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―小国―

「こんばんは。音無君」

「こんばんは、アンダンテさん」

「ここが二人の愛の巣・・・」


 新たな来訪者にさらっと変な事を言われたがスルーした。


「ファフニール改めスミレさん、こんばんは」

「呼び捨てでよいぞ」

「アンダンテ、お主の事は知っておる。こうして話すのは初めてだがな」


「ええ、私もアナタの事は知っているわ。一応初めましてよね」


「あの、二人共」


「何?」

「なんだ?」


「俺の腕から離れて貰えませんか?」

 アンダンテもスミレもそれぞれ俺の左右の腕にしがみ付いて離れない。


「気にしないで良いわ音無君」

「そうだ、気にしないで良いぞ惣一郎」


「この体勢めっちゃ話しにくいんで、せめて座って話しましょう。ソファーも3脚あるわけだし」

 惣一郎は渋る二人を振りほどき、一人ずつ着席させた。


「ふう、所で二人共その恰好は何ですかね?」



「スミレは童貞を殺す服で、アンダンテさんはOLですか? 服を着るならブラウスのボタンはしっかりかけて下さいね」


「あれ、おかしいわね。日本の娼館だとこんな感じだったと思うけど」


「やめろ、俺のプライベートが疑われるだろ。そんな所に行った事は一度も無いぞ」


「なるほど、惣一郎はしっかりした服を着ている方が好みか。そう言えばあの時も服を着ろとうるさかったな」


「スミレも変な所で納得するな! 服を着るのは人としては普通の事だろ!」


「音無君、これなんてどうかしら?」

 アンダンテが瞬時に着替える。


「何でYシャツ一枚とか際どい所を攻めてくるんだよ! いつものだるだるなローブで良いだろ」


「なるほど、そういったのも好みか! ならこのドウテイを殺す服も同じじゃないのか?」

「スミレ、それはきっとあからさま過ぎて逆にダメなパターンなのよ。音無君は普通の服でくすぐった方が良いみたい」

「なるほどな。流石第一夫人を自称するだけの事はある」


「おいオマエら、全部聞こえてるぞ。人の性癖分析で盛り上がるな」


(こういうのはどうだ?)

(チャイナドレスか、それも良いわね。ちなみにこういったのも良いと思うわ)

(それはあちらの世界の下着だな。こういった面積の少ない布でも形次第でくすぐれるのか。ふむふむ)


 二人のファッションリーダーが仲良くファッション会議を始めたので会話を諦めてソファーに横になって終わるのを待つ事にした。


「音無君、お待たせ」

「待たせたな」


「最終的にチャイナドレスで落ち着いたんですね。似合ってますよ二人共」

 アンダンテは赤、スミレは青色のチャイナドレスを着ている。


(ふふ、言ったとおりでしょ?)

(おお、流石だな)

 二人は笑顔で頷いている。

 なにやら仲良くなったみたいで何よりだ。



 着替えが落ち着いた所で俺は話を始めた。

「それで、今後の事なのですが、このまま北上するか西のドラゴンロードを目指すかで考えて居るのですが、スミレは何か意見有りますか?」


「我は惣一郎の行く場所へ着いて行くだけだ。ドラゴンロードはいつでも良い」

 スミレは満面の笑顔でそう答える。


「では北上するルートは変えずに緑の国を目指します」


「それと、先程の商人の話の件ですが、少し遠回りになるけど方向は同じなので行ってみようかと思います」

「そうね、本が集まるなら探す手間が省けるし是非お願い」

「我らが知らない間に新しく作られた小国か」


 祠の奉納の宴の際、丁度村に来ていた常連の商人も参加していて、ガボットさんが彼から得た情報によるとイーストロックよりさらに東の小国 クロイツェル が最近かなりの数の魔法書を収集しているらしいとの事だった。


 魔法書もピンキリだが、武力増強には欠かせない物なので、近いうちに隣国と戦争を起こすのではないかという噂が立ち始めてるという。


 各所で魔法書や関連書籍を仕入れてクロイツェルに売りに行く商人が増えたという事実もあって信憑性は高い。


「ではコルグに戻り次第クロイツェル国の情報も集めましょうか」



 クロイツェル王国、建国してから900年程の国。山間にあり南側の国で珍しい鉱山を保有している。

 主な産業は果樹と武器の輸出。

 小国ながら兵士の多くが魔法剣を有しているという武力の高い国家。


 特に好戦的な国家では無いが隣国から幾度の戦争を仕掛けられるも、地形と武力よる優位を利用し全ての侵略を跳ねのけてきたという。

 

 赤の国の各街とも物資の取り引きはあるが、どこの国とも同盟は結ばないというはぐれ国家らしい。

 魔法剣や他の武器を扱う時点でその辺の事業を独占している緑の国や黄の国から良く思われないだろう事は分かるが、小国なので規模もたかが知れてるから特に大きな争いにもなって居ないという感じだろうか。


「そして噂の域は出ませんが、数百年に渡り魔女を信仰しその叡智によりあの辺境の地でも栄えている」


「というのが帰りがけにローランドで仕入れて来た情報です」

 コルグに戻るついでにローランドに寄ってミハエル達にクロイツェル王国の情報を貰って帰ってきて、宿にて他の3人にイーストロックから戻って来る間の説明をした。


「なんか知らない間に色んな事が進んでいて頭の中が追いつかないんだけど、取り合えずその王国に行くのは分かった。あとその変わった服の美女もオレ達のパーティーに加わるって事で良いんだよな?」


「スミレさん!宜しくお願いします!」

「宜しくお願いします!」

「宜しくな!」

 セレーナとメリッサ、ダリアが挨拶を交わす。


「ああ、突然ですまないがこれから宜しく頼む」

「ワン!」


「それでソウイチロウさん、その王国に行くのは良いが、目的は何なんだ?」


「本の収集ですね。商人達が各所で仕入れた本が集まって来るみたいなので、その中に目当ての本があるか探す予定です」


「魔法書と関連書籍ですか・・・どういった物をさがしているんですか?」

 メリッサが訪ねてくる。


「無属性に関する事が書いてある書籍か歴史書ですかね。とにかく古い本を探しています。王都でも古い文献が少なくて、その辺りなら歴史の長い緑の国に行けば沢山あるとは思うのですが、行きがけと言いますか、せっかく一カ所に本が集められているのであれば探しに行こうかなと思った次第です」


「それと、魔女というのも気になります」


 レミ曰くこの世界での魔女というのは単に魔法が使える女という意味ではなく、特に著しく秀でた力のある女性の魔法使いの事を指していて、その筆頭が無限の二つ名を持つアンダンテだそうだ。


 となるとアンダンテの様な力のある魔法使いがクロイツェル王国に居るのか、単に過去の文献等からその偉業を引用して新しく宗教みたいなものが作られたのか、それとも違う何かがあるのか。


 王都で俺に差し向けられた刺客の事もまだ分かっていないし、あの刺客も未だキューブの中だ。

 その事についても何か手掛かりでも得られれば良いと思う。

 一つ不安があるとすれば、俺自身が釣り餌になる事で一緒に居るパーティーメンバーにも危険が及ぶという事。


 魔族に関してはルーナとスミレが200%探知出来るが、それ以外に関しては常に警戒している必要がある。

 何にせよ気の抜けない旅になるだろう。

 

 俺の報告も終わり、メリッサとダリアの二人の話になったが、二人は数日で結構な数の魔物を狩っていたらしく、キューブのお陰でかなり稼ぐことが出来たとの事だった。


 稼ぎの半分をパーティーの活動資金にと言って寄付してくれた。

 キューブが無ければその半分も稼げなかったからと大盤振る舞いだ。


 セレーナはエルカとレージェに稽古をつけて貰い、彼女なりに自信がついたと言っていた。

「師範に「まだ教える事は多いが、しばらくは旅で武者修行して、行き詰まったら戻ってこい」と言われました!」

 と、こんな感じでこれからしばらくは武者修行で鍛えろと言われたみたいだ。恐らくは実践の経験を積んでこいという事なのだろう。

 セレーナを迎えに行く際に、エルカとレージェに挨拶をして道場を後にした。

 しばらくはエルカの笑顔も見れなくなると思うとちょっと寂しい。


 道中はスミレがみんなの稽古をつけてくれると言ってくれたので彼女に任せようと思う。

 うちのパーティーで一番強いのは彼女だからね。

 ちなみにルーナ以外の皆には彼女の正体は伏せている。


 パーティー全滅の危機でもない限り彼女がの龍の姿になる事は無い。

 何かの拍子に龍の事が知れ渡ると混乱を引き起こすだろうし、魔族の動きも活発化するかもしれない。

 敵の動きが見えない以上、こちらも目立った動きをしたくないという所だ。


 明日からはゆったり馬車の旅だ。






いつもお読み頂き、ありがとうございます。


9月も出来るだけ頑張って投稿したいと思います。


読みに来て頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!


少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。

これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると嬉しいです。


更新時間は通常、朝8時に致します。

9月も頑張ります!

宜しくお願いします!

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