第47話
…………鳥のさえずりが聞こえてくる。
……全然眠れなかった。
あれだな。何千年と俺の体は活動しっぱなしだから、最早体が眠る方法を忘れている節すらあるような気がする。
感覚的に思ったことだが……多分、あながち外れては無いと思う。
今度ケルベロスに眠り方でも聞いてみようかな。
いや、やめとこ。
多分意味無いわ。
別に眠れないことが不便な訳じゃないし、無理に眠る必要も感じない。
このままでいいわ。
「んー……」
そう思っていると、アリアナの体がモゾモゾと動き出した。
あぁ、やっと起きたのか。
「ん……んぅ……? ……ッ!?!?!? あ、あ、あ、あんた、な、なんで私のベッドにいるのよ!!!」
アリアナは朝から本当に元気だなぁ。
俺とは違って寝起きだろうに。
「まずはご自分の腕がどうなっているかを見てみてはいかかでしょう?」
アリアナの腕は俺の腰に完全に回されていてる。
完全に俺はアリアナに抱きしめられて……いや、抱きつかれていた。
「う、腕って……ッ!?」
「分かりましたか?」
「……わ、私がラストを中に入れたの?」
アリアナは反射的に俺から離れ、布団を奪うように取り、その布団で顔を半分隠すようにして、羞恥心をたっぷりと滲ませた涙目でそう聞いてきた。
普通に俺が自分でアリアナの体を奥に押して入ったんだが……なんか、勝手に面白い勘違いをしてくれてるし、頷いておくか。
「えぇ、私も大事な大事な主を傷つける、もしくは起こしてしまう訳にもいかず、仕方なくベッドの中に引きずり込まれてしまったのですよ」
「……あ、怪しいわね」
「ご自分のミスを私のせいにされては困りますよ。この間から申し上げているではないですか。他責思考を治しましょう、と」
「ッッッ、い、いつものは本当にあんたが悪いんでしょ! …………で、でも、たしかに、今回は悪かったわよ。……だ、だけど! あ、あんたからしたら、や、役得だったんでしょ!」
「役得……?」
「な、な、な、何よ! あ、あんたは、わ、わ、私の体を条件に契約してるんだから、ほ、本当は嬉しかったんでしょ! だ、だから抵抗しなかったんでしょ! か、隠したって無駄なんだから! ……と、というか、そろそろ出なさいよ!」
「仕方のない方ですね。ご自分から私をベッドに引きずり込んだ癖に……」
嘘だけどさ。
「しかも寝言で「ラスト……好きぃ……」だなんて言っていた癖に。一体どんな夢を見ていたのでしょうねぇ?」
これも半分は嘘だ。
「そ、そ、そ、そんなわけないでしょ!!!」
「おや? 何故そう言い切れるのでしょうか」
「な、何故って……だ、だって……だって……だ、だったら! め、命令よ! さっきの言葉が嘘か本当か、正直に言いなさい!」
「ふふっ。本当ですよ。私がアリアナ様に嘘をつくわけが無いではないですか」
俺は命令なんて聞く必要が無いからこそ、そう言ってやった。
「ッッッ……そ、それじゃあ、ほ、本当に……」
「最初からそう言っているではないですか」
「ち、違う、から……! ゆ、夢だから! ゆ、夢なんだから! へ、変な勘違いしないでよね!」
「私は優しい悪魔なので、そういうことにしておいて差し上げますね。それより、アリアナ様」
「そ、それよりって……! ま、まぁいいわ。あんたが優しい悪魔かどうかは置いておいて、な、何よ」
「恐らくなのですが、昨日、またアリアナ様を狙う輩が現れたようですよ?」
「…………え?」
予想外なことだったのか、アリアナは間抜け面を晒している。
……誘拐された時は呑気に眠っていた(俺の魔法のせい)から仕方ないとして、1度暗殺者を送られたことは知っているだろうに、なんで予想できてないんだよ。
そりゃ、相手は失敗したわけなんだから、1度で済むわけが無いだろう。
まぁ、その組織の奴らはあの時あの場にいなかったやつ以外は全員死んでるんだけどさ。
「……また私を騙そうとしてるんじゃないわよね?」
「信用が無いですね。それに、また、とはなんでしょう? 私は先程から本当のことしか申しておりませんよ」
「…………さ、さっきはそうかもだけど……ひ、日頃の行いを振り返ってみなさいよ! 納得できるわよ!」
「ふむ……?」
首を傾げておく。
「ッ──」
俺の反応にいつも通りアリアナが怒って口を開こうとしたところで、部屋の扉がノックされた。
恐らく学園側の人間だろう。
昨日、改めて謝罪があるって言ってたしな。
状況を何も理解していないアリアナには説明も必要だろうし、早めに来たんだろう。
「……ふぅ。話は後よ。そこで大人しくしておきなさい」
アリアナは俺に一言そう言い、扉に向かって行った。そして、まだ寝巻き姿だからか、扉を開けることなく誰がなんの用で来たのかを聞いていた。
その結果学園の人と分かるなり、アリアナは俺に隅っこを見ているように命令をして、服を着替えてから扉を開けていた。




