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―トレーニング―

 トレーニング場へ着いた。


 組み手が出来る位の広さはある。


 長旅にはこういった場所も必要になるのだろう。


 床には防音の為か、衝撃吸収の為か、一面にマットのような物が敷かれている。材質は分厚い床革のような感じだが良く分からない。まあ気にしないでおこう。


 少しして二人とルーナが来た。


 セレーナとエルカは同じ道着のような物というか道着を着て、手には革の指出しグローブ。足首にはプロテクターの代わりの薄い革当てを着けている。


 うーん、可愛い。


 特訓と言ってもどんな事をするのか分からないが、エルカは武術を使うのだろうか?


 魔法を使ってる所も先程の戦闘でしか見ていないし、謎の元団長だが団長になる位なのだから、腕っぷしも相当強いのだろう。そんな人に直々に戦い方を教えて貰えるとか羨ましいな。


「ソウイチロウ様・・・その・・・」


「セレーナどうしたの?」


「ソウイチロウさんは~。見ちゃダメです~」


「え?どうして?」


「ワン!ワン!」


 女子3人にじーっと見つめられる。


「わかった。俺はクラーケンでも来ないか見張りでもしてきます。」


 何やら俺には秘密なのか、それとも他の理由があるのか分からないが、ハブられたので見張り台で泣こうと思う。


「ソウイチロウ様、申し訳ありません」

 セレーナがかなり申し訳なさそうな表情で謝って来る。


「良いよ。大丈夫。特訓頑張ってね!」

 親指を立てて見せ、笑顔でそう言って部屋を出た。


 特にする事も無いのでマストの上の見張り台に登り、見張りを交代してあげる。

 


「風が気持ちいいなぁ」


 360度見渡す限り水平線だ。海でこんな景色を見たのは何年ぶりだろうか。

 海のレジャーなんて数える程しかしていないが、陸地が全て見えなくなるほど船で沖に出たのは十年以上前に釣り船に乗った時以来だろう。


 アジとかサバを釣り、釣り船の船長さんにその場で捌いてもらって刺身で食べたっけ。あれは美味しかったなあ。


 こっちの世界は漁師も居るんだろうけど、どうやって漁をしているんだろうか。


 いつか船を持ったら釣りとかしてみるか。烏賊も沢山釣ろう。寧ろ烏賊だけで良い。烏賊釣り漁船にしよう。そうしよう。


 そんな事を考えつつ見張りを続ける。



 トレーニングルーム



「エルカさん、宜しくお願いします。」

「は~い、宜しくお願いします」


「所で、特訓はどんなことをやるんですか?」

「う~ん。まずは組手かしらね~」

「いきなり実践ですか?私、戦闘経験が殆ど無くて・・・」


「大丈夫よ~。私は攻撃しないし~。セレーナちゃんの動きを見るだけだから~。いつでも好きなように攻撃してきて大丈夫よ~」


「分かりました!がんばります!」


 そう言って組手が始まった。

 格闘経験の無いセレーナは、とにかく何かしなきゃと、攻撃とは思えない程の可愛いネコパンチを打ち続けた。

 体力の続く限り。


 そう、セレーナは何時間も走り続けられる体力がある。

 エルカは最小の動きで避けているだけだが、それでも2時間動きっぱなしのセレーナに驚いた。


 先日、何時間も船内を走り回っていたセレーナを見て、エルカもセレーナの才能を見出した一人だった。


 セレーナの持つ恐ろしい程のスタミナを見てエルカは驚愕しながらも、彼女の才能にワクワクしていた。


「セレーナちゃん。すこし休憩しましょうか~」


「まだ大丈夫です!」

 空気の読めないセレーナ。


「一度休憩しましょ~」

「ワン!」


「わかりました!では何か飲み物を貰ってきます!」

 セレーナは食堂へと走って行った。

 ルーナも慌ててセレーナに着いて行く。


 数分後、ポットに入れたお茶とコップを持って戻って来た。


「セレーナちゃんは凄いわね~。絶対に強くなれるわ~」

「本当ですか!?」


「そのスタミナがあれば、相手に休む暇を与えずに攻撃を続けられるから~、戦っている相手がセレーナちゃんのスタミナに着いてこれ無くなったら勝ちよ~」


「なるほど! 沢山攻撃したら良いんですね!?」


「ええ、でもしっかりと相手に攻撃を当てなきゃいけないし、相手の攻撃も避ける必要があるからね~。まずは攻撃、突きと蹴りを覚えましょ~」

「はい!」


「所でエルカさんは魔導士なのに武術も学んでいたのですか?」

「ええ。そうよ~。どちらかといえば~。魔術の方が後だったかしらね~」

「そうなんですか?! 武術はどこで学んでらしたのですか?」


「王都の近くに街があるんだけど~そこの武術道場よ~。武術はそこで本格的に学んだわ~」


「武術道場ですか!?そんな所があるんですね!」


「エルカさん 武術でも戦えるなんて本当に凄い!」


「うふふ、そうかしら~。でもセレーナちゃんも、ちゃんと学べばそうなれるわよ~」

「私も!? がんばります!ご指導お願いします!」

「ええ、がんばりましょ~」


 ティータイムの後、エルカはセレーナに攻撃方法を教えた。


 空手の様な型で基本的で単純な正拳突き。右、左、右、左と繰り返す。


 これを1時間。


 その後、基本的な蹴りの技を教えて、その後に突きと蹴りを交えたミット打ちを1時間。


 セレーナは、とにかく無心で教わった攻撃方法を繰り返した。


 少しでも自分に出来る事を増やし、自分を外の世界に連れてきてくれた彼の役に立つ為に、今の自分に出来る事を一生懸命に。



「ふう~。お疲れ様~。今日はこれ位にしておきましょ~」


「エルカさん、ありがとうございました!」

「ワン!」


「着替えを持ってシャワーに行きましょ~」

「今日もシャワー浴びれるんですか!?」

「ええ、大丈夫よ~。師団の子に水を用意しておくように頼んだから~」


 今日はシャワーの日ではないが、激しい戦闘があったので、船内の衛生管理の為に装備の点検、洗浄と合わせて入浴シャワーが義務付けられているのだ。


「分かりました!汗かいちゃったからシャワー浴びれるのは助かります!」

「ええ、私もよ~。それじゃあみんなでお風呂に行きましょ~♪」

「はい!」

「ワン!」


 セレーナはエルカとルーナと一緒にシャワーを浴びて、部屋に戻り、傷む手足に薬草を当てて治療をした。


「んー!!・・・・痛たた~」

 ルーナが心配そうにセレーナを見つめている

「ふぅ」


「私、少しは強くなったかしら? ルーナ様、私がんばります! 少しでも早く強くなって、ソウイチロウ様の隣で戦えるようになります!」

「ワン!」

 ルーナは近くに来たセレーナの顔を舐めた。

「あはは!ルーナ様くすぐったいです」

「ワン!」


「そろそろ夕食ですね! ソウイチロウ様をお誘いして食堂に行きましょう!」

「ワン!」


 ソウイチロウの部屋のドアをノックして待つ。


「はーい」


「ソウイチロウ様、お食事に行きましょう!」

「ワン!」

「分かった。今行きます」


 3人で大食堂に向かう。途中、ソウイチロウはセレーナにオーバードライブとメタルをかけた。

 セレーナが理由を聞くと、打ち身が早く治るかもしれないから との事だった。


 実際、手足の痛みが徐々に消えていくのが分かった。

「ソウイチロウ様の魔法は凄いですね!」


「効果あった?」


「はい!痛みが引きました!」


「身体強化って治療の効果も高めるのかな?」


「そうなんですか?」


「自分でも魔法の効果がわかって無い所は少しあるんですよ」


「そうなんですか? じゃあ他にも何か気が付いた事がありましたらお伝えしますね!」


「ええ、宜しくお願いします」


 食堂のカウンターで食事を貰い、席に着いて食べ始める。


 今日の夕食は少し量が多めだった。戦闘があると食事の量が少し増えるとの事だった。兵士の体力回復と、士気維持の為との事らしい。全員食べ終わり、食器プレートを片付けて再び同じ席に着く。寝る前の雑談時間だ。


「ソウイチロウ様、私、頑張って強くなりますから!」

「はい、でも無理はしないようにね」


「大丈夫です! 王都に着くまでエルカさんが沢山特訓してくれるみたいなので、残り数日ですが頑張って強くなります!」


「おお、それは良かったね。エルカさんは魔導師団の元団長らしいから、そんな凄い人から教えて貰えばすぐに強くなれるさ」


「はい!明日も頑張ります!」


「セレーナにはそれだけの才能が有るからね」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 エルカとも話したかったが、彼女は彼女で船の護衛としても他の仕事があるのだろう。同じ時間には食堂に来なかった。


「エルカさんは居ませんでしたね。少しお話したかったのですが」


「彼女は一応この船の護衛も兼ねてるからね。流石にクラーケンが出て来た後だから、色々やる事もあるんじゃないかな?」


「そうですよね。でも明日も時間を作ってくれるみたいなので、今日は早めに寝ますね!」


「ああ、俺も疲れたから今日は早く寝るよ。またいつ魔物が来るか分からないし、寝れる時に寝ておこう」


「はい!ソウイチロウ様、おやすみなさいませ!」


「セレーナ、ルーナ、おやすみなさい」


「ワン!」


 セレーナはベッドに入ると、すぐに眠りに落ちた。

 寝る子は育つ。


お読み頂き、ありがとうございます。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると励みになります。


栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)


ぜひよろしくお願い致します。


更新時間は通常、朝8時に致します。

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