


目を覚ました田沼は起き上がり俺を見下ろす。 




「大丈夫?! 急に倒れたんだよ2人とも」

「大丈夫だ広瀬、西澤も目が覚めてるみたいだしなんとかなったな」

「ごめん田沼、何回あんたに助けられてんだろって思うよね」

「気にすんな」




田沼は近くに落ちていたサバイバルナイフを拾い上げた。




「まったく、こんなものまで使うなんてな。 とんでもねぇ奴だ」




俺に向かって言うそのセリフは特大ブーメランだぞ田沼…




「待て… 広瀬、田沼。 そいつは違う」




重い身体を起こす、さっきまで悪者だった俺が何言っても信じられないとは思う。




「広瀬、そいつは田沼だがさっきまでの田沼じゃない」

「え? ど、どういうこと西澤?」

「ダメだ広瀬、西澤はもうとっくにおかしくなっている。 こんなことをしでかした奴だ、ナイフがないからって不用意に近付くな」




くそ、どの口が言ってやがる。




「西澤のことは警察に任せよう、それなら俺達が危ない目に遭うことはもうない」




くそ!! 何かないか? いや例え何あってもこの状況覆す事なんて。




「う、うん…」




待て…… 待てよッ!




「待てよ広瀬、行く前に俺に貸しをちゃんと返せ!!」

「へ?! か、貸し??」

「何言ってんだこいつ?」

「お前言ってたろ広瀬… それにお前が言ってたやりたいことまだ全然やってないだろ!!」

「え…… ッ!!」




広瀬は俺の肩を掴んで顔を覗き込んだ。 




「た…… ぬま?」




恐る恐ると口にした広瀬は次に田沼を見て俺をまた見る。




「お前が作ってくる弁当な、実はあんまり美味しくない」

「え?」

「手作りに拘ってんのかなんか知らないけど冷食の方がまだマシだ、美味く作れるまで気が遠くなりそうだな、それに最近距離も近いしで鬱陶しかった、変な態度になってる好意も最初はゲンナリした、けどお前は自分が満足しないと引き下がらない奴だったから仕方なく折れてやってた。 俺みたいな自分勝手な奴にこんなことさせるなんてお前くらいだ」

「あ、あははッ、酷ッ…… なんで西澤が? でも、でもこんな酷い事言うの田沼だ、田沼しかいない」

「違うッ!! そいつは西澤だ、田沼は俺だ、そいつなんかじゃない!!」

「あたしにも全然意味不明なんだけど…… でもどうして?」




そりゃそうだろう、広瀬には後で説明が必要だな。 とにかくよく信じてくれた。




「バカな…… どうして西澤なんかの言うことを信じる?!」

「広瀬の好意が田沼に向いた最高の瞬間に入れ替わりをしたつもりだろうが残念だったな」

「い、入れ替わり? え、そんなこと出来るの??」




これでとりあえずは安心… なんてわけがない、田沼の様子が変だ、あいつにナイフが渡っている。




「ふざけるな… ふざけるなよ!! 広瀬は俺のものだ!」

「きゃあッ!」




予想通りナイフを突き立てるがそれは俺に向かってじゃなく広瀬の方にだった。




手のひらでなんとか抑えた、刃が貫通して広瀬の顔スレスレで止まっていた。




「田沼ッ? え、え?!」

「違う、もともと俺は西澤だ」




なんて力だ、田沼はブチギレて100%中の100%、対して俺の身体はボロボロでセンスとかの問題じゃなく全く相手にならない。 迂闊すぎたここまでの俺の行動だったが1番迂闊だったのがあまりにも早くここに来すぎた、こうなることが予想出来てたのに。 




田沼は恐らく俺が来るまでは待っていた、清春の協力が得られなかったにしろ時間さえあったならもっと何か準備出来たのに俺には広瀬を拉致られたのを見せられてそれすら失念してた致命的ミスだった。




「ダメ、ダメだって2人とも!」

「邪魔するなぁあああッ!!」




田沼に蹴り飛ばされて広瀬ごとふっ飛ばされる。




田沼のくせになんつー脚力だ、ストイックに鍛え過ぎた。




「いたたたッ、た… 西澤大丈夫?」

「ああ…… なッ?!」




ナイフを庇った方の腕に激痛が走った、折れてはいないと思うがヒビくらい入ってるかもしれない。




「くそッ、広瀬、俺が田沼をなんとか抑え込むから誰か助けを呼んで来てくれないか?」

「そんなことさせるか!!」




ダメか、そう思った時玄関のドアが開き田沼の動きが止まった。




「田沼ッ!! …… っとこれは状況的にどうなってんだ?」




清春だった、どうして? と思ったが助けに来てくれた??




けれど一瞥しただけじゃこの状況理解し難い、田沼がナイフを? 俺と広瀬が倒れてる? どういう状況? 混乱するはずだ。




だがゆっくりと清春は歩いてきて田沼の横を素通りする。 その瞬間田沼はナイフを清春に向かって刺そうとした。




後ろ! という言葉も間に合わないほどの速さだった、清春は後ろ蹴りを田沼の鼻に食らわせた。 田沼は倒れたと同時にナイフが手から離れ清春がそれを取る。




「な、なんで?」




田沼が鼻を押さえながら清春に質問した。




「要は俺とタイマンした時もそんなギラギラ殺気だった目をしてなかったぜ。 ムカつくけどそんな奴じゃないんだ、喧嘩してもなるべく傷付かないように手加減するようなツンデレだからな要は。 しかも要だったら今の蹴りもきっと避けてたよ、中身が田沼だったらいくら鍛えてても多分避けられない」

「清春……」




いやノーモーションで後ろ蹴りされたら俺でも避けらんねぇっつの。




「ボロボロじゃん。 本当にどうしようもないなお前は」

「なんで来たんだ?」

「…… 知らねぇよ」

「どうせ五木辺りに焚き付けられたんだろ?」

「ま、それもあるけどクズヤローのお前がどんなに怪我したって同情しねぇし、ざまぁみろだけど腐っても幼馴染だからな。 仕方ねぇからダメ人間でも助けてやるよ」




良かった、そう思ったのと同時に俺は張り詰めていた緊張感か疲労感、どちらもあったのかもしれないが再び意識が途切れた。





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