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ドアマットヒロインは腰痛で家を出る決心がつきました。おかげで素敵な御方にも巡り合えました。  作者: 星野 満


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番外編 アメリアが泣いた!笑った!

※ 番外編です。

※ フロルが結婚して3年の月日が流れた後のお話です。

※ アメリアのハチャメチャさで、フロルも楽しい日々が続いています。

 ◇ ◇ ◇ ◇




 こうしてフローラとコールマン伯爵は婚約期間を得て晴れて結婚した。


 アメリアは深く満足して“フロル先生”から“フロルママ”へと呼び名を変えた。


 フロルママと呼ぶ事にしたのは、アメリアの自分を生んでくれたママと区別したせいだ。


 アメリアは自分が赤子の頃、亡くなった実母の想い出はない。


 だが幼い頃からコールマン伯爵が、いつも実母とアメリアの思い出話をしてくれたので、()()()()()つまり実母がとっても好きだった。


 なので、フロルママとママ(実母)


 ──わたちには、ふたりのママがいてもいい。


とアメリアは思った。


 フロルもアメリアが自分を“フロルママ”と呼ぶのを大いに喜んだ。


 ◇ ◇



 季節は流れ、フロルがアメリアのママとなって、早くも3年が過ぎた。


 アメリアは御年10歳になった。


 相変わらず、前髪ぱっつんの大きな黒い瞳がくりくりとした活発でおきゃんな女の子だった。


 あら、少しだけ背は伸びたけど──。



 だがこの日、アメリアはとても怒っていた。

 

 いや怒ったというよりは、とっても悲しかった! 

 という思いが適切だったかもしれない。


 ◇


 その発端は屋敷のメイドたちの噂話からだった。

 彼女たちの話を偶然、アメリアは聞いてしまったせいだ。


 それはある日曜日の事だった。


 屋敷の居間にこっそりと入ってくるアメリア。


 柱時計を見ると、もうすぐ午後一時だ。

 お昼ごはんが終わると、アメリアは子供部屋でお昼寝をする時間だった。


 だが、こましゃっくれのアメリアは、パパとフロルママの二人っきりのお話を隠れて聞きたくて、ときどき居間のサイドテーブルによく隠れて聞くのだ。


 最近のアメリアはニョキニョキと背が伸びて、サイドテーブルではきちきちで隠れづらくなってきた。


 ならば、広いベランダのカーテンの陰に隠れてみようとアメリアは考えた。


 こうしてドアの外から話し声が聞こえてきたので、アメリアはパパとフロルママだと思い、モスリンのカーテンの陰に慌てて隠れた。


 若いメイドたちはお喋りしながら入ってきた。

 どうやら居間の掃除をしに来たようだ。



「え、やっぱりそうだったの?」

「うん、そうらしいわよ」

「そっか、だから奥様は、何年もお子様ができないのね」


「やっぱりアメリア様は義理娘だから、フロル奥様が気兼ねしてるのかなって……」

「でも、そうしたら当家の跡継ぎは出来ないと困らないのかしら?」

「そうね、旦那様はアメリア様が大好きだから、婿でもいいのかもしれなくてよ」

「なるほど……」


「ねえ、その話本当なの?」


「「え?」」


 突然、ベランダのカーテンからアメリアがメイドたちの前にフラっと現れた。


「「ひぃ、アメリア様!」」


 メイドたちは不意を突かれてびっくりした!


「「ああ……」」

 アメリアの表情はそれは、今まで見たこともないほど黒い眉が額に付くくらい吊りあがって、とても怖い表情に見えた。


「驚かなくていいわよ。だけど……その話は本当なの? ねえ、本当にフロルママはあたしに気兼ねして、赤ちゃんを産まないの?」


 アメリアはメイドたちから見たら、とても怒った顔に見えたが、内心は酷く動揺していたのだ。

 

 直ぐに黒き瞳から大粒の涙がポロポロとあふれ出した。


 メイドたちはアメリアの急な泣き顔にギョッとなった。


「ア、アメリア様……申し訳ありません」

「ああ、申し訳ありません。いいえいいえ、そんなことありません。私が勝手に臆測しただけです!」


「うぇえええん……フロルママ……」


 しかし、アメリアは泣き止まない。


「ああ、どうしましょう。貴方が変な事言うから」

「だって、いや……すみません。私なんて事を!」


 こうしてメイドたちは平にアメリアにいい訳をしたり、深く詫びたりしたが、アメリアはずっと泣き続けていた。


 ◇ ◇


 

 この夜、アメリアは何も食べたくないといって、夕食を、断り子供部屋に引きこもった。


 その夜──。

 

 メイドたちからアメリアが泣いた話を聞いたフロルは、アメリアの部屋へとノックした。


 アメリアからの返事はなかった。


「アメリアちゃんフロルママよ。入るわね」


 といってフロルはアメリアが寝ているベッドに近づいた。


 アメリアは(うつぶ)せで横になっており顔が見えなかった。


 フロルはふぅ……と溜息をついてベッドサイドチェアーに腰をかけた。


 そしてアメリアのオカッパの黒髪を片手で優しく撫でた。


「アメリアちゃん、お願いだからフロルママに顔を見せてちょうだいな」


「…………」


 返事はなかった。


 アメリアは(うつぶ)せの状態は変わらず、フロルの問いかけに応えなかった。


 最初フロルは、アメリアが眠っているのかと思ったが、背中がモゾモゾしているので眠ってはいないようだった。


「マリーたちから聞いたわ。彼女たちね、私とパパにアメリアちゃんに酷い噂話を聞かれてしまったと、何度も謝ってたわ」


 アメリアの体がピクリと動いた。


「でもね〜アメリアちゃん。マリーたちの赤ちゃんの話は、酷い噂でもないの。アメリアちゃんが聞いた通りなのよ」


「え?」


 アメリアはフロルの言葉に驚き、飛び起きてフロルに振り返った


 その顔は、酷く泣きはらしたのか、目の回りが真っ赤になっていた。


「あらあら~アメリアちゃん。まるで赤いタヌキみたいなお目めになってよ」


 フロルは悪いと思いながら、ぷっと笑ってしまった。


「ひどいフロルママったら! あたしは悲しくて泣いていたのよ!」


「うん、ごめんなさい。本当に悲しませちゃったわね。でも……」


「でもじゃないわ! いいことフロルママ!私に気兼ねして、パパの赤ちゃんを産まないなんて、もってのほかよ!」


「うん、そうね、そうだわね」

 とフロルは素直に認めた。


「そうよ、パパだって我が家の()()()()が欲しいに決まってるわ。それをあたしのために産まないなんて……」


 アメリアの眼には再び涙が溢れていた。


 フロルママの気持ちは、アメリアには嬉しかった。


 ──それだけフロルママはあたしを愛してるから!


 本当の子供の赤ちゃんを産みたくないんだ。


 だけど、だけど……。

 なぜかアメリアは自分が悪い子に思えて仕方がなかったのだ。


 自分がフロルママとパパの幸せを壊している気がした。


「アメリアちゃん、ごめんなさい」といってフロルは深々と頭を下げた。


 とフロルのバラ色の頬はいつも以上に赤く染まっていた。


──あれ?


 アメリアはいぶかしがった。

 何故ならフロルママが頬を染める時は、いつもとても嬉しい時だからだ。


「フロルママ……?」

「アメリアちゃん、結論を先にいうわね」

「けつろん?」

「ええ実は今、お腹に赤ちゃんがいるの」

 と、更に赤くなるフロル。


「ええっ!?」


 アメリアはビックリ仰天した。


「赤ちゃんがいるの? フロルママのお腹に?」


 と再び、フロルのスマートなお腹をまじまじと見つめた。


「ええ、本当は作らない様にしてたんだけど……やっぱりねぇ。私たち我慢できなかったの……」

 フロルは増々頬が染まっていく。

 

 メチャクチャ恥ずかしがっていた。


「アハハハ、アハハハ!」 


すると突然、アメリアが大笑いした。


「アメリアちゃん!」


「やったあ、フロルママに本当の赤ちゃんができたのね! マリーたちがいい加減な事をいうから、あたしとっても悲しかったのよ」


「アメリアちゃん、いいえ違うの……でも」


 フロルはなんとかアメリアに赤子ができた事をどう説明していいのか困惑した。


 メイドたちの噂は真実だった。

 

 結婚当初、ロジャーと二人で、しばらくは子供は控えようと話をしていたのだ。


 やはり多感な時期のアメリアに、寂しさを与えたくない、というのがフロルの気持だった。

 

 若いフロルにとっては実の子が生まれたら、果たしてアメリアと今まで通り愛せるのか、不安があった。


 そんな事とはつゆ知らず、アメリアはやけに上機嫌にフロルに抱きついてきた。


「フロルママ、おめでとう!やっぱりコウノトリがお腹に宿ったのね!」


「え?」


「コウノトリよ、パパとママがベッドで一緒に寝るとコウノトリがやってきて、赤ちゃんをママのお腹に宿すんでしょう! ()()()パパとママが別々のベッドで、一人寂しく寝ていると思って悲しかったの」


「あ……あのね……違うの……」

「ううん、もういいのよフロルママ。あたち、とっても嬉しいの」


「アメリアちゃん……」


──まあ、アメリアちゃんたら、あたちなんて幼児言葉に戻って……


 フロルはどう説明していいか困惑したが、どうやらアメリアの機嫌は直ったようで取り敢えずホッとはした。


 ──そうだ、アメリアはまだ10歳の少女だ。

 

 てっきりこの子は、大人の事情を知りたがる、おませな娘だと思いすぎていた


と、フロルは気付いた。




 コウノトリが赤ちゃんを運んでくれる。


 ──うん、今はそれで良いではないか。


 フロルは、内心アメリアとお腹に生まれてくる我が子に不安を抱いてはいたが、何だかこのまま大丈夫な気がしてきた。


 そうだ、こうしてアメリアと夫のロジャーがいつも私の側にいてくれる。

 

 たとえ実の子だろうと、そうでない子だろうと私がアメリアのママであり、お腹の子のママなのは変わらない、と。


 ◇ ◇


 7か月後、フロルは無事に玉のような男の子を産んだ。


 アメリアは大喜びで、おくるみに包まれた生まれたばかりの赤ちゃんを、そっと抱きしめた。


「フロルママ、コウノトリの運んだ赤ちゃんて()()()()()()()()()だったのね。でもすっごく可愛いわ!」


「「へ?」」驚くコールマンとフロル。


「パパ、フロルママ。平気よ、赤ちゃんに誰もお嫁さんが貰えなくても、私が一生守ってあげるから安心してね!」


 と、この時アメリアは本気でフロルママが“”猿の赤ちゃん”を産んだと信じていた。

 

 それからというもの、アメリアは弟をいたくいたく可愛がり、弟を独占したくて自分がお嫁にいくまで、恋人すら作らせなかった。


 ああ、可哀想なおさるの赤ちゃん(モンキーベイビー)




 ──完──





※ 2026/9/1 修正済み。

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― 新着の感想 ―
番外編も読みました♪(*^^*) アメリアちゃん、子供なりに自分のせいでフロルママが赤ちゃん産まないと思ってたんだね〜。 でも、結局できてたんかーーい\(^o^)/♪笑 アメリアちゃんも泣いたり笑…
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