―リネットの町―
「しっかし違和感あるよな~。数日経つけどまだ慣れないぜ」
「そうですね。見慣れてしまってるからと言うのもありますが」
「うーん、でもカッコいいと思います!」
「ワン!」
「確かにこんなに綺麗に変わるとは自分でもびっくりだ」
「そういう術だからな。変わるのは当たり前だぞ」
何が変わったのかと言うと、俺の髪色だ。
異国へ赴くにあたって俺の髪色がバレた時に問題を引き起こすのは明白なので、スミレの変化の術をかけて貰い髪色を茶色に変えたのだ。
茶髪にしたのなんて何十年ぶりだろうか。
転生前は自分の髪質では綺麗に脱色できなかったのだが、スミレの術では完璧に綺麗な茶髪になっている。
フードを被る生活から解放されるのはそれなりに嬉しい。
「リネットにはもうすぐ着くぞ。小さな町だがイーストロックへ行く冒険者の拠点にも使われてるからそれなりに栄えてる。ソウイチロウさん達は初めてなんだろ?」
「ええ、初めてですね。楽しみです」
「しかし竜騎士が山の封鎖を解いたって報告に来たのはびっくりしたな。初めて見たぜ」
「ですね、私も初めて竜騎士さんを見ました」
俺達が祠を届けてる間の話になるのだが、ダリアとメリッサが討伐依頼を完了し、ギルドへ報告に戻るとタイミングよく竜騎士ジャックがギルドに報告に寄ったみたいで、ギルド内はかなり騒然としていたらしい。
西の大陸に戻るついでにコルグのギルドへ封鎖解除の報告に来たのだろう。
勿論ジャックは龍の事については何も言っていないだろうが、その場にいた少数の冒険者達は龍がイーストロックから居なくなったのだと理解し、封鎖解除の話は1日で街中に知れ渡っていた。
まさか数日後にその龍が人に姿を変えてコルグに来るとは誰も想像つかないだろう。
リネットという麓の町は、山へ魔物狩りに来る冒険者達の寝床となっていて宿屋が多く装備や道具等豊富に揃っていて、国境を超える際の中間地点として補給も兼ねて寄って行こうという話になった。
「それじゃあ夕方まで自由時間で」
リネットへ着くと宿を取り各自補給品の買い出し後、自由時間とした。
「惣一郎はこの後どこかへ行くのか?」
「はい、本屋があるとの事なので薬学の本や魔導書の類もあるか見てみる事にします」
俺はスミレと補給品の買い出しへ、他4人はすぐ近くの森へと魔物狩りに出かけた。
ダリアとメリッサは新しい武器を手に入れてから魔物狩りが楽しくて仕方ないらしい。
セーラは「武者修行です! ソウイチロウ様、沢山倒してきます!」とルーナと一緒に元気に森へとかけて行った。
「うーん、植物学の本は王都にあったのと同じのか。図鑑系はあっても困る物じゃないから買っておくか」
図鑑を1冊買って店を出るとスミレが話しかけてきた。
「惣一郎、本を探しているなら本屋をやれば良いんじゃないか?」
「え?」
「商人のように本を仕入れて売れば良い。」
「あ!そうか。それは名案ですね! なんで今までその発想が出て来なかったんだ!」
アンダンテの本を探すのも俺の目的の一つでもあり、旅の行商として本屋を開けば本を探しているのも自然だし、今回立ち寄るクロイツェル王国の中でも本を探して回るには都合が良い。今まで怪しまれた事は無いが、これからはどうなるか分からない、何事も慎重に行動したい慎重派のオジサンとしてはちゃんとした言い訳や理屈は用意しておきたい。
赤の国の書状はクロイツェル王国では何の効果も無いので旅の冒険者が本を探すよりは古書を扱う商人の方が自然だ。
「魔術書や魔導書、過去の文献等を探して買い取りをしている古書の買取行商という肩書にすればいいな」
惣一郎はリネットの本屋に引き返し魔法書を10冊と図鑑を5冊程買い足して、王国で商いをする体裁を整えた。
「この商業ギルド証が役に立つと良いな」
商業ギルド証は3国共通の物だから同盟に入って居ないクロイツェル王国に商業ギルドは無いと思うが、少なくても商人の間ならこの証を見せれば身分や立場を証明する事が出来るはず。
きちんと役に立つ事を祈ろう。
その後、夕方まで他の買い物を済ませながら二人で町を散策して宿へと戻った。
「ただいま戻りました!」
「ワン!」
セレーナとルーナが元気よく宿の部屋へと戻って来た。
他の2人も特に怪我等は見えず、元気な様子。
「イーストロックの魔物がよそから戻って来始めてるみたいで、結構な数の魔物を狩って来たぜ!」
「はい、全部で16体狩りました。解体してキューブに入れて有ります」
「ワン!」
「おお、それは凄い。次にギルドに寄るのが楽しみですね」
「今回は誰も銃使ってないぜ!」
「はい、この武器で倒す事が出来ました! スミレさんありがとうございます!」
「礼には及ばん、武器の性能を少し足してやっただけだ」
先日スミレは二人の装備を見て興味を持ち、ダリアとメリッサの武器を強化したのだった。
ダリアのツヴァイダガーはそもそも龍の鱗で出来ていて、スミレ曰くティアマットが己の鱗で作った武器らしく、強力な土属性が付与されていて龍の鱗と同じ硬さを持ち、刃こぼれをせず折れもせず切れ味も落ちないという素晴らしい2本セットの短剣なのだが、それに加えてスミレ(ファフニール)の属性である毒も付与し生物にとってはかなり恐ろしい短剣となった。
メリッサのエーテルワンドは毒の魔法を放てるようになると同時に耐性魔法と解毒魔法も使えるようになった。
スミレ曰く、この世界のあらゆる毒を解毒し、また、防ぐ事が出来るという。
(さすが瘴套龍! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ!)
(麻痺で痺れるあこがれるゥ!)
彼女の毒には強麻痺毒も含まれていて、2本の短剣にはそれぞれ麻痺毒と猛毒が付与されている。
メリッサの方は様々な毒の魔法を使えるようになったらしく、今回の16体も彼女達の実験台になったみたいだった。
運が悪かった魔物達にはちょっとだけ同情する。
食事をしながら楽しく話をしていると、スミレが立ち上がり何かを探る様に辺りを見回した。
「スミレ?」
「惣一郎、敵だ」
「「「え?」」」
ルーナが探知出来ない距離から敵が来るらしい。
「魔族ですか?」
「似ているが何か違う」
咄嗟に思いつくのはゴーレムだが、ゴーレムなら転送されてきたと同じくらいでルーナも気が付くはず。
「魔族以外の新手ですか」
「ああ、恐らくはな。敵は空から来る。準備をしろ」
「「了解」」
「「わかりました」」
「ワン!」
ダリアが酒場に居た知り合いの冒険者達にリネットに向かって敵が来ると警告し、戦える者達は酒場から街の外へと向かった。
「来たぞ、あれだ」
スミレの示す方角を見ると夜に紛れて空を飛ぶ数十の飛行体の影が見える。
飛行体が近づくにつれ正体がつかめてくる。
「あの大きさ、ワイバーンだ!」
「火炎弾に気をつけろ!」
索敵のスキル保持者が叫ぶ。
弓術を持つ戦士達は弓を構え、ダリアは後方で建物の上からライフルで狙いを定める。
全員が戦闘態勢になり、それぞれのパーティーが離れて陣形を組む。
主力の魔法使いと弓使いを守る陣形だ。
スミレ以外はだれも空を飛べないので地上で応戦する。
「我が出鼻を挫いてやろう」
「頼んだ」
スミレが一瞬で消えてワイバーンの手前空中で魔法を放つ。
【アイスランス】
彼女の魔法は惣一郎のより早く無数の氷の矢が生成されてワイバーンの群れに向かって射出されていく。
「グャァァァァ!」
先頭のワイバーン数体が地上へと落下し、残りは魔法を避けながら散開した。
「来るぞ!」
スミレはそのまま空中で応戦し、冒険者達はホバーライトの光の中、ワイバーンの群れに目掛けて魔法を放つ。
何体かのワイバーンが地上に降り立ち冒険者と戦う。
「慌てずに戦え! 勝てない相手じゃないぞ!」
誰かが冷静に状況を判断し皆を鼓舞している。
地上へと降りてきたワイバーンの群れから人影が見える。
「強そうな奴は2人・・・3人か」
「さて、お前たちの力を見せて貰うぞ」
「存分に遊べ!ワイバーン!」
人影がそう叫ぶとワイバーン達の身体が大きく変化し始めた。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
9月も出来るだけ頑張って投稿したいと思います。
読みに来て頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!
少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。
これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。
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9月も頑張ります!
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