―フォレスト魔道具店にて買物―
【シフト】
魔法を唱えて移動した。
場所は杖屋の横の路地だ。
手伝いの3人に街中を走らせ、各所に丸太を置いて来て貰っていた。
もちろん移動に使うために。
朝の散歩でも少し自分で置いてきたのだが、流石に全ては周り切れなかったので、残りを彼らに頼んだ。
戦闘が始まれば色々動き回るだろうし、この大都市だと移動が一番のネックだからな。
「フォレスト魔道具店。ここがシェーナさんの知り合いのお店か」
頑丈な石作りの2階建てで、窓から中は見えないが、看板は営業中となっているのでドアを開けて挨拶する。
(カラン、コロン)ドアベルが鳴った。
「こんにちは」
返事が無い。カウンターには誰も居ないのでもう一度声をかける。
「すいません。どなたか居ませんか?」
「はぁい・・」
奥の方から声がした。女性の声だ。
出てきたのは、かなり長い金髪で細く美しい女性だった。耳が少しとがっている。
この人は多分エルフなのかな? 俺よりも少し背が高い。
「こんにちは。シェーナさんに紹介頂いて来ました。ソウイチロウと言います」
「ふぅん・・シェーナちゃんの・・お知り合い?・・彼氏・・かしら?」
「いえ、恋人ではありませんよ」
「そうなの・・私はアリアよ・・よろしくね・・ソウイチロウさん」
彼女はそう言って俺を足元から舐めるように見た。
寝起きなのか地なのか分からないが、かなりゆっくり喋る彼女の服装は、胸元の大きく空いたタイトなワンピースで、童貞なら彼女の着衣姿を見せるだけで数十人は葬れそうな、大きな胸を強調する服だった。羽が沢山付いた扇子とお立ち台が似合いそうだ。
「それで・・今日は・・何の御用かしら?」
「はい、杖を作って頂きたくて、そのご相談に来ました。魔石はこれです」
予め用意していた袋からクラーケン産の魔石を取り出した。
「あらぁ・・立派なモノを・・持ってるのねぇ・・ 私・・こんなに大きいの・・初めてよ・・。これは・・ソウイチロウさんが・・狩ってきたの?」
アリアはゆっくり話しながらカウンターに置かれた魔石を優しくなでている。
「はい、ちょっと色々ありまして、頑張って手に入れました」
「そう。・・アナタ。・・強いわね。・・わたし・・強い人・・好きよ」
ゆっくりとハッキリとそう話す彼女は、カウンターに大きな胸を置き、置いた胸を寄せる形で、両肘をついて、笑顔で俺を見つめてる。
「えっと、それで杖の製作の方ですが、お幾ら位になりますか?」
俺は胸は見ずに彼女の眼を見て話す。
「そうね・・作って・・あげたいけれど・・私より・・上手い人に・・頼んだ方が・・良いわ」
意外な答えだった。
「えっと、作るのは無理そうですか?」
「いいえ。・・作れるけど・・私の腕じゃ・・十分な性能の・・杖が作れない・・この魔石が・・勿体ないわ」
「ええっと、そうですか。じゃあ他をあたるしかないですね」
「ごめんなさいね・・その代わり・・いい人を・・紹介してあげる・・私の・・師匠よ」
「おぉ、ありがとうございます!」
「いいえ・・それより・・杖・・必要なの?」
「はい、なんか杖あった方が魔法強くなるって聞いたので、丁度良い魔石取ったから、それで作ろうかなって思って」
「そうね・・杖が・・あったほうが・・魔力の・・消費も・・抑えられるし・・威力も・・上がる。アナタなら・・これが・・良いと思うわ」
そう言って彼女はカウンターの後ろの壁にあった杖を一つ手に取った。
大きさはクラーケンの魔石程じゃないが、それなりの大きさの青い魔石の杖だ。
「触って・・・良いわよ」
杖を俺に手渡してくれた。
「どう?・・気持ち・・イイ?」
気持ちイイとは?
「えっと、持ち易くて良い感じだと思います。初めての杖なので、大きさに慣れて無いから少し戸惑いますが、思ったよりも軽いし、良いんじゃないかと思います。ですが、杖初心者の私が持って良いような杖ですかね?」
「フフ・・ええ・・大丈夫よ・・ソウイチロウさんなら・・問題無いわ」
俺なら問題無いっていうのはなんだろうか。気になったが問題ないなら気にしなくていいや。
「そうですか。それなら良かった。因みにお幾らですか?」
「500万リア・・よ」
高い。素直にそう思った。
相場とか知らないし、知り合い相手にぼった来る人でも無いだろうけど、高い。
買えない金額では無いが、買えば路銀が底をつく。
先程の六千万リアは、もう俺の金では無いので手は付けない。
「すいません、お金稼いで出直してきます」
すぐに必要な物でも無いし、稼いでから買えば良い。
「あら・・高いわよね・・半額に・・してあげられない事も・・無いけど・・どうかしら?」
いきなり半額ですかお姉さん! 僕は何をさせられるのでしょうか?
「えっと、ちなみにその条件って何ですかね? 合法的な事以外なら言わなくて良いですが」
先に伝えておいた。
「フフ・・危ない事じゃ・・無いわよ・・ちょっとした・・肉体・・労働・・だから」
なんだろう、凄く目つきが怪しいというか色っぽいと言うか。
「薪割りとか荷物運びとかですかね?」
無いとは思いつつ聞いた。
「いいえ・・お部屋の中で・・働いてもらうの。・・わたし・・魔石をたくさん・・削らないと・・いけなくて・・ストレスが・・溜まって・・ね。・・ノルマ・・大変なの・・削るのは・・楽なんだけど・・いっぱい同じ事・・嫌なの・・だから・・3回だけ・・おねがい」
ああ、魔道具店とか魔石の取り扱いが出来るお店にも手伝って貰ってるんだ。
君は朝から晩まで同じ事をやり続けるのが苦手なフレンズなんだね。
「今度・・ミリター君・・ゲンコツあげなきゃね・・あの子・・たまに・・悪い子」
「だから・・ストレス・・発散・・したいの」
あー、そうか。【サンドバックになれ】 的な感じですかね?
まあ【オーバードライブ】と【メタル】があれば大丈夫かな。アリアさん格闘家タイプじゃないよね?素手とかグローブだよね? 棘のついたナックルとか金属のセスタスは無しだよね?
仕方ない。元は俺のプランだし、値引きの件もあるけど、これくらいは責任持つか。
所で、ミリター大臣を君付けで呼んでるけど、知り合いかな?
しかし、確かに肉体労働だが、人間サンドバックを3回なのか、3発殴られるのかどっちだろう?
これって杖半額で受ける必要あるのか? うーん。悩む。聞いてみるか。
「ちなみに回数って、3発ですか?それともラウンド制で3回ですか?」
「フフ・・どっちが・・いい?」
選ばせてくれる感じ? いや待てよ。3発って1撃が重いタイプの攻撃だとキツイぞ。
量なら3回、質なら3発か。1回って時間だとどれ位なんだろうか? 3分間タコ殴りか?うーん。
「わたしの・・オススメは・・3回・・かな」
悩んでたらアリアがオススメを提案してきた。
「3回って3日に分ける感じですかね?」
「そうね・・1日で・・3回は・・キツイかも・・しれないわね」
アリアさん意外と良いパンチもってるのかな・・・
「わかりました。じゃあ3回の方でお願いします」
「フフフ・・まいどありぃ・・」
そう言ってアリアは店のドアを開け、看板をクローズに変え、ドアを閉めてカギをかけた。
「じゃあ・・こっち・・来て」
アリアが俺の手を取り、店の奥へと連れて行く。
階段から地下へ行き、一番奥の突き当りの部屋に入った。
地下かぁ。うめき声とか聞こえなくする為だろうなぁ。
まあ、そうですよね。
「そこに・・座って」
小さな魔石ランプが二つの、薄暗い部屋の中には大き目のベッドが1つ。
他に座れるところが無い。
「えっと、ここで?」
ベッドを指さす。
「そう・・よ」
アリアは部屋に鍵をかけた。
マウントポジションで殴られるタイプの奴か。
顔はやめて! ボディにして!
そんな事を思いながらベッドに座り、アリアを見ると、彼女は服を脱ぎ始めた。
「え? アリアさん、なんで服を?」
「? 服を・・着たままが・・好き?」
ん? ああ、返り血とかが付くからか。
「えっと、俺も服脱いだ方が良いですかね?」
「そうね・・その方が・・汚れないし・・動き易いと・・思うし・・気持ちイイわ」
裸になって殴るのが好きなのか・・・。仕方ない。
俺が上着を脱いでると、アリアが服を全て脱ぎ終わり、俺に抱き着いて来た。
裸でマウントポジション取られて殴られるってのは初体験だな。
「ん!?」
彼女が唇を重ねて来た。
戸惑う俺に構わず、彼女は唇を重ねたままで俺をゆっくりと押し倒し、ベッドの上で重なった。
どうやらサンドバッグでは無かったらしい。
(こっちかぁ・・・・)
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