01. 春の嵐は突然に!
※ ざまあ作品シリーズ第三弾です。今回のヒロインはドアマット令嬢です。
※ プロローグはドアマットヒロインの虐げられた生活からスタートします。
※ 物語の中盤からヒロインが覚醒します。
※ 暴力的なシーンも少しあります。
※ 継母親子がざまあされてラストはおきまりのハッピーエンドです。
※ 早速誤字脱字報告して頂いた方、いつもありがとうございます。<(_ _)>
※ 短期連載・既に完結済みです。
◇ ◇ ◇ ◇
ジリジリと照りつく暑い真夏の午後──。
ここは王都にあるベルチェ子爵邸。
「フロル、そこがすんだら農園にいって西瓜を採ってくんだよ!」
「はい、お義母様。」
「フロル、なるべく音が良くて大きいものを採ってくるのよ。」
「はい、お義姉さま」
フロルと言われた娘は、はしばみ色の虚ろな目だが、直ぐに返事をした。
フロルは継母と義姉の指示されて、屋敷の裏口から台車を持ちだして庭へと出て行く。
その姿は、何年も命令されて動く女中さながらのようだった。
だが、この古びたメイド服を着たみすぼらしい娘こそ、この春まで子爵邸の一人娘だった、フローラ・ベルチェ子爵令嬢だった。
フローラとは“花と春の女神の如く”と、父親が名付けた美しい名前だ。
愛称はフロル。
だが彼女の現在の姿を見ると、その美しい名は見る影もない。
血色の悪い青い顔、はしばみ色の眼は光りを失っている。
ふくよかだったバラ色の頬はすっかりと痩せてこけてしまった。
手足もガリガリに痩せ細り、美しい銀色の長い髪もバサバサとなり、むぞうさに結っている。
フロルの父親、ジョージ子爵がこの春行方不明になってから、フロルの生活が一変してしまった。
◇ ◇
フロルが『一人娘だった』と過去形なのは、現在、屋敷にはフロル以外に二人の子供が居住しているから。
一人は異母兄のヤコブ。
もう一人は義姉のラーラ。
二人の母親のジャンヌ。フロルの継母である。
この三人は吹き荒れる春の嵐のように、突如としてベルチェ家の屋敷に現れた。
フロルは初めてジャンヌを見た時、
──少し薹は立っているけど、顔立ちは派手めの美人という第一印象。
だがそれ以上に、蛇のようにぬめりつく妖しい黒い瞳に恐怖心があった。
一言でいえば品性の無い毒々しい女という印象だ。
◇
「ジョージ、久しぶり、後ろにいるのは私の子供達。息子のヤコブは貴方の子供ですよ、とても大きくなったでしょう!」
とジャンヌは、屋敷のエントランスに足を踏み入れた途端に、フロルの父親、ジョージ子爵に伝えた。
「ジャンヌ、君は何バカげた事を言っているんだ?」
ジョージ子爵は、最初は呆れて相手にもしなかった。
遠い昔の知り合いだった異国の女が、突然我が家に来て「あなたの息子よ」と言われても、誰が信じろというのか。
頭がおかしいとしか思えない発言だった。
まず何一つとして証拠がない。
「いいえ、証拠ならありますわ、息子のヤコブを見て下さい。もうすぐ二十一歳になりますのよ!」
ジャンヌはヤコブをジョージ子爵に紹介した。
「ジョージ、とくとご覧になって、ヤコブは紛れもなくあなたの子供ですわ。私とラーラは黒髪黒眼でしょう。けれどヤコブだけは違う、あなたと同じ茶色の髪と茶色の瞳。父親の系統を色濃く継いでますわ──実をいうと当時結婚した夫も黒髪でしたの。だからヤコブは曾祖父の隔世遺伝と説明して、なんとか事なきを得ました……それでも夫は訝しがってましたけど、おほほほ!」
そういってジャンヌは、さも当たり前のように高笑いをした。
「おほほほ……ねえ、ヤコブ」
「そうだね母様。亡くなった父上は最初から俺を不義の子だと疑っていた。だから亡くなる最期まで俺には冷ややかだったなあ」
ヘラヘラとニヤケながら息子のヤコブが応えた。
「いい加減にしろジャンヌ、君の言ってる事はメチャクチャだ。それだけでどうして俺の子だと証明できるんだ!」
「いいえ、あなたの子ですわ。何よりもお腹を痛めて産んだ私が、確信してるのだから間違いありません!」
「狂ってる!」
その後も二人は言い合いとなったがジャンヌがすまし顔でいった。
「ジョージ、私は長旅でとても疲れました。立ち話もなんですから中で話し合いましょう」
「おい待て、待たんか!」
当主のジョージが止めるのも無視して、ジャンヌたち親子は我がもの顔で屋敷の中へ入っていく。
それはあまりの理不尽さであった。
──信じられない、愛するお父様に長子がいたなんて?
この有り様を終始見ていたフロルは、突然やってきた、異国の親子に茫然とするしかなかった。
※ 第1話お読み頂き大変ありがとうございます。
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★6/10 19:23 異世界日刊ランキング(完結)76位(110ポイント)に入りました<(_ _)>
ポイント&ブクマを入れてくださった皆さまのおかげです。本当にありがとうございました!
これでざまあシリーズ3作ともに100位以内入りました。(*^。^*)
これまで二けたポイントばかりだったので、100ポイントは一つの目標でした。
やはり「ざまあ作品「は人気があるジャンルなのだなと実感しております。
★また、よろしければ一読頂ければ嬉しいです。本当にありがとうございました。