ジャングルの怪鳥
「いったいここはなんなのよ~~~ー!!!!!!!!!!!!!!」
私は天を仰いで絶叫した。
さっきまで自分たちは遺跡の地下深くにいたはずだ。
しかし頭上には石造りの天蓋ではなく青い大空が広がっている。
ぺたんと座り込んだ地面の土は柔らかく、草花がまばらに生えている。
周囲を見渡すとあちこちに木々が茂り、私たちに向かって大きな影を落としている。
どうやらここはどこかの森の中のようだ。
私は近くの植物に近寄り、その葉を手に取り調べてみた。
葉は肉厚で大きく、昔植物園で見た南洋の植物にとても良く似ていた。
(私たち、どこかのジャングルにでも飛ばされちゃったのかしら?)
手にした葉っぱをいじりながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
その時だ!
「マスター、あれ見てあれ!」
ステラの叫び声で私は我に返った。
「どうしたの?ステラ!」
私はステラの声のする方へと駆け寄った。
「見て見て!おっきいトンボさんがいるよ!」
ステラが好奇心に目を輝かせながら茂みの方を指さしている。
ステラが指さす方へ目をやると、なるほど、確かにそこにはトンボがいた。
しかもとんでもなく大きい!
頭から尻尾までの長さはちょうど子供の背丈と同じくらいだろうか?
大人のネコでも平気でひっつかんでいきそうなほど長く鋭い六本の脚。
ネズミの頭など平然とかみ砕きそうなほど凶悪極まりない顎。
そんなトンボの化け物が茂みの近くで静かにホバリングしている。
「あんな大きなトンボ見たことないわ……。魔力が感じ取れないからモンスターじゃなさそうだし……。」
そこまで考えたとき、私の脳裏に電流が走った!
……まさかあれって新種のトンボ?!もしそうなら大発見じゃない!!そして私が第一発見者⁈
もし生きたまま持って帰ったらお金とかもらえちゃうかも!それで、それで、有名人になって雑誌の取材とかきちゃうかも!
そうとなったら話ははやい!
善は急げだ!
「ロボ丸!あのトンボを捕獲するわよ!」
私はすかさずロボ丸に指示を飛ばした。
……しかしロボ丸は渋い顔でこちらを見据えるだけで動こうとしない。
「ちょっとロボ丸?あんたいったいどうしたのよ?命令が聞こえなかったの?はやくあいつをとっ捕まえるのよ!……お~⊷い、ロボ丸さん?……聞こえてる?」
しかしなおもロボ丸は動こうとしない。
「ご主人忘れたロボ?ロボは昆虫が嫌いロボ……。あんなでかいの絶対触りたくないロボ……。いくらご主人の命令でも嫌なものは嫌ロボ!」
怯えたような口調で、ロボ丸はそう答えた。
そうだった、すっかり失念していた。
ロボ丸は昆虫が大の苦手なのだ。
以前アパートでゴキブリが出たとき、半狂乱になって危うくアパートを半壊させてしまいそうになったことがあったのだ。
ロボ丸にはこの仕事は任せられない。
それならばとステラの方を振り返る。しかし……。
「マスター、トンボさんいじめちゃダメだよ?」
ステラはうるんだ瞳で上目遣いに装懇願してくる。
ロボ丸には頼めない。ステラもトンボの捕獲を嫌がっている。
ステラやロボ丸の嫌がることはしたくない。
せっかくの大発見だが、ここはあきらめるしかないだろう。
「すごい発見なのに……。もったいないなぁ……。」
その時だ!
茂みの中から巨大な嘴がにゅっと飛び出し、さっきのトンボをバクッとくわえた!
あまりの早業に私たちは呆然となってその光景を見つめる。
やがて茂みをガサゴソとかきわけて、嘴の主がその姿を現した。
それは、巨大な嘴と頭を持った大きな怪鳥だった。
地面につくほどに長く大きな黄色い嘴。
それを支える巨大な頭部と大きく真ん丸な黒い瞳。
しかし、その巨大な嘴と頭部に反して胴体はあまりにも小柄で、翼に至っては鶏の羽ほどの大きさしかない。
あれでは空を飛ぶことなどできないだろう。
ひどくアンバランスで奇妙な体形の鳥だ。
そんな怪鳥が、トンボをむしゃむしゃと咀嚼しながらこちらのほうをじっと見据えている。
「マスター、トンボさん食べられちゃった……。」
ステラが呆然とした表情で呟く。
「ご主人、あいつこっちをじっと見てるロボ……。きっとロボたちを食べる気ロボ……。やる気ロボ!」
ロボ丸がヘッドギアのバイザーを降ろし、静かに拳を構える。
「ステラ、戦闘準備して!相手がやる気なら、こっちも迎え撃つしかない!」
ステラは一瞬逡巡した後、ややためらいがちにマギカブラスターを構えた。
次の瞬間、怪鳥はクェェェェェェェェェェェェェ!!!!と雄たけびを上げながら、こちらに向かって猛スピードで突進してきた!
次回に続く




