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―夢会議―

 目の前に自称JKが倒れている。


 ダイイング・メッセージ付きだ。



 犯人はヤス(明朝体)



 血のような赤い何かでそう書かれていた。


 俺は倒れている彼女の両足を左腕で抱えるようにガッチリ掴み、思い切りくすぐってやった。


 !!! あははははは! やめて! くすぐったい! やめて! やめて下さい! いひひひひひ! お願い! 止めて! くすぐるの止めて! お願いします! 音無様! 惣一郎様! あははははは! 死ぬ! 笑い死ぬ! ごめんなさい! ごめんなさい! 。


 くすぐりの刑を解除する。


「ダイイング・メッセージが何で綺麗な明朝体なんだよ」


「え!? そこなの!?」


「死んでる奴が、そんな筆で書いたような綺麗な文字でダイイング・メッセージ残すんじゃねーよ」


「良いじゃない! 文字は綺麗な方が見易いでしょ!突っ込むなら他の所で突っ込んでよ! 男子なら女子に突っ込む専用のモノが有るでしょ!」


「さらっと下ネタ言ってんじゃねーよ!」


「はぁ~。


 もう。 音無君は相手の自由を奪って激しくするが好みなのね~」


 彼女はまったく懲りてない様だ。




「まあ良いわ、さっきはお疲れ様。被害も殆ど無く無事に倒せて良かったわね」

 彼女は切り替えが速い。


「ああ、自分の魔法に殺されそうになったけど、何とかなったよ」


「オーバードライブ使わずに撃てば良かったのに」


「・・・・・そーゆーのは先に言ってくれませんか?」


「オーバードライブは相乗効果あるって前に言わなかったっけ?」


「言ったけどさ、自然魔法の方にも乗るのか」


「ええ、勿論よ。無属性魔法は万能ですから。最強ですから~」


「・・・練習して次からは加減するよ」


「ええ、折角魔力消費少なく使えるんだからコソコソっと練習して、ちゃちゃっと極めちゃって。音無君なら簡単よ!」


「あんな広範囲の魔法をコソコソっと使える場所が無いし、ちゃちゃっと出来る程簡単でも無いだろ。カップ麺じゃないんだから」


「でも音無君、恥ずかしがってた割には、ノリノリで詠唱してたわよね」


「うっ。背に腹は代えられないだろ。生きるか死ぬかで、恥ずかしがってたら死にました。なんて笑い話もならないし」


「でもまあカッコよかったわよ」


「ちゃんと色々考えて作戦も練ってたし、変わり身の術って名前面白いわね。忍者だっけ?日本にも魔法使いが居たのね」


「魔法じゃなくて忍術だけどな。俺も違いが良く分からないが、忍術は魔法って感じじゃないんだよな。戦闘では使われる描写はあるけど、合戦のような多人数同士の戦場で使われる描写が無いからなんか違う感じ」


「魔法みたいに杖構えてドーン。みたいなのも無いし、多人数に囲まれたら大体逃げる為に術使うし、忍術で決着つける為の戦闘はしないイメージがある」


「へーそうなんだ。それはそれで面白いわね。やっぱりアニメとは違うわね」


「実際、忍者は実在はしたんだろうが、術だったりの記録が本当かどうかは怪しい物だからな。ジャパニーズファンタジーは本当の意味で謎が多いぞ。好きだからどれも否定はしないけどな」


「でも流石に広範囲魔法は自分たちの被害も考えておかないと危ないな。感電()黒焦げ()ミンチ(竜巻)、氷漬けって危なすぎる」


「そうね~。周りに人がいる時は気を付けた方が良いわ。杖持ってたらもっと被害出てたかも」


「杖って使うものなんだなやっぱり。この船の魔導士達はみんな持ってるのに俺だけ持ってないから少し違和感あったんだ」


「無くても大丈夫よ。使えてるんだし。でもあった方が魔法は強くなるし、見た目も様になるわよね~」


「街に着いたら一応杖を買っておこうかな」


「丸太削って自作したら?魔石まだ余ってるでしょ?」


「杖って自分で作れるのか?」


「無ければ作ればいいのよ。あ、そうだ、回収した魔物の魔石がある筈だから、1個寄越せって言ってみたら?どれも音無君が倒したんだから貴方にも貰う権利あるでしょ?」


「2体目のクラーケンの魔石が良いんじゃない?クラーケンなんて海に出ても滅多に会えないし、記念品にもピッタリね」


「海の恐怖の伝説が、観光地のお土産みたいな言い方とはクラーケンも気の毒だな」


「イカ焼きは食べれなかったけど、その分の埋め合わせだと思えば良いんじゃない? 良い材料になるわよ」


「後でシェーナに聞いてみるよ」

 エルカは元軍人でシェーナは正規の軍人だからな。魔石の管理責任者はシェーナだろう。


「所でクラーケンだけど、2体に襲撃されるとか異常じゃないですかね?この後もまた来ると思いますか?」


「そうね、この短時間で2体のクラーケンなんて異常よね。何かあると考えない方がおかしいわ。襲撃に関しては多分、これ以上は無いと思うわ。誰かの差し金だったとしても、あのクラーケン以上の魔物なんてこの辺りの海にはいない筈だから」


「空はどうですか?」


「飛行系の魔物って事?」


「はい、そうです」


「それも無いわね。竜に関しては途中に休む事の出来る陸地の無い海路を進む事は無いわ。他には鳥系の魔物が居るけど、弱いから弓で十分倒せる。脅威では無いわ」

 彼女の言う弱いの基準が不明だが、魔法では無く弓で十分と言うなら大丈夫なのだろう。


「なるほど。それなら無さそうですね」


「ええ、勘になるけど、私は一応こんな経験は何度もあるから、安心して良いと思うわ」


「わかりました」

 幾度も襲撃される経験はしたくないなぁ。


「あとセレーナね。彼女はエルカと特訓してるけど、あの申し出は有難かったわね」


「そうですね。アンダンテさんやエルカさんと違って、私じゃ剣も魔法もまともに教える事出来ませんからね」


「エルカは武術家なのかしらね」

「恐らくはそうでしょうね。船が宙に浮いてる時も一人で結界保ってましたから。足腰とか丈夫で、体幹はかなり良いのだと思われます。夕食の時に話を聞きたかったのですが、明日にでも聞いてみます」


「そうね。後は会議の事だけど、いくつか必要な物を言うから、今のうちに作っておくと良いわ」


「必要な物ですか?」


「ええ、罠に嵌められた時の保険よ。まあ使わない可能性も十分あるけど、用心するに越した事は無いわ」


「それも経験ですか?」


「ええ、私の場合はそんな事されたら城ごと破壊するけど、さすがに連れが居る状態でそこまでしたくは無いでしょ?」


 アンダンテに手を出すと城ごと破壊されるから止めよう。って思わせるやり方で牽制してきたんだろうな。彼女のやり方も分からなくはない。ただ、スケールがデカすぎて参考にならん。


「そうですね、一応良くしてもらった方の実家ですからね」


「だから色々と準備するのよ。人間てのは姑息な罠を仕掛けてくるからね。そーゆー輩には、一つ一つ罠を潰して恐怖を与えてやるのよ。おしっこちびる位の恐怖をね。ふっふっふ、もしも音無君に手を出したらどうなるか思い知らせてやるわ。姑息な人間共め」


「セリフが完全に魔王なんですけど」


 アンダンテは終始ニヤニヤしながら対策を教えてくれた。準備する物も含めて結構な数の内容だった。

 朝起きたら準備を始めよう。当初の予定では到着時間は昼前後で、次の日の朝に会議があるとの事だった。クラーケンとの戦闘で時間がズレただろうから、この先、何も無かったとしたら到着は夕方前か夕方頃だろうか。いま足りない物は到着次第だな。店が開いてる時間に着いたらなら店に飛び込もう。


 セレーナの方は流石にこの航海中の短時間ではそこまで強くはなれないだろう。

 今日を含めても3日あるかないかだからな。それは彼女もわかってるはず。

 ならば一度どこかで修行するのも手だが、戦火が広がるまでに本の回収を急ぎたい。


 だが、ご両親から預かった以上、二手に分かれると言うのも考えられない。中途半端な状態で実戦で鍛えるのも難しい。どっちにしろ難しい選択だ。俺自身の戦闘力はハッキリ言ってチートだ。ゲームで言うなら開始直後にMOD導入してアンダンテの魔導書と、この滅茶苦茶な切れ味の折れた剣を追加してるに過ぎない。セレーナに教える事が出来ないのは歯がゆいな。


 しかしこの辺りは今考えても仕方ない。会議がどうなるかで、王都での過ごし方も変わって来るし、今はそっちの方に集中しよう。


 にしても会議か。会議苦手なんだよな。一番上の立場だとなんか言わなきゃってなるし、でも部下は叱りたくないし。今回は謂わば他社との合同プロジェクトの戦略会議って感じだけど、相手が国になるわけだし、俺完全に場違いなんだよな。まぁ本が手に入ればそれで良いから、何か聞かれるまで黙っておこう。


 ほんと、考えるだけで胃が痛い。明日セレーナに胃に効く薬草を貰っておこう。



お読み頂き、ありがとうございます。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると励みになります。


栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)


ぜひよろしくお願い致します。


更新時間は通常、朝8時に致します。

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