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―狼の子とクエスト①―


突然、頭の中にカシャカシャと音を立てながら1文字ずつ文字が浮かぶ。


「シーカーウルフの子を育てろ」


「〇パン三世のタイトルコールかよ!」

思わず声を出して突っ込んだ。


シーカーウルフの子がビクっとした。

「あ、ごめん。お前に言った訳じゃないんだ。」


子犬特有のお座りをした、毛むくじゃらの子狼の頭を撫でながらそう言った。

「くっ!可愛い!」

「ワン!」

思わず抱き上げた。


「名前はルーナだったな。お前の母に頼まれたんだが、俺で良いのか?」

抱きかかえたルーナを見ながらそう呟いた。

「ワン!」

「ルーナは念話とかで喋れないのか」

「ワン!」

「返事だけは出来るのか。俺の言葉は理解してるのかな?」

「ワン!」

「・・・・・どっちだろ?」


「・・・とりあえず勢いとは言え、約束しちゃったし、他にする事も無いし、・・・子育て頑張るか。」

「ワン!」


音無惣一郎、40才で結婚もまだなのに子持ちである。

しかも知り合いに頼まれてって・・・昔こんなドラマ無かったか?

アナタの子よ。ってやつ。

まぁこの子は100%間違いなく俺の血は入って無いけど。


取り合えずさっきの小屋に戻って落ち着くか。靴も乾かしたいし、何より少し休みたい。てゆうか腹減った。


子狼を抱いて少し癒されたら一気に疲れと空腹に襲われた。


「ワン!」

ルーナが横を向いて吠えた。

「ん?!敵か!?」

同じ方向を見ると聖霊石があった。

「あ、そうだったな。お前の母の石だったな。忘れずに村へ届けないとな」

「ワン!」

右腕にルーナを抱え、左腕に聖霊石を抱えて川を渡る。

靴はもう中までぐちゃぐちゃなので諦めた。


「あの小屋に火を起こせる道具とかあるかな・・・・」

先程は余裕が無くてそこまで細かくは見れなかった。

「ワン!」

「かわいいな!この子は!」


ルーナと軽くイチャつきながら小屋に入るオッサン


にしてもさっきのタイトルコールは何だったのか。

シーカーウルフの子を育てろって、聖霊様にお願いされたのを再確認しただけだと思うけど・・・、この世界独自の演出?なのか?まぁ異世界転生させられたって事は、このオッサンにも何かしら役目があるんだろうけど、この子を育てるのが役目なのかな?


聖霊様はこの世界には魔法があると言っていたけど、内容までは聞かなかったな。失敗したわ。しかも俺自身も魔法を覚えてるって言ってたよな。思い出した。

剣の方に気を取られてそっちを聞くの忘れた!なんの魔法覚えたんだ?

そして魔法はどうやって使うんだろ?結構肝心な所聞いてないじゃん俺・・・。

 


暖炉の中でパチパチと音を立てて木が燃えている。

「ふう・・・なんとか点いたな」

暖炉の脇に火打石と火種があり、火口もしっかりあった。

放置されていただけあって、薪も乾燥してたし、たいまつ用の油みたいなのも見つけられたのは幸いだった。転生前だけど、いま流行りのソロキャンで実践を交えた練習しておいたのが役に立った。


今は何時位だろうか。

たしか通勤途中で朝9時頃に死んだはず。

「この世界に転生したのが地球と同じ時間なら、今は昼頃か?」

ドアから顔を出し、太陽の位置を確かめると、真上辺りにあったので恐らくは昼頃と推測する。


「まだしばらく日は落ちないな。」

靴もジーンズも乾かしたいので暖炉の前に脱いだ靴と椅子を持って行く。靴下はポケットの中に入れたままだったので濡れていない。


「革靴は日陰干しが良いんだけど、ここで野宿は出来ても食べ物は取りに行かなきゃ手に入らないので、早く乾かして何か食料を探さないとな。」

「育ち盛りの子供を一人食わせなきゃならないし、父ちゃんはがんばるぜ。」

「ワン!」

応援された気がした。


イスに座り服を乾かしながら、ふと腰に下げた剣を見る。


魔法で作られた浄化属性の剣か。聖霊様は意図的に折られたって言ってたな。

何の意図があってわざわざ折るんだ?まあ少し短いだけで性能に問題が無いなら構わないか。実際切れ味はすごかったからな。

斬られた聖霊様本人が問題無いと言っていたのだから大丈夫だな。

聖霊様のお墨付きだ。


テーブルには聖霊石が置いてある、添えてあった椅子に腰かけ、落ちていた本を拾い、パラパラとめくるが特に最初のような反応はない。


だが、何故か先程とは違い、文字が読めた。

いや、読めたというよりは理解が出来た。

知らない文字なのは変わらないが、文字の意味が理解できるようになっていた。

不思議な感覚だった。


そう言えば、この本に触った時、頭の中に色々入ってきたな。

その後、ゾンビサンシーカーの声が聞こえてきて・・・そうだ、それまでは声なんて聞こえなかった。


足元のルーナがのんきにあくびをしている。


聖霊様はこの本で魔法を覚えたと言っていたけど、この世界の言語理解的なやつもこの本から・・?


恐らくそうなのだろう。

本をめくっていくと、少しずつイメージが浮かび上がってくる。


この本は魔導書で、俺が覚えた魔法は属性の無い魔法で、主に身体強化の魔法という事らしい。魔導書に記載されている魔法は既に習得済みだが、全てがすぐに使える訳じゃなく、経験を積み、心身を鍛える事により徐々に使えるようになる。と書いてある。

つまりこの異世界にはRPGのようなレベルの概念があり、それに応じて使える魔法が増えていくってことらしい。


「セオリー通りだな」


「「きゅう~ぐるるぅ~」」

ルーナと同時に腹が鳴る


「腹減ったな」

「ワン!」


まだ色々書いてあるが、ひとまず魔導書は置いておいて、何か食べたい。


「そうだ、川あるじゃん、川と言えば川魚いるじゃん。」

「ワン!」

まずは魚取りだな。剣があるから木で銛が作れるな。靴が乾くまで銛に出来る手ごろな枝でも拾いに行くか。


火を起こす際に暖炉の傍でサイズの合う靴を見つけた。他人の靴だがサイズが合っていたので細かい事は気にしない。それに履き替えて靴の心配がなくなった俺は、ルーナと一緒に小屋の近くで銛用の枝を集める事にした。


勿論、ルーナはぴょんこぴょんこ走りながら着いてくるだけで枝は拾わない。

たまに小枝を加えて遊んでいる。


「はぁぁぁ何この可愛いモフモフぅ」

オッサンもイチコロの可愛さである。尚、今のオッサンの姿は傍目から見たらキモイだろうが異世界だし、周りに誰も居ないと思うので自重はしない。


いかん、仕事にならん。とは言えこの子をほったらかしておく事も出来んから、さっさと手ごろな枝見つけて小屋に戻ろう。


数分後、小屋に戻ると数本の枝を削って銛に変えた。

銛と言ってもまっすぐな枝を整えて、先端をとがらせただけのものだ。

これさえあれば魚は取れるだろう。


魚取りと言っても、上流から追い立てて下流の浅瀬に石を積み上げて作った、細い水路と小さい溜池状の罠まで追い込んで、溜池から出れなくなった魚を銛で突くだけの簡単なお仕事です。

なんなら素手でも捕まえられるはず。


ルーナを留守番させ、小一時間程で魚を取りに行く。


「ただいま!大漁だったぞ!」

「ワン!ワン!ワン!」


ちぎれんばかりの尻尾ブンブンで出迎えられたので、床に転がりながら5分程我を忘れてモフモフを褒めちぎりながらモフっていた。(時計は無いので体感時間)

ルーナは聞き分けの良い子で、イタズラせずにしっかりと留守番をしていたようだ。


30分か1時間か、多分それ位の時間で戻ってきたはずなので、薪を追加した暖炉の火もしっかり残っていた。その火で魚を焼いてルーナと一緒に遅い昼食をとった。


「塩が欲しい・・・・」

「ワフッワフッ」

「食べるか喋るかどっちかにしなさい」

「・・・・ワン!」

魚を飲み込んでから吠えてた。ただ、ルーナがなんて言ったのかまでは分からない。



昼食を食べ終え、傷まないうちに残りの魚を焼きながら、魔導書の続きを見た。

内容を要約すると、世界には「自然属性」と呼ばれる魔法があり、

火、水、雷、土、風、氷、光、闇の8つ

属性相関図は

火<水<雷<土<風<氷<火

光=闇 

属性の強弱はこの様な関係性で、無属性は原初の魔法と呼ばれ、何処の力関係にも属さない、特殊な魔法らしい。

この世界の魔法の適正者は、生まれながらに何かの自然属性を二つ持っているが、無属性魔法の適正者は限りなく僅かで、いずれ消えゆく魔法だとも記載してあった。



だが、原初の魔法の威力は高く、他にはない独自の効果の物が殆どで、あらゆる場面で有効的に活用が出来て自然魔法以上に応用が利くし、しかも原初の魔法って呼び方はなんかカッコいいじゃん?無属性魔法最高!! って巻末の空欄に走り書きがしてあった。


この本の持ち主が書いたのだろうか・・・・


多分、使える人が少ないから誰かと気持ちを共有したくても出来なかったのだろう。

精一杯の思いをぶつけて書いたんだな。中二病を長く患っている身としては気持ちは分からないでもない。


「そうなると俺自身も無属性魔法の適正者って事か。異世界の人間だから、この世界の自然属性が無かったって事なのかな?」

「ん-、そう言えばこの剣の浄化属性ってのはやっぱり光かな?聖霊様は剣自体が魔法で作られたって言ってたよな。それって魔法を物質化したってことか?」


ルーナをチラッと見てみたが、首をかしげていた。

気絶しそうな位、このモフモフは可愛いのである。分からなくても許される。


5分程モフった。(時計は無いので体感時間)


「さて、お腹も膨れたし、思いがけず大漁で夜飯も確保できた。」

「ワン!」

「てことで少しだけトロン村を探しに行くか」

「ワン!」

「土地勘無いから迷子にならないように川沿いだけな!」

「ワン!ワン!」


太陽の位置から見ると多分14時か15時位だからまだ時間はあるな。

「魚取りのついでに上流は少しだけ確認したから、次は下流かな。」

「ワンワン!」

ルーナが元気よく走りだした。

「おい、まてモフモフ!森に入っちゃイカン!」

「ワンワン!」

少し先で止まり、こっちを振り返って更に吠えるルーナ。

「これは着いて来いっていうパターン?」

「ワン!」

そう吠えるとルーナは森に向かってピョンコピョンコ走り出す。


「村の場所知ってるのか?・・・・」

「ワン!」

鳴き声が遠いので慌てて走る。


まぁ小さいとはいえ、この森の守り神の子なんだよな。生まれてどれ位かは分からないが、俺よりは森の事は知ってるか。


そんな事を思いつつ周りを警戒しながらルーナを目視で確認出来た時、ふと思い出した。

「あ、聖霊石持ってきてない」

「ルーナ、一回戻ろう!お前のかーちゃん置いてきた!」

「キャイン!」

ルーナが戻って来てそのまま一直線に小屋へ走って行った

「あいつも忘れてたのか・・・」


スロースタートですが宜しくお願いします。

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