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―騒動・冒険者ギルドにて―

複数の足跡が近づいて来ていた。

「バレッタ様! こちらです!」

 階段を上がった2階の踊り場部分の手すり越しに数人のギルド職員と、その人達の中心に、赤い刺繍の施された白いローブの魔導士が一人立っていた。


「アイツです!」

 ギルド職員が冒険者に囲まれている俺を指さした。

 寸前で思考に集中するのを終えた俺は、アイツ呼ばわりした男の方を見た。


「「あ!」」

 バレッタが声を上げる。

 俺も同時に声を出す。


「ソウイチロウ様!?」

「シェーナさん!?」


「「「「 え!? 」」」」(その他一同の声)



「彼は魔族ではない! 人間だ! 彼の身分は、王国第三魔導師団、副団長の シェーナ・ブランドル・バレッタが保証する! 全員剣を引け!」

 シェーナの声がギルド内に響き渡る。


 シェーナのフルネームが判明した。


 冒険者達が困惑しながらも武器を鞘に納めて行った。


 シェーナが階段を降りてきて俺の元に来る。後から遅れてロビーに来た、もう一人の男性が下りてくる。

「ソウイチロウ様申し訳ありません」

 シェーナが謝罪する。

「いえ、助かりました。危うく彼等に八つ裂きにされる所でした」


「フフ、御冗談を。ここに居る全員が束になってかかっても貴方には敵いませんよ。ソウイチロウ様が本気を出せば簡単にこの建物ごと消し飛ばせますでしょう?」

「「「え!?」」」

 近くに居て話を聞いている冒険者達が驚く。


「いや、やめて下さいよ。そんな事しませんよ!」

 周りの冒険者がざわついている。


「所でお隣の方はお知合いですか?」

 さっきから気になっていたシェーナの隣に立つ男性を手で指し示した。


「失礼しました。この方はこの冒険者ギルド長のバリエー殿です」

「お初にお目にかかります。ソウイチロウ様。この冒険者ギルドのギルド長を務めさせて頂いております、バリエー・ルネディと申します。」


「ソウイチロウです。宜しくお願いします」

 人目が有ったので名前だけ名乗った。


「お騒がせして申し訳ありません。奥に席を設けますので、そちらでお茶でも飲みながらお話等如何でしょうか?」


「いえ、まだやる事がありますので、申し訳ありませんがまたの機会にお願い致します。あ、えっと、魔石の換金に来たのですが、宜しいでしょうか?」


「ええ、勿論。それではそちらの受付へお願い致します。もし良ければ執務室でお待ち頂いても構いませんが?」


「いえ、換金に来ただけなので、業務の邪魔にならないようにすぐに出ますから大丈夫です」

 そう言いながらフードを被った。

 これ以上目立ちたくない、早く帰りたいの、オジサンは。


「わかりました、それではこちらにて失礼致します」

 何かを察してくれたのか、引いてくれた。

「はい、ありがとうございました。また何かありましたら宜しくお願い致します」


「ソウイチロウ様、私もお供して街をご案内差し上げたいのですが、この後もまだ任務が御座います故、この場にて失礼致します」

「はい、シェーナさん、本当に助かりました。ありがとうございました」


 そうしてシェーナと別れ、無事に俺は受付に進む事が出来、魔石の換金をお願いした。


「すいません、魔石の換金をお願いします」

 そう言って袋の中の魔石を出した。勿論浄化済みだ。

 透明度もそうだが、量があったのでかなり驚かれた。

 流石にお盆程度の大きさのプレートに乗り切らなかったので大き目の木箱を用意され、その光景を覗き見ていた冒険者にドン引きされた。

 覗き見ておいてドン引きするとは失礼な。


「はい、それではご用意が出来ましたらお呼び致しますので、しばらくお待ちください」


 受付の子はロザリーと言うらしい。胸の所のプレートを見た。余談だが胸が大きかった。


 見たのはプレートだけだ。谷間は見ていない。視界には入ったが凝視はしていない。

 ・・・ちょっとは見たかもしれない。だって男の子だもん。


 

 受付近くのテーブルの椅子に座って待っていると、先程の尻もちをついた女性が近寄ってきて、謝って来た。

「本当に申し訳ありませんでした! 手を貸して頂いたのに、失礼な事をして、挙句に魔族と勘違いしてみんなで・・・・」 

 女性は半泣きだった。

 悪いのは絡んで来た酔っ払い男で、彼女は止めに入ってくれたのに、わざわざ謝りに来るとはなんて良い子なんだ。

 あの野郎の方は、さっきのどさくさで逃げたっぽいけど、顔と名前は覚えたからな。


 えっと、カバル? カボス? ガバス? なんかそんな名前のハゲ野郎だ。



「えーっと、大丈夫ですよ。シェーナさんがいらしてくれたので何事も無かったですし。黒髪で勘違いされるのはよくあるので、仕方ないですよ。先日も王都が魔族の兵器に襲われたと聞いてますし・・・」


「それでも・・・バレッタ様が先にギルドに訪れて居なければ今頃は戦って居たかもしれませんし。それにバレッタ様の言う通りなら、私達が全員建物ごと・・・」


「いやいやいやいや! そんな物騒な事しませんよ! あれは彼女の冗談ですから! 皆さんを揶揄(からか)っただけですよ! やだなぁ!」

 シェーナの置き土産がかなりの威力だった。


「ソウイチロウ様、ご用意が出来ましたのでこちらへどうぞ」

「はい!いまいきまっす!」

 ナイスタイミング! 仕事が出来る女性は素晴らしい! 良いよロザリーちゃん! 大好き!

 心の中で全俺が拍手喝采した。


 受付へ行くと、「金額が大きいので申し訳ありませんが、執務室の方でお受け取り下さい。」と小声で言われ、執務室へ一緒に連れていかれた。


 (一度断ったのに・・・恥ずかしい・・・)


 仕方ないので開き直ってギルド長バリエーと少し話をした。例のお茶と例のお茶菓子が出たのでちゃんと頂いた。

 赤の国ではこれがティータイムのテンプレなのか? 美味しいから嬉しいんだけどさ。


 バリエーは先程の騒動のお詫びと、滞在中の冒険者への周知を申し出てくれた。

 シェーナの訪問もその件が含まれていたらしい。

 この国は現在戦争状態なので、冒険者達は準国軍兵扱いとなり、滞在する都市町村(としちょうそん)での戦闘が義務化されている。もちろん俺もだが。戦闘中に味方から攻撃される事が無いようにとの事だ。


 断る理由は無いのだが、いかんせん状況が状況なので、単体で本物の魔族が現れた場合、判断に困るだろうから、髪以外の特徴も色々付け足して欲しい。と言っておいた。

 さっきの冒険者達も特徴を他の仲間に伝えてくれるだろう。友軍だとわかるように赤色の腕章でも着けるか? 考えておこう。


 俺は話を切り上げ、目の前の山詰みの金貨600枚(六千万リア)を数えながら袋へ詰めた。自分に強化をかけてるから重さはあまり感じないけど、見た目で何となく重さを感じた。


 この金額なら一人金貨1枚以上にはなるかとおもう。乗組員の正確な人数を知らないけど、もし300人居ても一人金貨2枚にはなる。気持ち程度だが先に売った方も入れるからもう少し増える。


 「ありがとうございました! ではこれで失礼します」

 換金を終え、挨拶をしてから早々とギルドを出た。


 しばらく歩き、人気のない路地の角を曲がった所で姿を消し、金貨袋を【キューブ】に入れる。

 「これであとは乗組員みんなで分配してもらうだけだな」


 ふと時計を見ると13時を過ぎていた。

「もうこんな時間だ。城に戻りながら適当に屋台で買い食いするか」


 城へ戻る。

 

 城門で兵士に声をかけられた。ミリター大臣が探しているとの事だったので、兵士と共に大臣の所へ向かった。

 場所は先程の城壁内の演習場だった。

 今回は団長達が集まっていた。


「すいません、皆様お待たせいたしました」

「おお、オトナシ殿、こちらこそ急にお呼び立てして申し訳ない。師団長の方々の分の用意が出来ましたので、早速準備の方をさせて頂きました。こちらも先程団長方にお声かけして集まったので」


 銃は6丁あり、俺の術式転写待ちだ。

 早速6丁全てに術式を転写する。魔導師団の団長にも術式を見て貰った。


「オトナシ殿、これはどの様に発動させていらっしゃるので?」

 白地に金の刺繍のローブ、第一魔導師団の団長、ダンテが訪ねて来た。


「これは術式転写ですが・・・観た事が無ければ恐らくは無限の叡智の・・・」


 この反応だと恐らくは無理か。大型バリスタに術式使ってるって話だったから出来ると思ったんだけど、やり方が違うのか?


「なるほど、このような事も出来るのですね。勉強になりました」

 ダンテが答える。


「ちなみに大型バリスタへの術式はどの様に?」

 気になった事をダンテに訪ねた。


「はい、現在の術式付与は銀のプレートへ直接刻印を刻んだものを取り付けております」


 大分アナログだった。まあ合理的でもあるが、アンダンテの言ってた劣化した術式ってこれも含まれてるのか。使えれば何でも良いとは思うが、出来上がった銃に俺が全部刻む必要があるかもしれない。

 もしくは同じように刻印を施した物を貼付けていくか・・・。

 平行作業にした方が良いな。どのみち俺が居ない場所でも製造はするのだから。


「午前の銃の術式は既に複写してプレートへの刻印を開始していますか?」


「はい、既に複写させて頂き、刻印を開始しております。また、王都以外ではローランド、コルグ、アイバニーの3大都市にて銃と弾の製作および術式の複製を開始させられるよう、コルグに早馬を飛ばし、手配しております」


 流石は軍務大臣。ド素人の俺の出る幕じゃない。


 ちなみにアイバニーは赤の国、最北端の国境近くの大都市だ。この速さで展開しているなら、恐らくここにもクリスタルがあるのだろう。コルグのクリスタル開放の後は、アイバニーにも立ち寄る必要はあるな。

 アイバニーの位置は確か今後の予定の方向とは逆だから、かなり遠回りになってしまう。考えておこう。


 転写も終わり、魔石の装填、弾の装填とを団長達に説明し、順番に的に向けて撃って貰う。

 土嚢の方もしっかり積んであるのが遠目に確認出来た。


 撃ち方だが、スタンディングは止め、膝立ちと遮蔽物等の固定撃ちの二通りに変えた。


 結果に関しては流石は兵師団と言うべきだろう。団長3人は膝立ちでしっかりと的に命中した。


 魔導師団長の方は遮蔽物等固定で撃って貰った。

 命中精度を高めるために、少し魔力を込めるイメージをして貰った所、精度はしっかりと上がった。

 練度は足りないが、その分命中精度でカバー出来れば良いだろう。

 目指す所は一般兵や農民でも倒せるようになることだ。団長クラスなら簡単に済ませて貰わないと困る。


 一人4発撃ってもらい、リロードと魔石の交換も問題なく終えた。

 俺は出来上がった銃を随時搬入してもらい、術式転写を施していった。


 転写を手伝ってもらう前提で魔導師団の手伝いを3名要求していたけど、彼等は転写が出来ないので、後でやろうと思っていた他の準備をして貰った。

 

 王都での銃の生産量は頑張っても1日30丁が限界だった。

 流石に銃身の精度を出すためには仕方がないが、それでも一度に30体は相手に出来るという事だ。

 次の襲撃がどの程度の数になるかは分からないが、それなりに被害少なく迎撃が出来るだろう。 


 その代わり、弾と魔石の方はかなり大量に作れる。

 どちらかと言えば魔石の方が作るのが早い。

 1日、弾220、魔石250と王都の職人達総出でこれだけ出来る。

 量産体制が整って行けば消耗品類はさらに生産数が増えていくだろう。

 腐るものでも無いからストックもしておける。

 

「よし、これで30丁終わり。と。では配備の方お願いします」

 待機していた兵士に渡して今の分は完成だ。一応、銃は1丁ずつでも出来上がり次第、俺の所に持って来て貰うように言ってある。今は時間との戦いなので、1丁でもあれば戦力が大きく増える。


 兵士の方も、それぞれの隊で銃の使い方と撃ち方をレクチャーしている。

 演習場で行われてる取り扱い訓練を見ていても、弓兵に関しては適正を持つだけあって、銃の理解が早い。今の所、バリスタ部隊の半数の弓兵を歩兵部隊に回している。

 カラ撃ちからのリロードも魔石の交換ももたつく事無く済ませる。


「これなら大丈夫そうだな」

 彼等には優先的に銃が与えられ、配備されている。

 次の襲撃は俺の出番は少なく済むかもしれない。その方が楽でいい。


 仕事を頼んだ子が3人共帰って来た。無事にミッションをこなせた様でなにより。

 色々荷物を持たせて町中を走らせてしまった。疲れただろう。


 俺は彼らを近くに呼び、好きに使ってと大銀貨を各自1枚ずつコソっと渡した。

 高いか安いかは丁度良いかは分からないが、屋台の串焼きは1本300リアだったので、大人が貰って嬉しい金額にはなるんじゃなかろうか?

 

 ふと懐中時計を見る。

 15時を少し過ぎた頃だ。

 

 杖の事を思い出したのでシェーナさんに教えて貰った杖屋?に行く事にする。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


お読み頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!

見てくれる方が増え、嬉しい限りです。

これからも頑張って続けて参りますので、良かったら応援の方宜しくお願い致します。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると励みになります。


栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)

ぜひよろしくお願い致します。


更新時間は通常、朝8時に致します。

8月も頑張ります!

宜しくお願いします!

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