どんな時もマイペース
家を抜け出してきたシアをみんなで憲兵の所へ送っていた。
(なぜか既視感が…)
「ったく。お前もう街に来るのはやめろよ。」
「いやよ、肉串が食べれなくなるじゃない!」
「そういう問題じゃねえだろ…」
「まあまあ、」
彼女と遊ぶのは楽しいがこう何度も死の危険を侵したくない。今まで運良く生き残っているが、それもいつまで続くかわからない。
(どうしたものか。)
もちろん、自分が会いにいかなければいいだけの話だ。ただその場合、このぽやっとしたお嬢様が危ない目に遭うだけだ。
(…見捨てれる訳ねえよなぁ。)
「ねえ今度は他のお料理も食べたいわ。」
「いいね。次はあそこのお店とかどうかな?」
「美味しそう!行きたいわ!」
「エルネもこいつを甘やかすなよ。」
そう言ってゆっくりと帰っていた時だった。
突然後ろに引っ張られ、口に布を当てられた。
「んぐッ!?!」
意識が遠のく。頭が回らなくなっていく。
(まずい、まずい、まずい!
このままじゃ、シアとエルネにも危険が及ぶ!!)
全力で抵抗しながらも、声を出し続ける。
「んんー!!!ん、んんーー!!」
(…あ。だめ、だ)
そうして、目の前が真っ暗になった。
「ってとこで記憶が飛んでる。」
「うん、俺も同じかな。」
「私もよ」
目を覚ますと手を縛られていた。あちこちから啜り泣く声や、泣き叫ぶ声が聞こえる。
(あー、やっぱ全員捕まるよな。)
周囲を見渡すと、子供が十数人ほどいた。室内は薄暗く、空気が悪い。壁の一面が鉄格子となっていて、檻のようになっている。ただ、端にトイレと思われるものがあった。長期間の監禁にも向いてそうだ。
「これからどうしような」
「…とりあえず、お腹減ったわ。」
「いや緊張感を持てよ。俺ら今監禁されてるんだぞ?」
「えぇ、」
「てか肉串食べてからそんな経ってないだろ。俺まだ腹減ってないぞ。」
(…ん?腹が減ってない?)
一瞬、自分の発言に違和感を持つ。ここがもし領外などであれば、俺らを運ぶために時間がかかるはずだ。必然的に胃の中の物は消化される。けれど、俺はまだ空腹でない。
「ねえ、それって…」
エルネも気がついたらしい。
「ああ、ここは街の近くだ。なんなら、街中という可能性もある。」
「確かにそうね。」
「うーん店の音とかはしないから郊外かな?」
「いえ、地下の可能性もあるわ。地上の音が届かないだけかも。」
「あり得るね。」
3人で色々話し込んでいると、遠くから複数の足音が聞こえた。
コツコツコツ、
俺らはすぐに息を殺した。
心臓がバクバクと音を鳴らす。
ガチャ、
「ほら今日の飯だ。味わって食えよ。」
4人の男が檻の鍵を開け、十数人分の食べ物を置く。そのまま部屋を出て行っていった。
足音は聞こえない。完全にいなくなったらしい。
「…びっっくりした。」
「あ、ご飯だわ」
置かれた食材にはパンやリンゴがあった。水差しもある。
「ねえ、これまずくない?」
「え?意外と美味しいわよ。」
(こいつもう食ってんのか…)
エルネの言葉に対して、彼女が頓珍漢な言葉で返す。
「違う違う。これだけ食事を用意できて、子供を一気に十数人誘拐できるのって、組織的犯行なんじゃない?」
「たしかに。バックにお貴族サマもいるのか?」
「あり得るね。」
組織的で後ろに貴族がいるとなると、憲兵に走り込んでも無駄になる可能性が出てきた。事態は相当良くないみたいだ。
(しまった、シアも貴族なのにこんな話を)
傷付いてないだろうか、と彼女を見たがパンを齧っていた。大丈夫そうだ。
「多分この感じだと、俺らすぐに殺されたりは死なさそうだな。」
「ほうね。」
「ここにいる子って全員平民の子供だよね。」
「ああ。貴族はいなさそうだな。」
「身代金目的っていうよりは人身売買の類じゃない?」
「その可能性が高いわね。」
シアがキリッとした顔で断言しているが、口にパンが付いていて台無しだ。
誘拐が身代金目的だった場合、命の補償はされる。
しかし人身売買の場合だと、そうとは限らない。売られた瞬間に、四肢をもがれる可能性だってある。
誘拐は嫌だが、より嫌な方だったらしい。
(俺…五体満足で帰れるのか…?)
「まあ、とにかく様子見だな。」
「だねぇ。」
「そうね。」
嘆いても仕方がないので行動することにした。
3人各々で、役割分担をする。
シアは泣いている子供や気を失っている子供の介抱をしつつ、情報収集。エルネはシアを手伝いつつ、犯人たちの行動を記録。
無愛想な俺は介抱などは戦力外だった。そのため鉄格子を壊せないかや、室内に何か良いものがないか探すことになった。
(なぜ近づいただけで、泣かれるんだ…)
部屋をよく探していると、隅に太い釘が飛び出していた。
尖った部分で縄を切り付けたら、簡単に取れてしまった。
(お、いけた。アイツらにも教えないと。)
「シア、エルネ!」
振り返ると、
小さい子供を撫でながらりんごを食べている彼女がいた。
「はにー?」
(いや気抜きすぎだろ。)
「これで縄解けるから、こっち来い。」
「ほんと!?りんご食べづらかったのよね。」
ため息をつきながらも、シアの縄を解く。
次にエルネを探した。
「おーい!」
彼はなぜか他の子供とわいわい盛り上がっていた。
「それがね、喧嘩の理由がカレー嫌いで言い合いしてたらしい。」
「は!?そんな奴いるの!?」
…放っておくことにした。あいつはもう少し縛られてろ。
そんな緊張感ゼロの檻の中で、俺は淡々と他の子供の縄を切った。
(街でいる時と、まったく変わらねえ。)
クラゲ「え、カレー嫌いなやついるの!?」
エルネ「そうそう。それで彼女ちゃんがブチギレたらしくて」
クラゲ「あっひゃっひゃ」
カレー嫌いと言った彼とカレー好きな彼女が大喧嘩したそう。




