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おっさん異世界でフグをさばいていたら伝説になる  作者: 北真っ暗
1つ目の伝説

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第49話 都全域に広がる脅威

 王宮の執務室に通されたナカムラは、整然と並ぶ書類と、地図の広がる机の前に立つ王太子と対面していた。背筋を伸ばしたその姿は若さを感じさせながらも、目の奥に疲労の色が見え隠れしている。


「よく来てくれた。ナカムラ、そして君の仲間たちにも礼を言いたい」


 低く響く声に応えるようにナカムラが軽く会釈をした。

「依頼の件、詳しくお聞かせ願えますか?」


 王太子は深く頷き、机に置かれた書簡を開いた。

「ここ最近、都の治癒院には今まで毒を持たなかったはずの魚や獣を食べ、中毒症状を訴える者が相次いで運ばれている。最初は報告ミスか間接的なものだと考えていたが、数が多すぎる。これは異常事態だ」


 言葉に重みがあった。毒というものは農民や漁師にとって身近でありながら、扱いを誤れば死につながる恐怖の存在である。ましてや、毒を持たぬはずの生き物に毒が現れるなど、自然の秩序を乱す事態に他ならなかった。


「原因の特定と、対処法の確立を急ぎたい。料理大会での一件で、君が毒に関して高い知識と技術を持ち、かつ守秘義務を守る者であることはすでに確信している。ゆえに、この件を任せたいのだ」


 差し出されたのは厚い革袋。確認するまでもなく中には相当な前払い金が入っているのだとわかる。

 ナカムラは王太子の顔を見ながら、静かに答えた。

「わかりました。この件、お受けいたします」


 王太子の顔に安堵が広がった。

「感謝する。必要な支援は惜しまないつもりだ」


 ナカムラがまず提案したのは『検疫所』の設置であった。

「都に入る食品をすべて一度確認する必要があります。毒の有無を確かめ、場合によっては部位ごとに切り分けて確認したい。私自身も検査に加わり、情報を集めたいのです」


 王太子は即座に理解し、頷いた。

「商業ギルドに協力を要請しよう。彼らが物流を把握している、出入りする食材の確認が可能になる」


 その数日後、都の城門脇には簡素なテントが立ち並び、荷馬車が到着するたびにそこを通過するという検査が行われるようになった。必要に応じて、木箱が開けられ、魚、獣肉、野草といった品々が順番に並べられる。


 ナカムラは汗を拭いながら、一つひとつの素材に目を凝らした。毒が視認できるため、呼び止め、確認する荷物は限定的だ。このスキルが無かったら全ての食材を解体し、あらためることになり物流が止まり混乱が起きていただろう。


「この肉と魚、内臓に毒がある」

 指摘すると、補佐についていた若い検査員が慌てて記録を取る。


 その間、コリーとリンは治癒院を訪れていた。

 ベッドに横たわる患者たちから、症状の出方や食べた物を聞き取り、ノートにまとめていく。

「川魚を食べたんですね。最初は痺れがきて、吐き気……」

 コリーとリンが丁寧に記録を残しながら、小さく眉をひそめる。


 二人の情報はすぐに検疫所へ届けられ、ナカムラの調査と突き合わされていった。

 何日にもわたる調査を経て、傾向が見えてきた。


 海から運ばれてきた魚介には毒の反応が少なく、むしろ山や川からの獲物――野生動物、川魚に毒素が多く含まれていたのだ。


「共通しているのは……野生の獣や淡水魚か」

 ナカムラは腕を組み、考え込む。


 やがて彼は一つの結論に至った。

「当面の対策は、徹底的な血抜きと、内臓を食べないこと。毒が集中しているのはそこだからだ」


 王太子に報告が上がり、国からの指示として都や周辺の村に情報が伝えられた。住民たちは驚きつつも、指示に従い食材の処理を行うようになり、中毒者の数は減少に向かい始めた。


 だが、根本の原因はまだわかっていない。

「野生生物が毒性になった理由を突き止めなければ、根本的な解決には至らない」


 ナカムラは地図を指差した。

「山や川……となれば、山脈が怪しい。以前の川魚の毒とも関係しているはずだ」


 仲間たちが頷いた。コリーは不安そうに唇を噛むが、リンは静かに地図を見つめている。


 ナカムラは決意を込めて呟いた。

「おそらく山脈を調べれば、原因を突き止めることが出来るだろう」


 都全域に広がる脅威。その真相を突き止めるため、彼らの挑戦が始まろうとしていた。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。




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