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おっさん異世界でフグをさばいていたら伝説になる  作者: 北真っ暗
1つ目の伝説

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第41話 商人の誘い

 山脈の下部での探索にも、ナカムラ、コリー、そしてリンの三人は少しずつ慣れてきていた。最初は危険な獣や地形に振り回されるばかりだったが、今では各々の役割がはっきりと形を成してきている。特に貢献を見せているのは、リンだった。


 コリーのボウガンは単発式であり、連続して相手を止める力はない。ナカムラに至っては近接戦闘の主力が包丁であり、料理としては十分だが、獣を相手にするには非力と言わざるを得なかった。もちろん、腰に吊るしてある毒薬や忌避剤を投げつけ、獣の動きを鈍らせたり追い払ったりすることは可能だ。しかし、それは最終手段であり、あまり多用できる戦術ではなかった。


 その点、リンは部族の村で最も強かったという肩書きに違わぬ実力を発揮してくれていた。リーチで優れているわけではないナイフを自在に操り、紙一重の距離で獣を仕留める。柄尻にロープをつければ、中空を舞う生き物すらも射程に収めてみせた。その戦いぶりはしなやかで、丸盾を活用し獣の突進を受け流すように身を翻し、次の瞬間には鋭い刃が急所を抉っている。日光に弱いという特有の弱点があることは確かだが、陽を遮るほどの高い木が茂る森林地帯であれば、さほど気にならない様子だった。


 さらに、コリーとの相性も抜群だった。リンだけでは仕留めきれない獣であっても、柄尻と反対側のロープを木に結びつけ、相手の動きを徐々に制限していく。絡まってもがく獣を、コリーがボウガンで正確に射抜く。これは積み重ねた経験の成果であり、今までにない新しい戦い方の確立でもあった。


 こうした戦術によって、三人は次々と依頼を達成していく。


 最初に料理大会でも食材としてお目にかかった剣角鹿を狩猟することに成功する。角を常に研ぎ澄ませ、剣のように鋭利に尖らせているその獣は、突進力と殺傷力においては危険生物だが、素材としての魅力も高い。地を蹴る蹄の音とともに剣となった角を振り回してくる。近寄ることが難しい獣だが、ロープを巻きつけられ動きの鈍った剣角鹿は、コリーによって討ち取られた。息を荒げる三人の視線の先に倒れる巨体は、これまでに積み重ねた連携が形となった証そのものだった。


 続いて挑んだのはヒトクイドリ。陸上を駆ける鳥類の中でも特に凶暴で、見つけた獲物には問答無用で襲い掛かる習性を持つ。鋭い嘴と蹴爪は、木盾を砕くほどの破壊力を秘めている。狩猟対象として捜索していた際に、その黒い影が一直線に突っ込んできた。咄嗟にナカムラは反射的に腰の粉末を振り撒いた。香辛料を混ぜ混んだ毒とも言える粉末。舞い散る刺激臭に鳥は一瞬たじろぎ、そこへリンのナイフが閃く。動きの鈍ったところに、コリーが落ち着いた一射を放ち、ヒトクイドリは地に伏した。


 これらの成功体験は大きかった。三人は山脈という新しい土地でも十分に通用すると自覚し、山脈の中腹を目指すことを現実的な選択肢として捉えることができるようになってきた。そこにはまだ見ぬ未知と危険、そして新たな収穫が待ち構えている。


 都に戻り、冒険者ギルドにて依頼達成の報告を済ませたナカムラたちは、安堵の息を吐きながら帰路につこうとしていた。そこへ声をかけてきたのは、いつもの商人アキードである。


「盛況なようで何よりですな」

「アキードさんもな」

 軽い世間話の後、アキードは愉快そうに目を細めて告げた。


「今回はオークションのお誘いに来ました」


 それは商業ギルドの一部、紹介制で行われる希少品の取引会。つまり特別なオークションへの誘いだった。冒険者である自分達に声がかかるということは、すでに彼らが一定の成果を挙げ、資産を築いていると見られている証拠でもある。


「……オークションか」

「ええ、見るだけでも構いませんよ。ですが、きっと勉強になるはずです」


 アキードから差し出された参加証を受け取り、ナカムラはしばし無言でそれを眺めた。豪奢な装飾は施されていないが、貴重なものだ。コリーは目を輝かせ、リンは無表情のまま少しだけ首をかしげる。


「見るだけでもいいなら、勉強になるな」


 そう結論づけ、ナカムラは参加を決めた。様々な品が集まるというその場に足を運ぶことは、確かに新しい世界を知るための一歩になるだろう。


 それからの数日間は換金できるものを換金し、溜まっていた素材を整理していった。剣角鹿の角やヒトクイドリの羽根は高値で取引され、財布の中身も潤う。これまでの素材などもさほど気にしていなかったが換金すればかなりの額になることが判明し都の市場を歩きながら、三人はどこか浮き立つ気持ちを隠せなかった。


 山脈の探索に慣れ、戦いの術を学び確かな戦果を挙げた。次に待つのは、未知の品々が並ぶ商業ギルドのオークションという新たな戦場だった。

今回も読んで頂きありがとうございます。

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