ロイの法整備
俺がお金を住民達に配布している頃、ロイは次なる事業に取り組んでいた。
法整備である。
秩序とルールが無ければ、何がよく、何が悪いという基準が無く、荒廃していくのは目に見えている。
だから、この国に適した法を作るためにロイは動き出していた。
「これが、六法全書。大きいな」
俺はロイに自宅にあった六法全書を渡していた。
日本国全ての法律が載った六法全書で、法というものが何かということを掴んでもらうためだ。
「憲法、民法、商法、民事訴訟法、刑法に刑事訴訟法。この大まかな割り当てで法律がいっぱいあるんだね」
ページをペラペラとめくり、ロイはスラスラと確認していく。
「なるほどね。この法は、秩序を保つためにあるんだね。この法律で制限して、人が清く正しく生きるための、バイブルのようなものなっているというわけだ」
紅茶をすすり、ページをめくる。
「おっす、法が何か分かったか?」
俺はお金の分配を終えると、ロイのうちの中へ入り込んだ。
「うん。なんとなくね。確かにこれが無いと、世の中がぐちゃぐちゃになってしまいそうだね」
「そうだろ。絶対に法は必要だ」
「で、オブリビアでの法律のことだけど……」
「おう」
「基本的には、この六法を参考にさせてもらうよ。必要そうなのをピックアップして、この国の法として知らせる」
「ああ、確かにいいと思う。日本が平和になるために作った憲法だ。生かさないわけにはいかないだろう」
「でも、一つ足りない気がする」
「うん?」
夕焼けに映るロイの顔は、はっきりと悩みの色を見せていた。
……数日後。
俺はロイの家に呼び出された。
「おーい! 来たぞ」
「待っていたよ、ガクト」
ロイは落ち着いた様子で俺を出迎えた。
リビングに導かれ、椅子に座る。
「で、話ってのは?」
ロイは真剣な面持ちで、話し始めた。
「ガクト、前に僕が何か一つ足りないと言っていただろう」
「ああ、そんなこと言ってたな」
「その答えが見つかってね」
「…ほう。で、何だ?」
「それは、……魔法だよ」
そう言われた時、俺は納得した。
そして、ロイに仕事を任せて本当に良かったとも思った。
「魔法の存在しない、ガクトのいた国は、魔法ってものを測る定規がない。だから、六法全書の中の法律だけでは絶対に足りない。魔法を裁くことができない」
「そうだな。それは全く正しい。よく気づいたな」
ロイは自慢げに一言いった。
「まあ、ガクトよりは魔法のことを知ってるつもりだからね」
俺はロイに一つ問いかける。
「それで、その魔法の法律は考えているのか?」
「うん。でも、まだ少しだけどね」
「少し見せてくれないか?」
「いいよ」
ロイはまとめた資料を俺に手渡し、パッと目を通す。
「魔法 第一項 魔法による他者に損害、傷害を負わせた場合、刑法と同様に裁判で有罪、無罪を問う。第二項 魔法による傷害の刑の度合いは、魔法そのものの規模、威力を参考とし、被告人の残忍性などとともに判断するものとする。第三項 魔法の発動による体力衰退による、損害、傷害は全て自己責任である。………」
俺は資料を見て目を見張った。
簡易的で分かりやすいのに、深くまでちゃんと捉えている。十分法と成り立つものだと思ったからだ。
「すごいじゃないか。これなら使えそうだぞ」
「本当に。それはよかった」
ロイは笑みを浮かべていた。
……また数日後。
俺とロイは二人で協力して、魔法のための法を作りあげた。
その名も『魔法』。
シャレかもしれないが、一番分かりやすくていい。
それを皆に公布し、七法全書として記した。
それに合わせ、裁判所と刑務所を設け、実際に法として成り立つようにした。
しかし、取り締まる人がまだ存在していないような気が……。




