―御前試合―
「始め!」
大臣のミリターが声をかける。
既に【オーバードライブ】【メタル】の状態だ。
今回は様子見はせずに胸を借りるつもりで突っ込んでいく。対人戦の練習と思い、手練れの人間を盾ごと弾き飛ばせるか確かめたかったのもあった。
アロルドの構えはミハエルと同じ構えだった。剣盾の構えならこれがセオリーかな?
もしくは同じ流派、もしくは彼がミハエルの師匠のどれかだ。
低い姿勢でまっすぐ突っ込み、そのまま旋棍ごと肘を叩きつけるように下方向から盾を突きあげる。
アロルドは盾ごと腕がはじかれて宙に浮き、胴体ががら空きに。その体勢から剣を振ろうとしてきているが、俺はそのまま流れるように下段回し蹴りを出し、彼の驚いた表情が見えたと同じタイミングで、アロルドの左足首を刈る。彼の剣は俺の髪をほんの少しかすめる程度の距離で空を切った。
盾を弾かれて左足を刈られ、バランスを崩したアロルドはよろけながら後方へ下がっていく。
俺は体勢を整えられる前に更に追い打ちで肘を撃つ。
アロルドはバランスを崩しながらも盾で俺の旋棍を挟んだ肘撃ちを受け、よろけながら更に後ろに下がっていく。アロルドは盾を持つ手が痺れてるみたいだった。
トンファーらしい使い方など出来ないので、殆ど肘撃ちの様な直接的な攻撃の使い方しか出来ないが、慣れない剣を使うよりも、当てる場所を正確にイメージして自分の思った通りに体を動かす事が出来るのは戦いやすいかもしれない。
格闘系がオーバードライブと相性が良いのが体感できた。
だがまだ決着はついていない。次はアロルドが攻めてくるのを待った。
これから武器を試していくうえで、自分の攻防の方法を探る為だ。
アロルドは再び構えを直し、少しずつにじり寄ってくる。
やはりミハエルと同じ戦法だった。
俺は構えを中段に、左腕を、肘を曲げた形で地面と水平にして前に出し、右手の手の甲を上に向けた形で大きく後ろに引いた。
アロルドが駆け寄り、盾で体当たりの様に体ごと突っ込み、当ててくる。当たる瞬間に盾を引いて剣を突いてきた。
俺は左腕の旋棍で木剣をいなし、彼が盾を持っている左腕方向へ避けながら死角に入り、今度は盾が彼の右手側に向かう様、横方向に弾くように自分の右腕の旋棍を挟んだ肘撃ちを当て、その勢いで回転してアロルドの後方に滑り込み、そのまま鎧越しの彼の背中に旋棍を軽く当てた。
(コン)
場内が静まり返る。
「それまで!」
大臣が声をかけた。
「ふう。ありがとうございました!勉強になりました!」
俺から先にお礼を言っておく。
「こちらこそありがとうございました。オトナシ殿は噂通りお強いですな。動きを目で追うので精一杯でしたぞ」
ごめん、俺が強いんじゃなく、オーバードライブが優秀なんです。
音無惣一郎の半分はオーバードライブで出来ています。
女王陛下が何やら俺を見て興奮している。その笑顔が怖いよ。この女王様は何を楽しんでいるの?
「オトナシ殿、見事だった!では次、バルト!」
「はっ!」
えっ?まだやるんですか?もういいじゃないですか。会議しましょうよ。助けてミハエル!君のおかーさんを止めて!
そんな願いも虚しく、バルトさんが挨拶をしてきた。
「第二兵士師団、団長のバルト・フォン・シドニアと申します。以後お見知りおきを」
「音無惣一郎です。宜しくお願いします」
挨拶を終え、彼は両手に木剣を持った。双剣スタイルだった。
双剣とかバーサーカーじゃん。怖い。どうしよう、バルトさんめっちゃ目が怖い。なんかアロルドさんより戦うの好きそうで怖い。あとヒゲも怖い。
「それでは両者前に」
ミリターが容赦なく俺を戦いの場に引きずり出そうとしてくる。
もう帰りたい。【ディストーション】使って帰って良い? ねえ? 帰りたいんですけど。
「始め!」
ぼやぼやしてるうちに無意識で構えていたので開始の合図がかかってしまった。
合図と共にヒゲが、いや、バルトが迫ってきた。
この人は自分から攻撃してくるタイプのフレンズだった。
木剣で容赦なく連続突きを出してくる。顔に当たったら痛い所じゃ済まないぞ。
必死に旋棍でバルトの剣をいなす。
オーバードライブ状態で見る事に集中すると、相手の動きが遅く、しっかり見えるので攻撃をいなすのは思いのほか楽だった。
あーこれの究極系が思考加速になるのかな。でもあれはスキルが意識制御だから別か。今更だが、この魔法は凄かった。
絶え間なく続く攻撃をいなしながら隙が出来るのを待った。
何回か隙が見えたが、彼の眼がしっかりと生きていたのでワザと隙を作っているのが分かった。
なるほど。これ位の速度で見えて無きゃ、あの誘いに引っかかって手を出して返り討ちか。
とは言え、これを終わらせるにはどげんかせんとイカン。
このままだと、ストレスとか何かで頭髪の生え際が大きく後退してしまう。
取り敢えず彼がわざと隙を出して誘ってくるのを待ち、誘ってきた所を、アロルドに使った同じ技。旋棍を挟んだ肘撃ちで、思いっきり左右の剣を交互に撃ち抜き、弾き飛ばした。
カラン! カラン!(床に二本の木剣が落ちる)
「参った!オトナシ殿は強いな!」
双剣を綺麗に弾き飛ばされたバルトは、痺れている両手を見た後、負けを宣言した。
「それまで!」
女王が俺を見て更に興奮していた。鼻から蒸気が出そうな勢いだ。
「二人共見事だった!オトナシ殿!次は私と手合わせを!」
それを聞いた周りの人間が女王を必死に止めていた。
「女王陛下!それはなりません!」
「陛下、そろそろ会議に移りませんと、次の公務に差支えが出ます!」
「公務など後回しで良い!私もあの男と戦いたいのだ!放せ!」
団長と思われる女性と後ろに居た女兵士が必死に女王を押さえつけている。
みんな頑張れ! みんな頑張れ! 俺は動揺しながらも腰に旋棍を収め、心の中で必至に応援した。
女王と試合とか勘弁してほしい。
その時、場内の観客席部分、俺から見て左方の、上辺りから声がした。
「母上、オトナシ殿も皆も困っておられます。お戯れはその辺でおやめ下さい」
優しい声だった。
声の方向に振り返ると綺麗な青年が居た。第一印象は美形のイケメン(綺麗な男性)
俺もあんな風に生まれたかった。
「ウリエラ様!ウリエラ様もご協力お願いします!」
誰かが叫んでいた。
ウリエラって・・・母上って事は彼が第二王子か! 王子頑張って! 兄不在の今、頼れるのは君だけだ!
ウリエラは試合場まで下りてきて、女王の前に立った。
「母上、もう十分堪能したのではありませんか? そろそろ会議を始めましょう」
「むぅ、ウリエラ、私もあの男と戦いたいのだ」
「それなら日を改めては如何ですか? 彼を王都に招待したのはこの為では無いでしょう? 」
「オトナシ殿、私は赤の国、ルブルムナビスの第二王子、ウリエラ・レッド・アルバンと申します。この様な場所でのご挨拶で失礼致します」
「お呼び立てした上に、このようなご無礼な対応、大変申し訳ありませんでした。母に変わり私からご無礼をお詫びいたします」
そう言ってウリエラは右手を左の胸に手を当て、浅くお辞儀をした。
(王子様! そんな風に言わないでー!俺よりあなたの方が偉いのだからー!)※心の声
「兄が母上に楽しそうに貴殿の事をお話になられていたので、つい母の悪い癖が出てしまったのです。どうか大目に見ていただきたい」
(ミハエル!お前かー!!!)※心の声
ていうか悪い癖って何? 戦闘狂的な感じですか? 戦うのが趣味みたいなあれ? よくわかんないけど早く会議に移りたい。ここは何もせずに過ごそう。
「ええ、大丈夫です。問題ありません。女王陛下もご多忙の事と存じます故、ウリエラ王子様の仰る通り、そろそろ会議の方へ移られるのが宜しいかと思います」
「ありがとうございます。オトナシ殿。それでは皆様、会議室の方へ移動しましょう」
ウリエラが強制的に会議の方向へ話を持っていってくれた。
「シェーナ、御三方を会議室へ」
「はっ!」
ウリエラがシェーナに声をかけ、シェーナが返事をする。
そうして御前試合は終了した。
グッジョブ!ウリエラ王子様。後で自家製アイスをご馳走するよ!ミカエルの分まで君にあげる。
お読み頂き、ありがとうございます。
おかげさまで何とか毎日更新出来ております。
暑さに負けず、8月も頑張りたいと思います。
お読み頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!
これからも頑張って続けて参りますので、良かったら応援の方宜しくお願い致します。
読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると励みになります。
栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)
ぜひよろしくお願い致します。
更新時間は通常、朝8時に致します。
8月も頑張ります!
宜しくお願いします!




