↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん異世界でフグをさばいていたら伝説になる  作者: 北真っ暗
1つ目の伝説

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/92

第25話 密林の調査

 湿地に通いなれた頃、次なる一歩を模索していた。湿地の探索で得た経験は確かに大きなものだったが、同じ環境に留まり続けるのでは、冒険者としても料理人としても成長に限界が来るだろう。

 そんな折、コリーからの相談もあった。自分の役割に悩み、もっと成長したいと望む姿を見て、ナカムラは決断した。次は密林を調査する。湿地と同じ距離にありながらも、環境は全く異なり、多様な動植物が生息する未知のエリア。薬草や毒草も豊富で、依頼の数も多い。まさに挑戦にふさわしい舞台だった。

 山脈は大型の猛獣が多く、天候も変わりやすく、都からの距離も遠すぎる。最初に踏み出す新天地としては荷が重い。そこで、ナカムラとコリーは密林行きを選んだ。


 初めての探索にあたり、ナカムラは仲間を揃えることにした。最初に声をかけたのは、カイルとミナ。初めてのパーティー行動で共に湿地を探索した彼らとは、今でも気心が知れている。


「誘ってもらえるなんて嬉しいな!密林はまだ行ったないからね、カイル」


 目を輝かせるミナに対し、カイルは慎重だった。


「だけど密林は危険も桁違いだって聞く。僕たちでいいんですか?」

「湿地もお互い初めてだったろ、俺の故郷ではこういうのをゲン担ぎって言うんだ。成功するためのまじないみたいなもんだ」


 ナカムラが静かに言うと、カイルは少し考えるそぶりをし、最後には頷いた。

 そしてもう一人、密林探索に欠かせない人物がいた。今回は、ギルドを通して、指名での依頼をさせてもらった、赤髪の女性レンジャー、シレーン。密林専門で活動している熟練者で、現地の地形や危険生物の習性に精通している。幸いにも承諾を得ることができた。


「密林はな、見渡す限り同じ景色だ。目印をつけても少し動けばわからなくなる時もある。初心者のお守なんてのは普段、断るんだけど……まぁ、あんたのスキルに興味もあるからね」


 シレーンはナカムラのスキルに興味を持ったようで、冷ややかな視線を浮かべながらも、同行を引き受けてくれた。


 こうして結成された探索隊は、朝靄の中を出発した。密林までの距離は方角こそ違えど、湿地帯と同じくらいでありながら、その雰囲気は全く違う。鬱蒼と茂る木々、湿った土、絡み合う蔦。光は葉に遮られ、中に入れば、昼でも薄暗い。

 一歩踏み入れれば、鳥の鳴き声や獣の唸り声が交錯し、湿地とは比べものにならないほどの生命の密度を感じさせた。


「すごい……こんなにいろんな音がするんですね」


 ミナが耳を澄ますと、シレーンが手を上げて制した。


「静かに。音の主が必ずしも小動物とは限らない。その声真似をする動物もいる。」


 彼女は矢を番え、周囲を警戒する。彼女を進行方向の右側の茂みに小さな黒緑色の集合体が見える。


「右手の茂みに、おそらく毒虫の巣だな。気をつけろ」


 毒視認化スキルで見抜いたナカムラの警告に、シレーンは目を細めた。


「……へぇ。あんたのスキル、便利だね」


 今回の目的は薬草とキノコの採集だった。シレーンの案内で、比較的安全とされる採集ポイントに向かう。

 ナカムラの目には、毒の有無が一目で分かる。緑色のキノコは解熱作用がある薬草キノコ。対して黒い斑点の浮かぶ同じような緑色の茸は猛毒性で、誤って採れば命を落としかねない。


「これは薬草用に使える。こっちは絶対に触るな」


 ナカムラがてきぱきと仕分けていると、コリーが感心して声を上げた。


「これならすぐに集まりそうですねー」


 シレーンも呆れたように口を開いた。


「知識も経験もすっ飛ばしてる……反則だな」


 採集は順調に進んだが、密林の厳しさはすぐに牙を剥いた。


 薬草を集めている最中、頭上から不意に枝葉が揺れた。次の瞬間、赤と黒のまだら色の蛇がカイルの肩めがけて落ちてくる。


「くっ!」


 反射的に盾を振るうカイル。間一髪、蛇は盾に飛ばされ、地面へ落ちる。


「どけっ!」


 シレーンの矢が飛び、蛇の頭を正確に射抜いた。地面に串刺しになった蛇は痙攣し、やがて動かなくなった。


「毒蛇だ。噛まれれば数分で動けなくなる、気をつけろ」

「助かりました、ありがとうございます。」

 (言葉は乱暴にも聞こえるけど、面倒見がよさそうな人だなぁ)


 カイルは、シレーンを見ながら感謝の言葉を伝えるとともに、そんな事を考えていた。


「ま、まぁ……依頼分くらいは働いてやっからな、ってあんまこっち見んな!」


 夕刻。袋いっぱいの薬草とキノコを抱え、一行は無事に帰還の途についた。

 密林は湿地以上に苛烈で、常に緊張を強いられる環境だった。だが同時に、未知の発見や可能性に満ちていた。ナカムラは確信した。ここで得られる経験は、必ず自分とコリー、そして仲間たちを成長させる。


冒険者ギルドで依頼の品を納品した後、参加者全員に礼を言って解散となった。


「今日のところくらいまでなら、比較的安全だよ。奥に行くんだったら、もう少し慣れてからにしときな」


シレーンはそういって、依頼報酬を受け取り、帰っていく。

その後ろ姿を見ながら、ナカムラは呟く。


「何個かは見つけた。次は、獲りにいかないとな」


どうやら、また楽しそうなものを見つけたらしい……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。