第36話
アリアナの後を追っていると、老婆教師と髪の長い30代くらいの男とすれ違った。
今の男が治癒属性の魔法を得意としてるのかね。
というか、言ってみれば俺……は悪魔……使い魔だし関係ないとして、アリアナは授業を抜け出してる訳だが、何も言われないんだな。
別にどうでもいいけど。
「学食に行くわよ」
「今日は食べられるといいですね」
「だ、誰のせいでっ……ま、まぁいいわ。勝てたのは相手の使い魔を倒してくれたラストのおかげでもあるんだから、き、今日くらいは許してあげるわ。さ、さっきの件も含めてね」
どう見ても怒っている様子だが、許してくれたらしい。
「そうですか。では、質問よろしいでしょうか?」
「……いいわよ」
「先程の青髪の男、あれはなんだったのでしょう」
あまりにも馬鹿すぎる。
まさか本気で言ってきてた訳ではないだろう。
だからこその質問だ。
「私が詳しいと思うの?」
「なるほど。確かに失礼な質問でしたね。友達もいないボッチなアリアナ様に聞くようなことではございませんでしたね」
「そ、その言動の方が失礼なのよ! ……ふぅ。お、怒らない怒らない。……さ、さっきの青髪の男の話ね。あれはフグシア・ロードリオって言って、ロードリオ家の長男で、確かさっきの対戦相手のミミン・フラワタと婚約関係にあったはずよ。だから、あんなに怒ってたんじゃない? もちろん私はラストが悪いことをやっただなんて思わないけれどね。実際、ルーナリア先生の口からは試合の決着なんて何にも告げられなかったしね」
あ、良かった。アリアナはちゃんと理解してくれてたみたいだ。
流石にそこまで馬鹿じゃなかったようだ。本当に良かった。
というか、俺が聞きたかったのはあいつの序列なんだが……まぁいいか。……ん? そういえば、ロードリオってどこかで聞いたことがあったような──
「ラストには言うまでもないことでしょうけど、気にする必要なんてないわよ。どうせ、どっちも私よりも家格が下なんだから。その証拠に、私に対しては何も言ってこなかったでしょ。小物なのよ、小物」
「小物……小さな物……小さな者……アリアナ様?」
「っ、あ、あんた、な、なんてふざけた連想してんのよ! せ、背は確かにあんまり大きくないかもだけど、こ、ここは大きいでしょ!」
顔を赤らめ、胸を張りながらそう言ってくるアリアナ。
……むしろそこが1番小さいだろう。
そこさえ大きかったら、背は許容できるから、アリアナは完璧だし。
「……いっぱい食べましょうね」
「ッ〜〜〜!」
顔を赤くしたまま、地団駄を踏むアリアナ。
「ほ、ほんとっ! あ、あんたはっ! ……も、もう〜〜〜! ……怒らない怒らない怒らない!」
まだアリアナは地団駄を踏んでいる。
もう怒ってないはどう考えても無理があるだろう。
「ち、昼食、買ってあげるから! は、早く行くわよ!」
その後、アリアナは本当に昼食を買ってくれたから、俺はアリアナと一緒に昼食を食べた。
予想外だったな。
まさか昨日パクった金のことがバレないとは。……金のことが最後の決め手となって怒りが爆発すると思ってたっていうのにな。
まぁいいんだけどさ。
昼食は流石学園で出されてるものというべきか、かなり美味かったし。
そして、チャイムが鳴る。
……はぁ。ここからは簡単に言えば貴族としての座学か。……退屈な授業のスタートだな。
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相変わらずあの授業ではアリアナは空気だった。
ただ、空気故に無事に授業は終わった。
「では、私は先に帰っておりますので、序列戦、頑張ってくださいね、アリアナ様。影ながら応援していますよ」
「えぇ、任せておきな──って、な、何帰ろうとしてるのよ! あんたも一緒に戦うのよ! 私の使い魔でしょ! さっさと行くわよ!」
「……そうですか。やはり、私もアリアナ様と一緒に恥を掻かなくてはならないのですね」
「だ、だ、だから! なんで恥を掻くこと前提なのよ! 今日のお昼! 序列742位に勝ったでしょ! 950位になんて負けないわよ!」
「おぉ……なんと嘆かわしい。……あんなたまたま偶然運が良く勝てただけの試合で、分不相応にもここまでの自信をつけてしまうなどと……あぁ、嘆かわしい」
「も、も、も、も〜〜〜!!! わ、わ、わ、私は! さ、最初から! き、950位に負ける気なんて無かったでしょ!!!」
「ふむ。確かに、言われみればそうでしたね。……ということは、アリアナ様は自信がつく体験も特に無く、分不相応な自信を持っている愚か……いえ、失礼。超がつくほどのお馬鹿、と。メモメモ」
「ッ〜〜〜!」
声にならない悲鳴を上げ、地団駄を踏み、とうとう殴り掛かってくるアリアナ。
我慢はもうやめたのかな?
まぁ、体に良くないもんな。
絶対当ってはやらないけど。
アリアナの拳を避けながら、俺は昼食中の雑談時に聞いた序列戦を行う場所にゆっくりと歩き出した。




