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「さて、夜までどうしようか」
「なんかあのメイドの人が呼んでたよ?」
「そっか、じゃあ一緒にセロのところ行く?」
僕はサルビアが去ったのを確認して、フウロのほうを向く。
「う~ん。私は小屋に居ようかな」
「そう? でも、ツキが寝てるだけだし暇じゃない?」
「ううん。起きてるよ?」
「えっ」
僕はそれを聞いて、居てもたってもいられず、フウロの横を通り抜けて小屋の扉を思い切り開けた。
「ツキ!」
僕の勢いとは裏腹に、ツキはその首をけだるそうに持ち上げた。
「どうしたの、そんな見開いて」
「どうしたのって、だって、いいの? 僕、一人で歩いてるけど」
「もう安心した。って言ったらウソだけど、そうも言ってられないからね」
ツキは眼を細めて言う。か細い透き通るような声だ。
「今夜、祭りだよ。それは一緒に行くよね」
「そうね。行きましょう。約束だもの」
ツキはそう言って、笑うと、また首を自身の胴体にそっと乗せた。
「タイヨウ、私昼はここで待ってるね」
フウロはそっとツキのそばに座る。僕もここに居たい。けれど、セロに呼ばれている。そうだ、セロからの用事を聞いたらすぐに戻ろう。うん。それがいい。
そうと決めると僕は、すぐに小屋を後にした。
幸いなことにセロはすぐに見つかった。
「お待たせ、要件は?」
セロは、また忙しそうにしていた。
「すみません、屋台のほうに少し不備がありまして」
「え、大丈夫?」
「はい。そちらは何とかします。ただ――」
セロが空を指さす。そこには、小型の飛行機がおり、蜘蛛の上を旋回していた。
この蜘蛛の上は屋台で埋め尽くされていた。飛行機の止まる場所はない。
「分かった。下の方に案内してくるね」
僕は、上の飛行機に手を振って、エレベータで下に向かう。
永塔婆ならスペースも十分だ。烏色もきっと許してくれるだろう。
「こっちこっち!」
僕が手を振ると、こちらに向かって飛行機は降りてきて、危なげなく着陸した。
「ご招待ありがとうございます」
操縦席からヘローが出てくる。後方の席にはフォンがいた。夫婦で来たようで、ウィンの姿はない。
「ウィンはまだ飛行機のほうに夢中で、今日は夫婦で楽しませていただきます」
フォンに手を取ってもらって降りたヘロー。操縦席から杖を取り出し、僕らは三人横並びで歩き始めた。




