#01:壊れた心と最愛の。
書きたい話が何個も思いついて全然進まない…
恐竜少女はともかく、孤独少女は進めんとなぁ
[プレイヤーNo.964の受付を開始しました]
[情報を照合中… …完了]
[個人氏名:日乃枝 朱莉、プレイヤーデータ《スルト》で同期を開始]
[全てのシーケンスを完了。幸運を祈っております]
◇ ◇ ◇ ◇
「……ん…ぁあ…?」
僕は目を覚ました。
いや待て、何かがおかしい。
「なんで、僕…あの時確かに、死んで……」
それは間違いないはずだった。
僕は腹部から体内の重要な内臓を幾つも破壊されて、あの時確かに死んだ。
なんで生きてるんだろう…いや、今はそんなの関係ない。
「死なないと…ちゃんと……」
そうしないと。
そうじゃなきゃ、水麗が幸せになれない。
僕は体を起こした。
否、起こせなかった。
「へっ…?」
僕はしばらく、驚きで目を見開いたままだった。
そこには、幸せそうな顔をして眠る、水麗がいた。
「なんで?なんで…水麗が?っていうか、布団?なんで?」
なんで、としか言えなかった。
僕は校舎裏で岩本にボコボコにされていたはずで…
布団に横たわってるわけない。
ましてや、水麗が僕に抱きつくなんて、今じゃ有り得ないハズなのに。
「…んぅ…」
「…っ」
水麗の声がした。
僕が動けないでいると、やがて水麗はゆっくりと目を開けた。
そして、僕の顔を見て。
「……あか、り?」
ボロボロと泣き出してしまった。
……なんで?
「ちょっ、水麗?な、泣いてるの?」
「あかりぃ…ごめん、ごめんねぇっ…」
水麗は僕を強く抱きしめて、ただひたすら謝った。
なんで、謝られているんだろう?
謝るべきなのは僕のほうで、そもそも謝る資格すら僕にはないのに。
「えっと、水麗?どちらかと言えば謝るのは僕というか…水麗は何にも悪くないんだよ?」
「でもっ、でもぉ…」
「うーん、分かった。じゃあ僕はもう気にしてない。これでこの話はおしまい」
「………分かった」
何都合の良いこと言ってんだ。
僕は心の中で、自分に何度も叫んだ。
本来なら僕は、二度と水麗に会っちゃいけなかった。
また会う前に、クソみたいなクズの僕は死んで、水麗の世界から消え去るべきだった。
なのに、何言ってんだ?
僕はもう気にしてない?
どの立場で言ってんだ。
そんな感情を胸の奥に引き摺り込んで、僕は水麗の頭を撫でた。
昔から、水麗はこうすると落ち着いたから。
「ん…」
頭をすりすりと僕の手に押し付けてくる水麗。
すると、そこでようやく僕は気づいた。
「あれ?水麗…髪白いよ?」
「んぇ……?」
水麗は自身の凄く長い髪を手に取って目の前で弄った。
そして、目を大きく見開く。
「ほんとだ…なんでだろ?」
「さぁ…?」
その髪の色は、ほんのり青みがかった綺麗な白。
まるで氷のようだ。
ん、氷…?
「そういえば、朱莉の髪色も違うよ?」
「…本当だ」
僕は少し考えた。
今、僕の髪色は燃える様な茜色をしている。
体には、見覚えのない包帯。
これは…
「FFSのアバターみたい」
「だよ、ね」
Fantasy Frontier Story。略してFFS。
僕らがやっていた、オープンワールドゲームの名前。
ザ・ファンタジーな世界観に過激なダークが混ざった所謂「ダークファンタジー」もの。
有名かと言われればそうでもなく、ただ界隈で人気のあるゲーム程度の知名度を獲得していた。
そのゲームを、僕たちは昔一緒にプレイしていたことがある。
その時作ったアバターに、僕たちの見た目はとてもよく似ていた。
水麗の見た目は、白い髪に透明な肌、目は透き通るような青をしている。
体型は全体的に出るところの出るモデル体型…は元からか。
僕の見た目は、茜色の髪に死人みたいな肌と、目は濁った橙。
貧相な体は背丈だけは大きくて、おまけに包帯が身体中に巻き付いている。
この下には火傷が隠されている。
アバター制作の時はあくまでもメイクだったが、現実になるとケロイド状になっていて本当に火傷なんだと感じる。
そして、僕たちが今いる場所。
ここは“煙の国“の宿だったはず。
僕たちがゲーム内で最後に過ごして、ログアウトした場所。
「私たち、FFSの世界に来ちゃった…のかな?」
こてんと首を傾けて水麗は言った。
恐らく、というか確実にそうだろう。
理由はわからない。原理もわからない。
けれど、FFSの世界に僕たちがいるというのは紛れもない事実だ。
「…じゃあ、どうする?」
「どうするって、何が?」
「この先何して過ごす?って話」
僕は水麗の言葉に少し考えて。
「…僕は、1人でどこか行こうかな」
そう呟いた。
正直水麗にとって、僕は一緒にいても価値のない人間だ。
なんなら災いを連れてくるかもしれない。
それに、このアバターが見た目だけじゃないのなら。
きっと水麗は1人でも大丈夫。
僕はそう思い、水麗に笑いかけようとした。
そして。
「……どうし、て…?」
ボロボロと涙を溢す水麗を、見た。




