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第5話 不思議な貴族だ。

金貨1枚は平民の年収1年分に相当すること。

屋台で出しても使えないこと。


それらを説明すると、彼女は絶望していた。

「そう落ち込むなって」

「いえ、私の調査不足よ…」


楽しみにしていただろうし、どうにか食べさせてやりたい。しかし2人分のお金は持ち合わせていなかった。

「うーん、俺の分使うか?」

「それは申し訳ないわ!諦めて他の場所に行きましょう」

すこし寂しそうな顔で言われた。


「あ、カルロ。何してんの?」

エルネ(生贄)がちょうどいいところに来てくれた。



シアをその場に待たせ、彼の元へ近づく。

「やあ。エルネ、良いところであったな!」

「え、なに?怖いって」

「お前金持ちだったよな。よしよし、俺と遊ぼうじゃねえか」

「は?え?」


エルネが俺の隣にいた人を見た。

「……もしかして、例の“お貴族サマ”関係か?」

(ッチ、勘のいい奴め。)

「ああ。」


彼女が肉串を食いたがってること、そしてお金が無いことを説明した。

「ってことで、お金貸してくれないか?」

「…うーん、」

「シアが食いたがってるんだ」

「まあいいよ」

「え、いいのか!?」

財布から銅貨を取り出して渡された。


「代わりに俺も着いて行ってもいい?」

「は?なんで」

「面白そうだもん」

「お前…まあ、いいよ」



言い合っても仕方がないので、エルネを連れて彼女の元へ戻る。

「シア、喜んでいいぞ。こいつ、エルネが肉串奢ってくれるんだと」

「え、でも…」

「まあ私も食べたかったので」

一瞬、エルネが敬語なことに引っかかった。

しかし、シアは貴族だ。平民が貴族に敬語を使うことは何もおかしくない。むしろ、自分がタメ口を使っていることがおかしいのだ。

(まあいいか。気にしたら負けだ。)


「代わりに、ご一緒してよろしいですか?」

(こいつ…)

「カルロが良ければ、もちろんよ!」

「…ああ、別にいいよ。」


「では、エルネさんも行きましょう!」

「ええ。光栄です」

エルネがにこと爽やかに笑う。しかし、彼女には何も響いてなさそうだった。食い意地の方が大事なようだ。

「カルロも早く!お料理が逃げてしまうわよ!!」

「わかったわかった。肉串は動かないから」

「っふは、」


3人並んで店に向かう。隣でエルネが吹き出している音が聞こえるが、無視して進んだ。


全員で肉串を頬張る。

シアは食べ方を覚えたのか迷うことなく、かぶりついていた。

「んん〜!!美味しい…」


(…何度見ても不思議な貴族だ。)

この姿だけを見ると、彼女はただ食いしん坊で無邪気な子供のように感じる。

「ねえ、彼女本当に貴族?」

「ああ。正真正銘の貴族だ」

エルネも似たようなことを思ったようだ。

(シアが特殊なのか、それとも案外貴族は俺らと同じなのか。)

そんなことを考えながらも、料理を食べ切った。



「お腹いっぱいだわ…」

「私もです」

「俺も満腹だ」

場所を移動し、3人で木陰に座り込む。よそ風が涼しい。


「そういえば、エルネさん。私に敬語はいらないわよ」

エルネから呆れた目線を送られるが、素知らぬ顔をする。

「じゃあ、俺もタメ口でいくよ」

「ええ、よろしくね。エルネ」

「こちらこそ」

「仲良くなってよかった、よかった」

「カルロ、お前な…」


そうして、軽口を叩きながらも、のんびりと過ごした。



「そろそろ暗くなってきたし、帰るか」

「だね」

(そういえば、シアはどうやってここに来たんだ?)


気がつきたくない事実(家出)に全身からだらだらと汗が出る。

しかし、当の本人は平然としていた。


「お前家抜け出してきただろ。どうすんだよ」

「大丈夫よ、隠し扉を使ってきたもの」

「…それ全然大丈夫じゃないな。」

どや、と胸を張って言われるが、家を抜け出してきたことに変わりはない。おそらく今頃捜索が始まっているだろう。


「とりあえず、近くまで送るから憲兵には自分で行けよ…」

「っくく。家を抜け出してって。ふはは、あだっ」

(俺、また死の危険を犯すのか。)


爆笑している親友は、殴っておいた。

何度も危ない目に遭うカルロ

面倒ごとに巻き込むシア

それらを楽しんでいるエルネ


三者三様…

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