この森の2人目のボス
モチベがァァァァァ……長らく空けてすんません(´・ω・`)
ある程度のプロットはエクアートと共に頭にあるけど、出すのがキツいっす(´・ω・`)
……自分の性癖表に正当性持って出せるSSは良いですな(ง˘ω˘)ว
広大な緑の森。上から見ると視界が同色で埋め尽くされる程に。地平線の彼方まで緑色に染まりそうな程に。
森の海と言われても違和感がない。そんな風景を身体一つだけで見る事が出来る唯一の魔物がいた。
<今頃、アリィは狩りを終えた時間ね>
そう。女性だ。それも、人目で人間とは違う異形だと分かるような見た目をしている。
特に四肢がそうだ。美しい芸術品のような翼に、獰猛な鳥類のような脚がその象徴である。
(次のアリィのお世話は私達ハーピィの番ね。やっとこの日が来たわ〜)
週末に孫が家にやってくるのが楽しみな老婆のような気分なのだろう。もしくは明日の遠足が楽しみな小学生だろうか。ともかく、めちゃくちゃウキウキしている様子なのは間違いない。
(全く。人間の集落の規模によって扱いが真逆なのは本っ当にややこしいわね……)
都では害獣として。村では子供の守り神として扱われるハーピィの存在。人間の住処、拠点によって真逆の扱われ方をされる存在。一般的には女性の怨念が鳥にのりうつった『ゾンビ、幽霊説』や、鳥が突然変異を起こした『進化説』。鳥と人間のハーフではないかとの見方もある。が、モンスターである事には変わりない。
そんなハーピィのボスに1番に反応したのは少女だ。そんな様子を見てニコニコと翼を2、3回振った後、二足歩行の獅子のようなモンスターに向かって急降下。
<あっ>
心配そうな少女の視線を感じ、ニヤッと笑う。墜落したロケットのようなスピードで降下し、地面スレスレで急カーブ。そして少しの羽を散らせながら、クルクルと回転。その後、大きく翼を広げ、カッコイイポーズを取り、ゆっくりと少女に近づいていく。
それに合わせてトテトテとハーピィに近づいていく少女。
あっ……と、名残惜しそうな表情で少女を見つめ、今降りてきたハーピィに向かって睨みつけるのは、先程まで少女と会話をしていたヒレを持つ獅子のようなモンスターだ。
<クイーンか。何の用だ?>
若干不機嫌そうに降下したハーピィを睨みつける獅子。それを見て気にする様子もなく、自身に向かってきた少女を自慢の羽で撫でながら獅子の方向に顔を向ける。
<あら、今日は私の歌のレッスンの日だったのだけど?で、シュハー?その目は何かしら?>
<別に。せっかく狩りの成果を褒めていたところだったのに邪魔をされたから不機嫌になったとか、そういうのないからな>
<ふ〜ん……ま、どうだっていいけどね>
ニヤニヤしながらからかい始めるハーピィ。ぐぬぬと唸る獅子。それを見た周囲の魔物は『なんだ、いつもの光景やん』って思っていたそうな。
<アリィにはお前の歌は必要無い。格下を無力化するだけの効果しか持たない無駄な技術など、必要無い>
ハーピィ。それは、鳥と人間の合成獣。ベースは人間だが、手足が鳥のものとなっている怪物だ。
その歌声は外敵の感覚を狂わせ、ある時は深い眠りに誘うと言われている。
狩りに誇りを持つ獅子は、姑息に立ち回る鳥に対して嫌悪感……とまでは行かないものの、毛嫌いしているようだ。
<あ〜ら?やっぱりアリィを取られて悔しいんじゃないの。それに、体力バカなアンタには分からないでしょうけど、これは無駄な体力を消費しなくて済むのよ?狩りにも使えるし、子供たちを寝付かせるのも楽だし。覚えておいて損は無いわ>
<抜かせ。狩りとは己と相手の命をかけた食事だ。それを台無しにするような卑怯者の技など必要ないと言っている。聖都では害魔として扱われているアバズレめが>
<お生憎様。私はどうあっても、どんな種族の子供でも大事に扱うのがモットー。田舎では私たちは神獣として扱われているのよ?それに、食材に感謝こそすれど、これを使える技術を使わない狩りなんて舐めプと同義なんじゃないの?そっちの方が相手を侮辱しているわ>
これも、アリィの世話交代を行う時に生じるいつものケンカだ。
シュハーと呼ばれる魔物がああ言えば、ハーピィ・クィーンがこう言う。しかも若干早口なのでより生々しく聞こえてしまう。
最も、口喧嘩になればクィーンの方に軍配が上がるが。
シュハーが言うように、人間の間では主に農作物や家畜を荒らす害獣として扱われる。反対にクィーンが言うように、人間であれなんであれ、森で迷子になった子供を村まで返したという逸話もある。
シュハーが言を発すれば、クィーンも反対の事を言う。その繰り返しは、周囲の魔物も、アリィも見慣れた光景だ。
<それとも〜?私が人間に近い容姿でアリィに1番最初に懐かれたから妬いているのかしら〜?>
<黙れ。アリィが懐いていなかったら、貴様なんぞ……!!>
<さ〜て、アリィ。『ハーピィの歌』のレッスンに行くわよ〜>
<聞け話を!!>
抱っこをせがむようなアリィの様子を微笑ましく見るクィーン。そんな華奢な見た目の少女の肩を脚で優しく鷲掴みにしてバッサバッサと飛んでいく。
<……チッ!!アイツが生き残る手段を思えば我慢できるが……仕方ない。あの子の獲物を有難く頂くか>
そう言ってズルズルと自分と同等な巨体を引き摺る獅子。向かう先は、アリィとは違う、我が子の元へ。
<貴女、狩りは散々だったけど、成功して良かったじゃない>
<……!?さんざんじゃないもん!お母さんのいじわる!>
クスクス笑いながらからかうハーピィクイーン。その様子を見てフグのように頬を膨らます少女。
自分だって頑張ったのだ。自分よりも何倍も大きな獲物と戦って、やっと倒したのだ。身体がボロボロなのがその証拠。今だって痛いのだから。
しかも相手は近づかない方がいいと呼ばれるほどの強者である獣だった。
ーーー強がりくらい、言ってもいいじゃないか……
そんな彼女の心境を察したのか、慈しむような表情で少女を見つめる。
本当は褒めてやりたい
本当は我が子達のように分かりやすく可愛がってやりたい。
ーーーでも、今はその時ではない。そもそも種族自体が違うのだ。彼女は人間で私達はモンスター。いずれ別れる日が来るだろう。仮にその時が来るのならば……。
彼女の親代わりの4匹の魔物。その内の一体であるハーピィ。
(私の役割は、この子に『逃走手段を増やすこと』)
勝つ為に逃げる。身の安全の為に。逃げるというのはマイナスな意味に捉えがちだが、これも列記とした選択のひとつなのだ。自分の命の為に逃げるのは恥ではない。最も、仲間を見捨てて逃げるようならソイツは単なるクソ野郎だが……。
もし、アリィが逃げるということを知らなかったら……と思うとゾッとする。
<私達は、この子を死なせたくない……>
何かを決意した表情で既に視界に映ったハーピィの巣へと向かう。
クィーンの子供達に出迎えられながら、アリィは先ず傷の手当てをしてもらうのだった。
シュハーガトゥ→狩りと食い方と格闘戦担当
ハーピィ・クィーン→逃走と回復手段(魔法の部)担当。
???→水中戦と回復手段(薬草系の部)担当
???→身体強化担当