―会議室―
会議室に着く
部屋に入り、まだ挨拶の出来ていない他の団長と大臣の挨拶へと移る。
第三兵士師団長 カリナ・フォン・ロレーヌ
第一魔導師団長 ダンテ・フォン・バイロン
第二魔導師団長 エンゾ・フォン・バイロン
第三魔導師団長 フローラ・フォン・パーシー
財務大臣 ゴルドー・フォン・サウス
外務大臣 フォーレン・フォン・イース
それぞれから自己紹介を受ける。
全員ミドルネームに【フォン】が付いているが、これは恐らく爵位持ちの人なのだろう。中世あるあるだな。
ちなみに、この場には他にも団長と大臣それぞれの秘書的な役割の方も居たが、それぞれ上司の後ろの壁際に用意された椅子へ座って居た。あと侍女が数人。
挨拶も終わり、かなり広い部屋の中にある大きな円卓を囲み、それぞれが所定の位置に座って居る。
戦略会議は軍務大臣ミリターが進行を務めるらしく、一人立っている。
俺達ゲストはドアに近い方に席を用意されていた。
そして何故か俺のすぐ左隣にはアリエル女王が座って居る。ちなみにセレーナは間を空けて右側、ルーナはセレーナのすぐ左隣にベンチタイプのソファーが用意され、そこで寛いでいる。王子様や団長、大臣の椅子は等間隔でしっかり放れている。女王はソーシャルディスタンスが取れていない。マスク無しなのに写真でも撮ってSNSへ なう したら炎上するぞ。
「あのー、女王様?女王様の席はあちらでは?」
俺はウリエラ王子の隣の、上座に位置する空席を手のひらで示す。
「私はここで良いのです。さあ、会議を始めましょう!」
「えーっと・・・」
円卓の騎士達を見回すが、誰も意見はしない様だ。
「あの、女王様」
言いかけた所で女王が遮るように話を始めた。
「そうであった、ゴルドー! オトナシ殿へ「アレ」を持ってまいれ!」
「はっ!」
そう言って財務大臣ゴルドーは扉から出て行き、侍女を連れてすぐに戻って来た。
ティーカートの様な物に積まれた本と共に。
「さあ、オトナシ殿、これがお約束の本だ。全てお渡しするぞ!」
そう言って俺とセレーナの席の間にティーカートごと山積みになった本が置かれた。
アリエルは満面の笑みでティーカートの後に立っている。
「あ、ありがとうございます」
「分からない所があれば、私が教えてしんぜよう」
アルエルはそう言って椅子に座り直し、自分で椅子を動かし、更に近寄って来る。ふんわり香水の良い匂いがする。こう言っては何だが、美人なので悪い気はしない。ただ、目の前に貴女の息子が居るんですよ? その辺は気にしてねお母さん。
女王御付の侍女が慌しく動く。
「女王様、会議の方を・・・」
ミリターが困ってウリエラ王子を見ると、ウリエラ王子がミリターに頷いた。
「そ、それでは戦略会議の方を始めさせて頂きます」
「今回は、ローランド地方、トロン村より、【聖霊の使者】の称号を持つ、ランクA+の冒険者、オトナシソウイチロウ殿をお迎えしての会議となります。
皆様ご存じかと思われますが、オトナシ殿は、ローランドの街にて、魔族の物と思われる兵器、こちらを3国同盟では「ゴーレム」と仮称しております。このゴーレム5体を単騎で撃破。並びにゴーレムの自爆攻撃もほぼ無傷でしのぐという活躍により、ローランドを城壁の一部破壊のみという最小限の被害で守り切った冒険者で御座います。」
紹介が終わった所で、ウリエラが口を開く。
「ミリター、一つ大事な事が抜けています。情報は正確に」
「はっ!申し訳御座いません! ローランドにてゴーレムとの戦闘中、自爆攻撃に巻き込まれてしまった、第一王子であるミカエル様のお命をお救い戴きました冒険者がオトナシ殿で御座います」
「オトナシ殿、この度は兄の命をお救い戴き、真に感謝しております」
「いえ、成り行きとは言え、目の前で誰かに死なれてしまうのは嫌なので出来る事をしただけです。失礼ながら、それがミカエル王子様でなくても同じ事をしたと思います」
「お心遣い頂き、深く感謝致します」
王子と俺は互いに目礼を交わし、再び王子がミリターに再開を告げる。
「それではミリター続きを」
「はっ!」
「その後、ローランドの冒険者ギルドにてミカエル様との会議で判明しました、オトナシ殿の使用する無属性魔法と所持スキル、無限の叡智、意識制御、無の理解者、魔力融合、これらが新たにスキルブックに記録される事になり、それにあたり城内書庫にて過去の文献を調べた所、無限の叡智に関連するであろう記述が発見されましたので、その確認と、オトナシ殿のお力をお借りすべく、急な話では御座いましたが、今回の会議にお呼びした次第に御座います」
「それでは、まず、3国を含んだ現状と、ルブルムナビスの現状況をオトナシ殿にお伝えさせて頂きます」
そうして、ミリターは淡々と、再びのゴーレム襲撃と現状を話し続けた。
まず、3日前に3国の首都へ2度目の同時襲撃があり、その際に赤の国は第一結界を破られ、城下街の一部を含んだ城壁が自爆攻撃により消滅。兵士と民間人合わせて十数人が犠牲になった。
緑の国、黄の国は結界を破られるも、ほぼ損害は無く迎撃に成功したとの事。
そのうえで、現状の迎撃態勢を教えて貰った。
まずは主力となる大型バリスタだが、やはり術式を用いて強化した物で、城壁についていた固定砲台を外し、準移動型にして運用中との事。
現在も同型のバリスタを製作中で、数を現在の3倍の60機に増やしている最中。
また、各都市にも号令を出し、同型のバリスタを建造させている。
それに合わせ、精度を高めて運用できるよう各都市の弓兵と魔導士の訓練も開始し、各街への派遣も行っているとの事。
ただ、大型矢弾の方の鏃の素材であるアダマン鉱石が枯渇気味で、これに変わる物が作れないかと模索中らしい。
当たれば即消滅の使い捨てになるから、大型矢弾なら尚更消費が激しいよな。
つくづくいやらしい兵器だ。
敵の作戦も、恐らく今回は数を集中させて王都の攻略を最優先したのだろう。兵器の量産体制と一日の生産量がどれ位なのかが気になる。
そして次の動きは・・・一部とはいえ城壁を破壊されたこのルブルムナビスのみを狙ってくる確率は高い。
「オトナシ殿のご見解やご不明点やご提案等御座いましたら遠慮なく仰って下さい」
ミリターが尋ねて来た。
「そうですね、まず次に狙われるのはこの王都だけの可能性が高いかと思います」
「なるほど、やはりオトナシ殿もそう思われますか」
「ええ、理由は皆様のお考えと同じかと思います」
「迎撃に関しては私も、参戦させて頂きます。しばらく王都に留まり、迎え撃つ準備と対策を考えようかと思います。王都の防衛体制や使えそうな武器、作戦等が分かりかねますし、私も大規模な戦争の経験があるわけでは無いので作戦等に関しましては何とも言えませんが、私の考えとしてはあのゴーレムとの戦闘は、一般の兵士で対応できるレベルにしたいと考えております」
「「「「おお!?」」」」
大臣と団長数名が声を出す。
「あのゴーレムを一般の兵士でも対応できるレベルにする事が出来るのですか?」
「まだ計画の段階で、現状ではあくまでも理想の話にはなりますが、早急に手立てを考える為に、これからこの書物を調べると共に、城内の禁書を含む書庫の中への立ち入りと全ての本の閲覧をお許し頂きたい」
「女王陛下、如何致しましょうか?」
ミリターが女王にお伺いを立てる。
「うむ、構わぬ。これより冒険者オトナシ・ソウイチロウへのこの城の書庫への立ち入りと禁書を含むすべての書物の閲覧、及び、赤の国領土内にある全ての書物の閲覧と、関連しうる全ての立ち入り禁止区域への立ち入りを許可する!」
「ミリター!ゴルドー!フォーレン!」
「「「はっ!了解致しました!」」」
圧巻の鶴の一声だ。カッコいいぜ女王様。
よし、これで取り合えずは他の本が無いか書庫を探す事が出来る。
赤の国中の本が見れるのも大きいな。緑の国を目指すついでに他の街に寄るのも無駄足ではなくなる。
問題は解決策だが、これは片っ端から昔の文献に目を通して、アンダンテにインテル的な奴をインしてアップデートしていけば、パワーアップして何か思いついてくれるかも。時間も無いし、この際、チューでもなんでもしてあげようと思う。
迎撃に関しては結界さえ維持していて貰えば最悪一人でどうにか出来るように準備はしておこう。
今の所【シフト】が有効だからな。危なければ順次、海に沈めてしまおう。
ローランドで見せている魔法に関しては王都にも伝わっているだろうから、その部分は話してしまっても大丈夫だな。ここまで来てもまだ疑うのは悪い気はするが、用心に越した事は無い。どこで誰が何と繋がっているか分からないからな。丁寧かつ慎重に動く必要はある。
そうして、俺は自分の手札を何枚か見せた。勿論細かい所は隠してある。
主にゴーレム戦での情報と、シフトで海に沈めての爆破処理の事を伝えた。
ただ、シフトも距離の制約があるので一番海から遠い場所では有効ではない事。
その場合、バリスタを設置した迎撃エリアを作り、そこへ【シフト】でゴーレムを送り込み、破壊する作戦が取れるという事。海上及び陸上に【シフト】の為の大き目のデコイも用意してもらう必要がある事も伝えた。
もちろん、この作戦は【シフト】が使える俺が居る前提の話になるので、あくまでも対策が間に合わなかった時の緊急措置として提案してある。
ちなみに、女王が、「わたくしにも【シフト】をかけてくれ!」というので、上座にいる王子と位置転換して貰った。
折角遠ざけたのに、喜びながらすぐに俺の隣に戻って来て王子を自分の椅子へと戻らせていた。
嬉しそうにこちらに来るさまが一瞬ルーナの様にも見えた。
なぜか変な魔法をかけられたがる勇者を思い出した。
この国の迎撃態勢は、ある程度把握できたので、後は想定される攻撃位置と数、バリスタの配置等を確認し、次は敵の情報をどこまで掴んでいるのか、また、その本拠地の予測等がどこまで進んでいるかを聞いた。
まずは敵の情報に関して、魔族領の捜索は、魔族領に一番近い、アストラ大陸の北側の、緑の国のエルフ軍に一任しているとの事。だが、詳しい事はまだ掴めていない。
黄の国は鉱石類の流通経路から探っているとの事だが、こちらも同じく詳しい状況は掴めていないとの事。
要するに敵に関しての情報がまだ何も無かった。
この先の方向性が決まらず、防戦一方になる事を見越しての戦術しか立てられない状況だった。
長期戦が可能な対策を早急に立てなければならないな。
王子をはじめ、その場の国軍関係者が顔をしかめていた。
姿の見えない相手と戦わなければならないのは、やはり厳しいな。
だが、取りあえずはゴーレムさえ簡単に蹴散らせれば良い。一般兵でも楽に迎撃出来るようにして、あの自爆さえ無意味な物にしてしまえば良いのだから。
よし、無限の叡智をアップデートする為に、早速書物を漁るか。
俺は会議を切り上げて情報収集を始めたいと申し出て、今回の会議は終了となった。
「それでは昼食に致しましょう!」
女王の一言で昼食に決まった。
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