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二四時限目『 ブラックドッグ 』

    挿絵(By みてみん)


ブラックドッグ


■ 異称;魔犬、バルビー(バルビル)の魔犬


■種別:黒犬のすがたの怪生物


■主な出現地域:文明圏の整備された街道とその沿線。

 

■出現数と頻度:数体〜 十数体

    大陸中央諸国;まれ

    大陸西部  ;ごくまれ

   (魔獣深森近郊;なし)


■サイズ:全長約2メートル(子牛ほど)


■危険度:小?(単独)


■知能:低い( 自動的反応 )


■人間への反応:攻撃(殺傷しても捕食しない)


■登場エピソード:なし


■身体的特性とパワー

 ブラックドッグは夜の街道に出没する巨犬です。

 どこからともなくあらわれて、運悪く出会った人間や沿道の民家などを襲います。


 大きさは子牛ほどあり、かなり力があります。黒く長い獣毛は灰色の粘液で湿っていて、黄色の燐光を宿した息、あたりに広がる不快な金属臭が特徴的です。


 ブラックドッグの攻撃は、巨体の突進と嚙みつきで、ひどい怪我を負っても痛みも恐怖も感じないらしく、群れを全滅させるか、夜明けが近づいて自分から立ち去るまで執拗に襲ってきます。



▷危険性

 大陸中央は人類文明の中心地で、土地利用が徹底されました。基本的に魔獣はもちろん大型の野生動物もいません。

(ごく最近、魔蟲新森の魔獣災害で状況は激変しましたが……… )


 ブラックドッグは、ふだん猛獣の被害を知らない土地に突然あらわれるため、出現は大変な混乱を引き起こしました。不運な旅人や貧しい村はもちろん、教会の司祭、身分ある貴族であったとしても、出会えば残酷な最期はさけられない………

 死のイメージとともに魔犬の伝承は広まり、大陸の中央諸国の民衆は、実際の被害以上に強い不安と恐怖を感じました。



 これに対して大陸西部のハンターは、危険度をかなり低くみています。


 犠牲者は無残なすがたで見つかりますが、デタラメに噛みついてふり回すためらしく。一撃でトドメを刺せず、逆に、ろくに戦えない一般人から思わぬ反撃を受けた事件もありました。

 群れになっても仲間との連携はなく、力まかせの突進ばかりです。

 

 とあるハンターグループの若い女魔術師は、実際に巨犬に遭遇したさい、ただまっすぐ向かって来るだけでなく、口を(わざわざ)光らせる様に驚き。「まと」と呼んで炎魔術で撃ったそうです。

(白ウサギ以下、とも言ったとか……)



▷ 正体?

 魔獣研究の専門家は、ブラックドッグを古代魔術文明の擬似生物、あるいは、フレッシュゴーレムのような特異なアンデッドと考えています。

 その理由は、魔獣深森の目撃例が皆無であること。そして、ブラックドッグが死ぬと、異常な分解と劣化が起こり、骨さえまともに残らないことです。


 学者の推論が正しければ、大陸中央のどこかに未発見の古代文明の遺跡、或いは、暴走状態の死霊術の儀式場があり。不定期に、ブラックドッグの群れが解き放なたれていることになります。


 しかし、今のところ、発生源の発見の手がかりはありません。












□□ ブラックドッグと死と妖精 □□

〜 この先、トーク形式でお送りいたします 〜



__ _ (けーじょん) 〈( ̄◽︎  ̄ ;K

「「モンスターコレクション」シリーズは、NOMARさまの長編小説「蜘蛛の意吐」の世界観を基にお送りしています ── 創作物語に準拠!!!」


P; ⌒ o⌒) (ぴーじょん)

「なぜ、またあらためて …… 」


__ _ (イイから、イイから)″ L( ̄◽︎  ̄ ;K

「今回の『人造生物』ブラックドッグは、本編に登場した『 狼頭の魔獣兵』をベースにした人造軍用犬です。

 闘争心や群れ行動、ボスに忠実に従う性格を生かし、対魔獣・対人戦の補助戦力としてかなり役立ちます(まともなら)。

 黒く怖ろしげなすがたや光る口は、対人用……暴徒鎮圧や警備活動のとき、相手を威嚇するためのものです。


 しかし、記事の群れは暴走状態。

 古代魔術文明の半ば壊れた生産施設がつくった最少機能のダウングレード版で、意味もなく放たれ、人間を街道から排除しようとしています……


 冒険シナリオに登場させるなら、メインストーリーの関係者と出会うきっかけ? 主人公たちが、馬車や集落を襲う暴走群に遭遇する、とか。

 ブラックドッグが深く絡んだシナリオなら、黒い巨犬タイプだけでなく、ブルドッグやダックスフント、ドーベルマン・タイプなど。ユニークな群れを個性的戦術とともに登場させるとおもしろそう 」


P; ⌒ ▽⌒):

「── そうか!先にイイワケか!!」

「名前は『ブラックドッグ』でも、今回の記事内容はイングランドの伝承とまるで別物!」


__ _ (うっ!)( ̄_  ̄ ;K  

「たしかに……… すがたのイメージは、映画「クージョ」のセントバーナード(狂犬)でした。


『ブラックドッグ』…… イングランドの古い伝承をあらためて紹介すると。不吉なすがたをみせたり吠え声で死を告げる、犬のすがたの妖精だ。黒妖犬、黒犬獣と訳されたりする。夜の街道の辻や荒野にあらわれ、からだに触れたり声をかけることも危険という、おそろしい存在! 」



P; ⌒ w⌒)あ!

「『死を告げる』…… バンシーもたしかイギリスだね?」


____ _ d( ̄◽︎  ̄ ;K  

「ブラックドッグとバンシーにつながりはないよ?」

「あと、バンシーは忌まわしい悪霊のイメージだけど、本場のアイルランドのバンシーは親切な家付き妖精で噂のある家の方が高く売れるらしい(NOMAR様の情報)」


「そもそも、日本の『妖精 fairy 』のイメージは、可愛くて善良な小人だけど、ヨーロッパの伝承の本物?はちがう。きれいでかわいいとは限らず、いきなり人を襲うものもいる」


P; ⌒ ∧⌒)

「………ティンカーベルみたいな妖精は少数派?」


____ _?( ̄ん ̄ ;K  

「どうかな? とにかく、古い伝承の妖精 fairy は、やさしい友人や弱者じゃないということ」


「闇の勢力のゴブリンやコボルトを『妖魔』と呼んで、友好的な妖精と区別することがあるけど、それは日本の小説やゲームの話 ── イギリスの妖精は、もともと死んだ子供の幽霊だったりする。


取り替え子(チェンジリング)の伝承は『妖精と死』の関係をよく示しているかな?


昔は、産まれてすぐ亡くなる子ども多かった。

だけど、本当の子どもは妖精に連れ出されて、妖精の郷で幸せに暮らしていて。死んだのは『取り替えられた妖精の子』だ……とする 伝承は、突然で理不尽な死を人々に受け入れやすくしたようだ」


「ピーターパンは創作物語だけと、原作は、ネバーランドで大人になった者はピーターパンに殺されてしまう設定がある。

 作者がどうしてそんな設定にしたかわからないそうで、物語の翻訳や映画化、アニメ化では改変されている。


── しかし、少なくともイギリス人の原作者は『妖精が子供をいざなう楽園』と『死のルール』に違和感なかったんだね」


P; ⌒ ⊿⌒):あ

「妖精と子供の死のつながり… か。 あ! 魔犬から脱線してるぞ!」


____ _(  ̄へ  ̄ ;K  

「……… バーゲストは、黒妖犬の代表に挙げられるほど有名(水木しげる『妖精画談』など)。だけど、その起源はドイツで、人に害をなす妖精がイングランドに渡って魔犬伝承に混ざったらしい。

── 名の由来はドイツ語で、棺桶(bahr)と悪霊(geist)でバーゲストなんだとか。


 もっと妖精と関わりが深い「犬」の伝承もある。


ケルト神話の猫妖精のケット・シーは有名だけど、犬妖精のクー・シーもちゃんといる。妖精に従う猟犬や妖精郷の番犬だ。

 ちなみに毛並みは緑系や白 !」


P; ⌒ o⌒):…!?

「ドイツ系のブラックドッグ? …クー・シー??

…一度にいわれてもこんがらがる」


____ _ \( ̄▷  ̄ ;K

「あと、今回の『人造軍用犬』の記事はキチンと(?)魔犬伝承から要素を借りている。


 ①猛獣がいない文明社会に犬の怪物があらわれて、人々を恐怖させる、


 ②山奥や森でも屋内(廃墟)でもなく、人が行き来する街道に出没する。


  ③死骸がまともに残らない(ブラックドッグには、退治した伝承がない)── 以上、三点!」



P; ⌒ ∩⌒) 

(………わかりにくすぎる )


____ _ヾ( ̄◽︎  ̄ ;K  

「①②は、ブラックドッグの伝承のポイントだと思います」


P; ⌒ _⌒)

「……くわしくは魔犬伝承のエッセイ(欄外)で」

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