大海のアダム【4】新米騎士コルル
コルルは病気だと言った俺の言葉を信じているので、ポニを可愛そうな子供を見るような目付きで見つめた後、ため息交じりに息を吐いて「乱暴にしないから安心なさい」と優しく微笑んだ。
「なに、このひと? 何でそんな目でボクを見るの?」
牙を剥き出して威嚇していたポニも、毒気を抜かれたようにキョトンとしている。本気だったかどうかは別にして、短剣で刺されそうになったのだから、コルルに対する敵意も仕方ないと言えば仕方ないのだ。
「お前が本当は優しい良い子だと分かったからだよ。噛み付いた事も、馬から落として死なせそうになった事も不問にしてくれるそうだ。良かったな。犯罪者にならずに済んだぞ?」
「そうだ。キミが病気・・・いや、精神状態が不安定だとは気づかなかったのでね。剣で斬りつけたりして悪かったよ」
ほら、お前も謝れ!と頭をこつくと、渋々という感じでポニも頭を下げて謝った。
「噛み付いた事は謝るよ・・・ごめんなさい」
「馬から落とした事もだろ? 彼は死にそうになったんだぞ」
「いえ、もういいですよ。何度も謝らせる必要はありません。本人が反省していれば、それで」
コルルの紳士的な態度に驚くポニ。
公爵家の三男坊だと言っていたが、貴族だけあって流石に立ち振舞いは洗練されたモノがある。甘さが抜けきっていないが、通った鼻筋といい、キリリとした口元といい、見方によってはイケメン紳士で通るだろう。髪がボサボサで、あちこちタンこぶを拵えている事を除けばだが。
「なんなのさ! 急に態度が変わって気持ち悪よ」
ポニが俺の背後にまわり耳打ちして来た。ウニのトゲが背中に当たって少々痛い。
「お前の可愛さにやっと気づいたみたいだぞ? 好みのタイプなのかも知れないな?」
「えええっ? こ、困るな。ボクにはお兄さんが・・・」
「相手は竜族の貴族だ。うまく行けば玉の輿じゃないか!」
「そ、そんな事を急に言われても・・・」
俺はポニに耳打ちする。通信機の耳飾りをお互いに付けているのでかなりの小声でも会話が可能だ。
「考えてやるくらいいいじゃないか? 俺は無一文の妻子持ちだが、あちらは大金持ちで独身だ。きっといい暮らしが出来るぞ?」
「お金なんて関係ないよ。そりゃあ有るに越したことはないけど・・・やっぱり愛が重要なんであって、財産なんて関係ないよ」
モジモジしながら顔を赤くしてチラチラと顔を見て来るポニの様子に、今度はコルルがキョトンとして見ていた。俺は馬を返すと言いながらコルルと身体の位置を入れ換えた時に、「気にするな、いつもの病気だ」と小声で伝えておいた。これで仕込みは完了だ。
俺と位置が代わり、近くにコルルが来た事に慌てたポニは、「うわっ」と声をあげて抱えていたウニを落としてしまった。下にはゲルダゴスがいるから取りに行けない。 う〜む、もったいない。あのウニも絶品だったろうに・・・
唯一残ったひとつを、コルルから借りた短剣で割りながら中身を食べる。やっぱり旨い! なんて種類か分からないが、お土産に欲しいくらいだ。
「君は歴史に詳しいんだったな? あのゲルダゴスが丸まってる辺りに、古代文明が造ったっていう戦艦があるらしいが知ってるか?」
俺は食べ終わったウニの殻をポイ捨てしてコルルに話し掛けた。ポニはモジモジしながら怪しげにコルルを見つめている。
「はい。もちろん知ってます。この辺りの海図は全て頭に入ってますから。ヤマトには何度か入って調査した事もありますよ。あれがアーティファクトだという噂もありましたので、父に頼み込んで調査隊に混ぜて貰ったんです」
「アーティファクト?」
「神の創造物と云われるオーバーテクノロジーの物品を指す言葉です。アリシア様の鎧もそうですが、超常の力を持つゴッズアイテムです。この世にふたつと同じ物はありませんね」
「で、調査の結果はどうだったんだ? 波動エンジンはあったか!?」
「波動エンジンがどういう物を指す言葉なのか知りませんが、アーティファクトではありませんでした。中は錆び付いていてボロボロです。しかし、外周部装甲板はかなりの物で、現在の文明では同質の金属を精製するのは難しいと言う事です。しかし、神の創造物のレベルにはほど遠い物でした」
「そうか、やっぱりそうだよな・・・」
「―――?」
「いや、問題はそこではなくてだ。俺が知りたいのはゲルダゴスがあそこから動かない理由だ。俺は奴の習性を知らないから、侵攻を止めてああしている理由が知りたいのさ」
「アダム殿はゲルダゴスの全貌が感知できるのですか? 僕の眼力でははっきりとまでは感知出来ません。巨大なシースライムである事は知っていますが、習性を知りたいと言われても僕にも分かりません。ゲルダゴスには不干渉である事が原則なので」
「姫さん達は城に戻ったと思うか?」
「当然でしょう。アダム殿がこの海域に居ない事は明白。留まる理由もないのだから」
「それを確認できるか?」
「兜を紛失してしまいましたので難しいですが可能です。上手く通信士に届くか不安ですが、やってみましょう」
しばらくコルルは城との通信に集中している様子なので、彼の周りをうろちょろして怪しげな行動をしているポニを手招きして呼んだ。
「お前、さっきから何してるんだ? 態度がめちゃくちゃ怪しいぞ?」
「匂いを嗅いでいたんだよ!」
「なんで?」
「そ、それは・・・その・・・」
「まあいいや、そんな事で呼んだ訳じゃない。聞きたいんだが、海の中だとテレパシーやテレポートって出来ないのか? 誰もしてないよな?」
「出来ない事はないよ。でも、地上でやってるみたいに簡単には行かないんだ」
「なぜ?」
「専門的な事は知らないよ。ボクはセイレーンだから魔力なんて持ってないし、使える妖術も限られてるからね。ただ、水中での魔法は地上の3割程度の威力しか出せないらしいよ。移動魔法とかは、中途半端にしてしまうと体の一部が紛失したり変質したりするらしいから、よほど強大な魔力を持ってて自信があるひとじゃないとしないと思う」
「そうなのか? だから道具を使うんだな?」
俺は耳飾りを手で触れながらそう言った。テレパシーが使えればこのような道具も必要ないだろう。俺があのとき棄ててしまったコルルの兜にも通信機能があったようだ。
「道具なら壊れたら交換すればいいからね」
「直して使うとかしないのか?」
「直せないよ。そんな技術は持ってない。この耳飾りはシビットから買ってるんだ。その他、魔法を利用した道具は全て購入した物さ。だからお金が必要になるんだ」
「服も着ないし、食うのはヘンテコな形したクラゲだけだし、何に金が必要なのかと思っていたが、そういう事だったんだな。納得したよ。ちなみにこの耳飾りはいくらなんだ?」
「金貨で15枚・・・かな?」
「金貨1枚の価値が分からん」
「ボクも分からないよ。でも、地上の人間達は一ヶ月働いて銀貨40枚が平均的な庶民達の稼ぎらしいから、二ヶ月半働いて金貨1枚だね」
「―――なに!?
銀貨1枚が一万円だとしたら金貨1枚が百万円か! この耳飾りひとつ1500万円って事なの!? めちゃくちゃ高いやんけ!」
「だから中々たいへんなのさ。商船を襲って沈めて奪って来るんだけど、最近は現金を使わず約束手形や銀行振込なんて制度も出来たらしいからね。昔みたいに現金を海路で輸送しなくなって来てる。全く厳しい世の中だよ」
もっともらしい事を言って腕組みながら頷いてはいるが、こいつらがしている事はただの現金強奪だ。セイレーンを助けるのはマジに止めた方がいいのではないかと思えてきた。
「アダム殿! タイヘンです。姫が城に戻った様子はないと通信士から連絡が!」
悪い予感的中だ。これで沈んだ戦艦ヤマトの中に姫さん達がいる可能性が高くなった。
「コルル君は魔法は得意か? 戦艦の中に姫が居ないか、中の者と交信は出来ないだろうか?」
「まさか! ゲルダゴスが呑み込んでいる戦艦に姫が!?」
「可能性だけだ。ずっと監察していたが、戦艦にもゲルダゴスにも全く動きがない。只ああして体を休めているだけかも知れないって、おい、おい、早まるなっ!」
慌ててゲルダゴスに向かおうとしたコルルを止める。しかし、既に頭に血が登っていて目付きも変わっていた。これではインターバルを置いて雰囲気を軽くした意味がない。
「落ち着け! 今飛び込んでも意味がないんだぞ!」
「しかし、姫が!」
「中に居るという確証はない! とにかく確認だ! 念波をヤマトに送れ。軍の固定周波数とかは無いのか?」
「あります。ありますが、僕は通信魔法が得意ではないのです。おお、アリシア様・・・」
「ねぇ、ねぇ、ボク思うんだけどさ、念波が届かないなら地面を叩いてみたら? この辺りの岩盤は音が響きやすい材質だったよ? さっきウニを拾いに行った時に気づいたんだ」
「それだ! でかしたぞポニ!」
「おお!それは気づきませんでした! さっそくやってみます」
少し距離をおき、用心深く海底に降りた俺達は、戦艦が沈んでいる岩盤に続く地層を叩きながら探した。2、3回試しては移動を繰り返し、4度目に移動した岩盤を叩いてモールス信号を送っている時に反応があった。
「信号が帰って来ました! 姫達は無事です!」
「やっぱり中に居たのか? だがどうして海馬で逃げなかった?」
「聞いてみます」
俺達は静かに待った。ポニにはゲルダゴスに動きがないかを見張って貰っている。
「分かりました。どうやら神経毒です! ゲルダゴスは毒を吹き出し、海馬達はそれをもろに吸い込んでしまったようです」
「海馬を失なって逃げようとしたところに、音波攻撃を受けたのか?」
「その通りです。姫の鎧はアーティファクトなので音波攻撃は通用しませんでしたが、他の者達は全員やられました。身動き出来なくなった全員を姫があの戦艦まで運び、侵入されそうな部分を凍結させたそうです。今は全員回復してますが、皆が動けぬ間ずっと姫様おひとりで氷塊を維持していたので、魔力を使い果たして今は眠っておられるそうです」
「交信は誰と?」
「シール様です。我々の隊長であり、姫様の教育係りでもある方です。もうすぐ40になられると思いますが、とても美しく素敵なご婦人です」
姫が無事と知り、コルルの表情も少し軽くなったようだ。まだぎこちなさが残るが、笑顔を作って見せたりする。
「なら、後は脱出方法だな。コルル君は竜王を呼んで来い。ポニの海流操作があれば竜宮城まで行くのにそれぼど時間も掛かるまい」
「いえ、それは・・・残念ながら出来ません」
「出来ない? 出掛けているなら呼び戻せばいいだろ? 竜王の魔力なら水中だろうと関係なく転移魔法も使えるんじゃないのか?」
「もちろん、竜王様ならば何処であろうと一瞬です。戦艦の中に転移して全員を連れ出す事も容易いでしょう」
「そうだ。それが一番確実で手っ取り早い。というより、その方法しかないだろう?」
「ですが、それが今は出来ないのです」
「だから、なぜ? ひとり娘のピンチになぜ来れないんだ!」
俺はイライラして来た。コルルがなぜ言葉を濁すのかも分からない。大切なひとり娘を助けに来ない父親なんているものか!
「この事は他言無用に願いますが、実はいま竜王様はこの世界の何処にもおられないばかりか、こちらからの連絡も一切できない状態なのです。これが敵対勢力に知れた場合、たいへんな事になりますので何卒ご内密に願います」
「この世界の何処にもいない? どういう事だ?」
「竜王様はいま神界に行っておられます。昨夜遅くに緊急の呼び出しがあり、戻られるのは早くて数日後、場合によっては数ヶ月先になります。神界とこちらでは時の流れが違う為、どうしてもそうなってしまうのです」
「神界だと? 竜王は神界とこの世界を往き来できるのか!?」
「呼び出しに応じるだけで、自由に往き来できる訳ではありませんが、その通りです。竜王様は代々神との交信を続けて来ました。我々は竜神の末裔なのですから、それほど不思議な事でもないでしょう」
―――そういう事か!
ゆかりが竜王は必ず敵になると言った理由が分かった。
奴は神の使いを名乗るハイエルフ同様、敵対勢力に組みする者なのだ。ヨムルに匹敵する強さである分、ハイエルフより遥かに危険な存在と言える。しかし・・・
「神からの緊急呼び出しと、娘の命に危険がおよぶ事態が同時に起きた場合、竜王はどちらを優先すると思う? 君の希望的意見ではなく、客観的に見てどうかが知りたい」
「竜王様は・・・
我が王は神を敬い、神を心から信じておいでです。何時いかなる時も神の命令に背くことはないでしょう。それは信仰というより誓いです。竜王様の先祖は神と契約し誓いを立てました。その誓いがある限り、神の命令は絶対と言えます。しかし、これから口にすることは僕の希望的観測ではなく、竜王様を深く知る者なら誰もが同じ事を言うでしょうが、誓います。王は神よりもアリシア様の命を優先します!」
コルルは慎重に言葉を選びながら、はっきりとそう答えた。
「分かった」
そしてその答えは俺にある決断をさせた。
俺はアリシア姫を助ける。なぜ、敵になる者の娘を助けるのかと思うだろう。助けて恩を売っておけば、竜王が敵になる事を防げるから? 彼女が産まれた時に受けた予言の言葉に従うためか?
いや、違う。
俺はゆかりの言葉の深意を考えたからだ。
ゆかりは俺に、竜王に「近づくな」でもなく、「関わるな」でもなく「気を付けろ」と言った。俺が闇のアダムである以上、魔王に近づかず関わらない事は不可能だ。こちらがそう思っても魔王の方から接触して来て関わって来る。
ゆかりは気を付けろと言った。
つまりは、竜王と対する時、選択肢を誤るなという事だ。
竜王が不在で、この世界へ干渉できない時にゲルダゴスが動き出した。そして俺はその時に何故かこの地に居合わせ、どうやって知ったのか分からないが、予言の婚約者を探しに竜王の娘が現れた。
アリシア姫がゲルダゴスと接触し不幸が起きた場合、それを後で知った竜王の怒りはどこに向けられるだろうか?
間違いなく俺だ!
アリシアにはアーティファクトの鎧が与えられている。彼女だけは、ゲルダゴスに呑まれても死なない可能性が大きいが、従者達は違う。従者が死ねばアリシアはどうなるのか?自分のせいだと己を責め、心に大きな傷を負うだろう。場合によっては病いになるかも知れない。
その責任は全てが俺へと向けられる。
俺が海に現れた事が原因でこうなったのだと、竜王はそう考えるだろう。 俺はまだ弱い。今の時点で竜王と敵対する訳には行かない。ゆかりの言う「気をつけろ」は時期が来るまでは敵対しないように気を付けろという意味だと俺は理解していた。
「俺が囮になりゲルダゴスを船から引き剥がす。君はアリシア姫と仲間を連れて、この海域から離脱しろ。ロープでも使って海馬に引かせれば城へ全員帰れる」
「何を言われるのですか!? 囮になるなど自殺行為です。僕達も闘いますよ!」
「海馬なしでか? はっきり言おう。海馬のない騎士などただの足手まといだ。俺とポニのふたりだけの方がずっとマシに動ける」
「しかし・・・」
「よく考えろ! 氷の壁は後どれくらい維持出来る? 中の酸素量は充分にもつのか? お前達は竜王の隊ではないと言ったな? お前達の役目は何だ!」
「アリシア姫を守る事です!」
「そうだろ! ならば、何を優先すべきかは分かるな?」
コルルは悔しそうに唇を噛みしめた。責任感が強く、情にも厚い。どうして、なかなかの好青年じゃないか彼は。
「よく聞けコルル。俺とポニはゲルダゴスを船から放した後、つかず離れずで時間を稼ぐ。君は、姫達と合流したら精神感知の影響を受ける領域から急いで離脱しろ。音波攻撃なんかを食らったら俺達も困るからな。海馬に引かせ、心は空っぽにするのを忘れるなよ」
ポニが後ろでブーブー苦情を言っているが無視だ。
「城に戻り、姫を部屋にかえしたらセイレーンと合流して海馬の大部隊を編成しろ。セイレーン王には俺から伝えておく。海馬はどれくらい城にいるんだ?」
「今はちょうど海馬達の出産時期で、動かせるのは300程度だと思います」
「充分だ。俺達は奴と鬼ゴッコして時間を稼ぐが、ポニの体力では三時間が限界だ。海馬とセイレーンの海流操作を合わせた高速機動部隊を編成し、俺達の限界が来る前にここに戻れ。隊はそのままゲルダゴス討伐作戦に参加して貰う。姫を助けてやるんだ。それくらいは協力してくれるよな?」
「アダム殿・・・」
コルルは俺の目をまっすぐ見つめながら覚悟を固めていた。自分の責任が如何に重いかを確認しているのだ。
「闇のアダムの名において竜人騎士コルルに命ずる。アリシア姫救出の後、海の脅威ゲルダゴス討伐に参加せよ。弱き民の犠牲によるかりそめの平和ではなく、秩序と理念による真の王国を築く為の聖戦に己の天命を掛けるのだ。君はその為に産まれ、今ここに居るのだと知れ」
俺の言葉に、コルルから迷いが消えた。
瞳に力が宿り、頬は上気し赤みがさした。ブルブルと武者震いが躰を襲い、それを確かめるように奮える拳を目の前で握りこんだコルルは叫ぶ。
「承りました! コルル・フォンデル・ラーカイド。アダム殿の命に従い、この任務、必ず成し遂げてみせます!」
そうして物語は、長い回想を終えて逃走の場面に戻る。
鬼ゴッコをはじめて一時間が過ぎようとした時、ゲルダゴスは体をふたつに分裂させて挟み撃ちを仕掛けてきた。予想しなかった事態にポニがパニックを起こしかけたのをなんとか食い止め、俺達は逃げるのではなく“鬼ゴッコ”という遊びを続けている。
ポニが「遊び」でなく「逃げる」と認識したら、その時点で行動を阻害する精神攻撃の怪音波が襲って来る。神経毒は海流操作で防げても、音波は水中にいる限りその範囲内であれば絶対に防げないシロモノだ。
疲れが精神に及ぼす影響は予想を大きく超えていた。全長1㌔を超える巨大アメーバのゲルダゴスは、単細胞生物が巨大化しただけの存在ではなかった。奴には明らかに知性があり、隠れて休憩しようとする俺達の行動を読んで潜み易い岩場に触手をあらかじめ伸ばしていたり、分裂させた小さい方を先回りさせたりする。
この状態で三時間もたせる? 絶対に無理だ!
俺は自分の考えが甘かった事を後悔しながらも、少しづつセイレーンの谷の方角にゲルダゴスを誘導して行く。姫を救出したコルルを含む竜人騎士達がセイレーン部隊と合流し、高速機動部隊を編成して戻る約束の時まで残り1時間と42分。その時を待たず、俺達は絶体絶命の危機に直面していた。
「もうダメだ。逃げ道を全て塞がれちゃったよ!」
「ポニ、逃げると考えたらダメだ!」
俺の叫びと同時に、悲鳴に似た音の衝撃波が体内を突き抜けた。全身を硬直させて白目をむくポニ! 俺はポニの小さな体を腕に抱いたまま、四方から迫る大量の触手の影を視界に捕らえていた。
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次回「大海獣殲滅戦へ」
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