大乱戦
一陣の風。
熱砂が吹き遊び、コロッセオが砂塵に沈む。
ブゥンという音を立て、砂煙の中に蜘蛛の紅い瞳が光る。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……もっとたくさん。
私たちを睨み据える、たくさんの敵意に満ちた紅。
群れの先陣に立つ蜘蛛が、ググッと体を低く沈め、跳躍の姿勢を取る。
「来るぞ、お主ら!」
アリスさんが魔導書を構え、叫ぶ。
ステラがブラスターを構え、ロボ丸が拳を打ち合わせて己を鼓舞する。
ギギィィィィィィィィィィィィィ……!
蜘蛛の関節から、鋼鉄を擦り合わせるような、耳障りな騒音が響く。
直後、蜘蛛が跳躍する。
放射状に砂煙が巻き上がり、砂塵に黒い影が走る。
さながら、空に撃ち上げられた黒い砲弾の如き速さで、一瞬でこちらへと到達する。
ヒュルルルル……ドッゴォォォォォォォン‼︎‼︎
轟音と砂煙を上げ、蜘蛛が着弾する!
しかし、そこには既に私たちの姿はない。
蜘蛛に押し潰される寸前に後方にジャンプし、これを躱す。
BLAM!BLAM!
ステラが空中で体を捻りながら、ブラスターを照射する!
射出された光弾は蜘蛛の膝関節を正確に撃ち抜き、これを破壊する。
崩れ落ちる鋼鉄蜘蛛!
脚を撃ち落とされた蜘蛛が、胴体だけでモゾモゾと蠢く。
この機を逃すまいと、すかさずロボ丸が走り寄る。
体を弓のように引き絞り、渾身の右ストレートを叩き込む!
「これでも……喰らうロボーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎」
ロボ丸の拳が蜘蛛の眼球を砕き、突き刺さる!
直後、ガントレットが圧縮蒸気を吹き出し伸縮!
内部に封じられた高圧魔力を蜘蛛の体内に一気に流し込む!
一瞬、蜘蛛の体が倍近くの大きさに膨張し、オレンジ色の光を発した。
ドッゴォォォォォォォォォォォオン‼︎‼︎‼︎‼︎
鋼鉄蜘蛛は爆発四散!
スクラップと地面の焦げ跡を残し、この世から消滅した!
「はぁ、はぁ……、か……勝ったロボ……?」
声を震わせ、呆然とした表情で呟く。
まるで、勝ったのが信じられないといった感じだ。
「ロボ丸、油断しないで!次が来るよ!」
私の叱責にロボ丸はハッと我に帰ると、上空を見上げた。
既に第二、第三の蜘蛛が跳躍し、こちらへと向かって来ているのだ。
蜘蛛が、彼女の頭上に黒い影を落とす。
「ちっ!」
ロボ丸は舌打ちすると前方へと回転跳躍!
蜘蛛のプレス攻撃を回避する!
衝撃音!舞い散る砂塵!
「ギギィ……⁈」
蜘蛛の関節からバチバチと火花が飛び散る。
どうやら落下時の衝撃が、蜘蛛の関節にダメージを与えているようだ。
蜘蛛は着地後に一瞬硬直状態に陥いるようだ。
「ロボ丸、今よ‼︎あいつの下に潜り込んで攻撃!」
「了解ロボ!」
ロボ丸はすかさず蜘蛛の真下に潜り込み、土手っ腹にアッパーカットを見舞う!
蜘蛛は空中に打ち上げられ、爆発四散!
「次‼︎」
「了解ロボ‼︎」
ロボ丸はすかさず次のターゲットに向かう。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
ステラがブラスターをソードモードに変形させ、蜘蛛に斬りかかる!
SLAAAAAAAAASH‼︎‼︎‼︎
結晶化した魔力の刃が、蜘蛛を真一文字に切断する!
「ギギィ‼︎‼︎」
仲間の仇を撃たんと、別の蜘蛛がステラに脚を振り下ろした!
ガキィィィン‼︎
ステラはソードでこれを受け止めると、力任せにそれを弾き返した!
ステラの膂力に押し負けた蜘蛛が、後ろに押し返され、砂煙を上げてひっくり返る!
腹をみせて蠢く蜘蛛!
「今だ!」
この機を逃すまいと、ステラは蜘蛛の腹に飛び乗る。
そして、無防備な蜘蛛の腹に、渾身の力でソードを突き刺した!
バチバチバチィ‼︎‼︎
ソードの切っ先から高濃度の魔力が流れ込み、蜘蛛の体を内側から焼き尽くす!
蜘蛛の体からブスブスと黒煙が昇る。
「ギ……ギィ……!」
蜘蛛は二、三度痙攣すると、そのまま動かなくなった。
「敵、まだ来る⁈」
ステラは次の敵を視認すると、ソードを構え斬りかかっていった。
私もロボ丸やステラをサポートするため、彼女と共に並走して行く。
ふと、アリスさんが気になり、彼女の方を見た。
アリスさんはたくみな動きで蜘蛛の攻撃を掻い潜り、隙を見ては魔力弾を叩き込んでいる。
まるで舞を踊っているかのような、洗練された華麗な動きだ。
彼女については心配する必要は無さそうだ。
敵の数はまだ多い。
長い闘いになりそうだ。




