―竜騎士―
ミハエル達と別れ、再度コルグへと戻った。
「エルカは入れ違いで道場へ戻ってたのか。今頃はセレーナに稽古をつけて貰ってるかな」
「ワン!」
「よし、それじゃここからイーストロックまで走って向かうか」
「ワン!」
今回は馬車ではなく、走って移動する事にした。
なぜ馬車じゃないかというと、強化をかけて走った方が速いからだ。
走るのに邪魔なので腰の武器は全て【キューブ】に入れて身軽になった。
「馬車だと1週間はかかるらしいからな。今回は龍に会うだけで特に他の目的も無い。ルーナと二人なら強化かけて走った方が断然に速い筈だ。計算ではゆっくり行っても大体2日で到着する予定だ」
「ワン!」
「野営道具も持ったし、疲れたら休憩でいいな?」
「ワン!」
「それじゃ行きますか」
「ワン!」
二人で昼過ぎから暗くなるまで走り、一晩キャンプして2日目の夜にイーストロックまでたどり着いた。
途中、ダリアの言っていたイーストロック手前の森に入り、何度か魔物や冒険者達を見かけたが余計な事はせずに迷彩を使って一直線に駆け抜けた。
すっかり日が落ちて辺りは暗い。
「この辺りが登り口らしいな」
左右切り立った岩肌が露出していて緩やかな坂になっている道を見つけた。
「進もう」
「ワン!ワン!」
進もうとしたその時ルーナが何かに吠えた。
ドシュン!!
目の前数十メートルの場所に何かが降って来て、着地と共に土埃を巻き上げる。
少しして土埃の煙幕が無くなり、暗闇に目を凝らして見ると人の様だった。
「この山は封鎖中だ。引き返せ」
目の前の人影が惣一郎達に引き返すように指示する。
「アナタが竜騎士の方ですか?」
目の前の人物は全身をタイトな鎧で包み、顔は口元しか見えず、背中には槍を携えている。
「・・・・貴様と問答するつもりはない。すぐに引き返せ」
会話する気は無いか。困ったな。
「ワン!」
ルーナが俺の前に出て竜騎士に歩み寄って吠える。
「すぐに引き返せ。それ以上近寄るなら・・・・おい貴様、その白いお方は聖霊様か?」
竜騎士は即座に槍を手にして構えるも、すぐに刃を下げて惣一郎にルーナの事を尋ねる。
「ああ、そうだ。サンシーカー様のお子様でルーナ様だ」
惣一郎は話のきっかけになると考え、ルーナの紹介を始めた。
「サンシーカー様は確かトロンの森の」
「ああ、そうだ。だが今は居ない。お隠れになられた。私はサンシーカー様に直接頼まれてルーナを育てると共に世界を旅をしている、聖霊の使者、音無惣一郎と言います」
「・・・その聖霊の使者がここに何の用だ」
「単刀直入に言いますが、ここへは龍に逢いに来ました」
「・・・・龍に逢ってどうする?」
「逢う事が目的なのでその後の事はわかりません」
「逢う事が目的・・・・」
竜騎士は何かを考えて居るのか押し黙っている。
「はい、ここには龍が居ると推測されますが、逢わせては頂けませんでしょうか?」
「ダメだ。ここを通す訳にはいかない」
「竜騎士は龍を守る存在だからですか?」
「そうだ」
「それは呪われた龍と関係ありますか?」
「!?」
竜騎士の目の色が変わった。
「貴様、何を知っている」
竜騎士は槍を構えて刃先を惣一郎へと向けた。
惣一郎は両手を軽く上げて敵意が無い事を示しながら話を続ける。
「私は何も知りません。それが何かを知る為にここに逢いに来ました」
「呪われた龍の事は何処で知った」
「それは、恐らく聖霊様のお力なのでは無いかと思っています」
惣一郎は自分自身に訪れるあのタイトルコールを聖霊の力と仮定して話をする。
「呪われた龍に逢いに行け。それが私に告げられた啓示です。これ以上の事は知りません。
竜騎士がイーストロックへ現れて、山を閉鎖したという話はコルグの冒険者ギルドで知りました。
そして竜騎士達の目的が龍の保護と言うのは周知の事実として知り得た情報です。
そしてコルグで貴方の情報を得た数日後、先程の啓示がありました。
とまあ私から見ても都合のよい話に聞こえますが、タイミング的に見て、ここに呪われた龍がいるかもしれないという推測です」
「そんな話を信じろというのか?」
「そうですね、私一人なら信じては貰えないかと思いまして、ルーナ、聖霊様をお連れしました」
「ワン!」
ルーナは惣一郎の頬を舐める。
「・・・・聖霊様を信じろと?」
「そうですね。私には冒険者として、プレートに刻まれた【聖霊の使者】という称号以外は信用を担保出来るものが何もありませんので」
「・・・・・」
竜騎士は何かを考えている。
グァァア!
バサッ!バサッ!
魔物の鳴き声と共に空から何かが近づいて来て、 強めの風を起こしながら竜騎士の後ろへと降り立った。
惣一郎は腕を顔の前で組み風を避けきると竜騎士に質問をする。
「それは龍ですか?」
「・・・・こいつは守護対象の龍ではない。俺の仲間の小竜だ」
「ワン!」
「グァ!」
ルーナと小竜は挨拶をするかのようにお互いの頬を合わせた。
「どうやらその方は本物の聖霊様のようだな」
竜騎士は納得したように槍を背中へと納めた。
「ひとまずここから移動する。ヴァイオレットの背に乗れ」
「グァ!」
ヴァイオレットと呼ばれた小竜は姿を数倍に大きく変化させ、惣一郎とルーナに背中に乗る様に首で合図して姿勢を低くした。
竜騎士は一足先にその場から消えていた。
惣一郎とルーナの二人を乗せて飛びあがると、先程話をしていた山の入り口付近が見渡せる、崖上の高い場所へと移動した。
小竜の背を降りた焚火跡のあるその場所は竜騎士の野営地なのだろう。
切り立った崖の上にあるその場所には道など無く、侵入するには空を飛ぶか崖を登るしかない。
4人で焚火を囲む。
「龍に逢えば死ぬかもしれんぞ」
竜騎士が焚火を前に口を開く。
「それは呪われし龍に殺される危険性があるという事ですか?」
「・・・今からする話は他言するな」
「わかりました」
「ワン!」
ルーナも一緒に返事をした。
その様子を見て竜騎士は少し微笑んだように見えた。
「攻撃より先に姿を見るだけで死ぬ可能性が高い」
「姿を見るだけで!?」
「ああ、そういう呪いだ」
「見ただけで死ぬかもしれない呪い・・・。呪われし龍に逢え。か・・・
龍は誰かに呪われてるという事でしょうか? それと龍の呪いを解く方法は見つかって居ない?」
「詳しい事は聞くな。呪いを解けるなら既に解いている。そう言う事だ」
「なるほど。そうですよね。・・・・逢えというのは俺に呪いを解けという事なのか?・・・・」
「グァ」
小竜が惣一郎に近寄り頬擦りをした。
「オトナシと言ったな。お前は以前、龍に逢った事はあるか?」
「いえ、ありませんが。どうして?」
「無いなら良い。勘違いだろう」
「グァァ!」
小竜が竜騎士に向かって小さく吠えた。
「・・・・」
竜騎士は小竜を見る。
「えっと、竜騎士さんは小竜と話が出来るのですか?」
「ジャックだ、ジャック・ハイウィンド。それが名前だ。ヴァイオレットと話は出来る」
「なるほど、ジャックさんは小竜と話してるんですね。それでルーナの事が聖霊だと分かった」
「お前はルーナ様とは話が出来ないのか?」
「ええ、サンシーカー様とは念話のような会話は出来ましたが、この子とはまだです」
「そうか」
「それでも何となく会話は出来てますけどね。ルーナは私の言葉を理解できていますから」
「ワン!」
ルーナと惣一郎がお互いを見る。
「そうか」
「はい。それでヴァイオレットさんは私について何か言っていたのですか?」
「ああ、お前から龍の匂いがすると言っている」
「グァァ!」
ヴァイオレットが惣一郎を見て小さく吠える。
「龍の匂い・・・? 何でしょうかね。龍に由来するような物は持ち合わせて居ないと思いますが」
身に着けている装備を確認するが、特に思い当たる節は無い。
「所でお前は武器を装備していないが、格闘術の使い手か?」
「あ、そう言えば走って来るのに邪魔だったので仕舞ったままでした」
「馬車を遠くに止めたのか?」
「いえ、コルグから走って来ました」
「コルグから走って来た? 何の冗談だ?」
「いえ、冗談ではなくルーナと二人で走って来ました。なあ、ルーナ」
「ワン!」
ルーナがジャックに向かって軽く吠える。
「本当に走って来たのか?・・・」
「ワン!」
ルーナはもう一度返事をするかのようにジャックを見ながら吠えた。
「そうか」
そんな会話をしつつ、惣一郎が【キューブ】から折れ剣を取り出すとヴァイオレットが剣に反応するかのように吠える。
「グァァァァァ!」
「!?」
「ヴァイオレット!?」
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
今の所、先日の1回目のワクチン接種後の副反応は注射カ所の痛みだけで済んでいます。
皆様もお身体にはお気をつけてお過ごしくださいませ。
9月も出来るだけ頑張って投稿したいと思います。
読みに来て頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!
少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。
これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。
読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると嬉しいです。
栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)
誤字報告なども頂ければ即対応させて頂きます。
更新時間は通常、朝8時に致します。
9月も頑張ります!
宜しくお願いします!




