第十一話 エルフ殺しの勇者2
■弓使いポークスの証言——————
裁判長席の右側にある証人席に、ひょろりとした少年が着席した。
「ぼくは弓使いのポークスと言います。そこにいるライデンさんのパーティーで弓使いとして、一緒に冒険をしていました」
「さて、ポークスさん」
検察官が片眼鏡のふちをわざとらしくこすりながら尋ねた。
「あなたはここにいる被告マルク・ライデンが妻のミーミャさんを殺すところを見たと……」
「異議あり!。殺すということばで、殺人を断定しています!」
「異議を認めます。検察官はことば選びに注意してください」
「はい。あなたはここにいる被告マルク・ライデンが、妻のミーミャさんの首を刎ねるところを見た、と証言しておりますね。くわしく話していただけますか?」
「はい」
ポークスの話はマルクの証言を裏付けるものだった。
5階層で『宝玉の短剣』を手に入れたが、4階層で濃い霧に包まれ、そこをゴブリンに襲われた。そこで勇者マルクはしんがりをつとめて、ほかの仲間たちの撤退をたすけてくれた。
「気づいたときには、ぼくだけが3階層までたどりついてて……」
「ポークス、インロンは、インロンはどうなった?」
被告席からマルクが声をあげた。
「被告人、勝手に話しかけないように!」
ゴードリーは注意をうながしたが、ポークスは悲しそうに顔をゆがめて言った。
「マルク、インロンはやつらの仕掛けたトラップでやられたよ」
「そうか…… 残念だ……」
「証人は話を続けてください」
「あ、はい。ずっと待ってもだれも戻ってこないので、ぼくはしばらくして、もう一度4階層に戻ったんです。そうしたらマルクとミーミャが言い争っているのが見えました」
「見えた? 聞こえたではなく?」
「かなり離れたバルコニーのようなところから、対岸にある回廊にいるふたりが見えただけです。残念ですが、なにを話しているかはわかりませんでした。だけど、言い争っていることだけはわかりました」
「それで、どうしたのかね?」
ポークスが目頭をおさえて、首をよこにふった。
「ミーミャがその場にひざまずいて……マルクが……うしろから剣をふるって……」
会場全体がどよめいた。
「静粛に!」
ゴードリーはあわてて木づちを打ち鳴らした。
「マルク…… ぼくはいまでも信じられないよ。あなたとミーミャはあんなにも愛しあっていたじゃないか!」
ポークスは涙を流しながら訴えていたが、マルクは顔をあげることもなく、一切の反応をしめさなかった。
■弁護人の提案 ——————
「裁判長、よろしいでしょうか?」
弁護人が指を一本たてて、注意をうながしてきた。
細くしゅっとしまった顔、青緑色の皮膚、首すじまで、うろこがうっすらと体表をおおっている。リザードマンの王家の血筋の者という、いまのところ女性の弁護人(リザードマンは相手や外部環境によって雌雄が変化するので、うかつに女性や男性と呼べないのがやっかいだった)。
難関『魔法律大学』を首席でも卒業したインテリで、頭の回転のすばやさと、賢者並の知識をいつも鼻にかけている。
種族の特徴で仕方がないとはいえ、目がときおり縦にほそくなるのには、いつもぎょっとさせられる。優秀だとは認めていたが、自分の裁判ではあまりお目にかかりたくない種類の弁護人だ。
「弁護人側は、被害者本人をこの法廷に呼びたいと考えております」
「被害者本人! それはどういうことかね、弁護人!」
「弁護人側は、死者の魂を蘇らせ具現化するという、高難度の魔法を使える大賢者を呼んでおります」
「な、なんと! 死者を蘇らせるのは『禁忌の黒魔術』ではないのかね!」
「裁判長、よくお聞きください。死者の『魂』を一時的に蘇らせるのです。死者そのものを蘇らせるわけではございません」
「あ、おお…… そ、そうかね。それなら違法ではないな」
裁判長ゴードリーが許可すると、ひとりの賢者が法廷に招き入れられた。
ぶ厚いローブをまとい、顔をフードで隠しているため、顔はまったく見えない。
「ではさっそくはじめてくれ」




