旅立ちに向けて2
ガストさんは書斎で4回のノックをして
「旦那様、フィナ様とマオ様をお連れしました」
「あぁ、入ってくれ」
「どうぞ」
書斎ではガストさんが物凄く当主らしく書類仕事をしていた
「すごい、真面目そう」
「え、ひどくない?」
「マオ、ガストさんは普段から真面目ですよ?」
「いや、だって今まで基本おちゃらけてたじゃん?」
「いやいや、俺はいつだって真面目だぞ~」
「真面目に不真面目してるのは伝わってきた」
「ところでガストさん、お話があるんですけど」
「フィナってたまに空気読まないよね」
「こういう時はいいんです!」
「あぁ、ここに来る前みたいに旅がしたいんだって?」
「はい、ここまでお世話になっておいて申し訳ないのですが」
「申し訳ないっていう気持ちがあってもいかざるを得ないのかい?」
さっきまでにこやかだったガストさんが真面目な顔になる
「最初の調書で話してくれた旅の目的、親探しの為、だったかな」
「はい、私たちは自分の故郷や親を知りたいんです」
「そうか、でもそれって不思議に思うんだ、孤児は普通生まれたばかりの赤子が施設に預けられるか捨てられるかもしくは親が死んでどうしようもなくてなるんだ、そうなると施設の付近に親や故郷があることになる、なのに君たちは旅に出た、それは何故」
鋭い視線に少し気圧されるけど深呼吸をして気を落ち着かせて話す
「施設の付近には私たちの親らしき人もそれらしき情報もなかったんです、だから、無駄かもしれないけど、探すんです、自分たちで」
「フィナ君も同じ気持ちなのかい?」
「はい、私たちの進むべき道、帰るべき場所を見つけたいんです」
「それが見つからないものだとしても?」
「「はい」」
返事を聞いたガストさんは目を閉じた
「そうか」
目を閉じてから数分後に口を開いた
「見つからないかもしてない、けれどもかもしれないで諦めたくはない、自分の意志で納得したい、か」
そう言って納得したように数度うなずく
「うん、わかった、気持ちを聞かせてくれてありがとう、試すようなことを言って悪かったね、君たちくらいの若い子が危険な世界に飛び込んでいくのが不安になったんだよ」
「ありがとうございます、もし気持ちが中途半端だったらどうしてたんですか?」
「そりゃあ引き留めて養子にでもしてたさ、妻も息子も君たちのことを気に入ってるしね」
「平和な街に留まるのもいいかもしれませんが、そこで止まってはいけない気がするんです」
「ははは、君たちの意志は固いみたいだね、うん、いいよ、旅に必要なものがあれば言ってくれ、できる限り用意しよう」
「いいんですか?」
「旅の道具って結構高いと思うんですけど」
「いいっていいって、お金があるんなら使わないと、お金を持っている人がお金を使うから世の中が回るんだ、それに今の時期からお金を稼ぐのは大変だし」
「なるほど?あ、今の時期だとなにかありましたっけ」
「ほら、今は陽月の寝期だから狩りに出ると陰越えに備えた猛獣ばっかりで狩るのが大変なんだ、下手すると近くの村とかにまで下りてくるから」
「そんなに大変かな?」
「でもとりあえず首撥ねれば動かなくなるから大丈夫じゃない?」
「マオちゃん…君って…」
「ふっふっふ、伊達にガストさんに模擬戦勝ってないですよん」
「あ、あれはちょっと油断しただけだし!」
「敵を見た目で判断するんですかぁ~?」
「くっ!」
「マオちゃん!やめてあげなよ!」
「は~い」
「なんか君たちなら大丈夫な気がしてきた」
「うむ、たぶん大丈夫、というわけで明日からの冒険者登録と狩人登録してきます」
「あぁ、気を付けてな、あと旅に必要なもの書き出しておいてくれ、用意させるから」
「本当に何から何までありがとうございます」
「じゃ、明日に備えて早めに寝ろよ、おやすみ~」
「おやすみ(なさい)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さて、あの子たちと話は終わった
「バルト」
「ここに」
「今日も二人は図書館か?」
「はい、騎士団兵舎にて団員たちと雑談や稽古のあと街を散策し図書館へ」
「今回も重要な話は聞こえなかったのか」
「はい、聞こえてくるのは問題のないようなことばかりでそれ以外のことは全く聞こえません、おそらく気づかれているかと」
「お前の監視に気づくなんて腕が立つどころじゃないぞ」
「はい、いかに年を取ったとはいえ年頃の女性に見破られるほど耄碌した覚えはございません」
「そうだな、それで?」
「フィナ様はマオ様に気づかされて初めてという感じですがマオ様が手強いですな、一度こちらと目が合いながらも何事もなかったようにしていましたから」
「おいおい、どこかから亡命してきたお嬢様と護衛だなんていうんじゃないだろうな」
「可能性としてはあるやもしれません」
「そうなると簡単にはいどーぞって旅に出しにくいんだよなぁ」
「あくまで推測の域を出ませんしどなたかを同行させるのも手かもしれませぬが感づかれてしまうでしょうからなぁ」
「街長に報告して向こうで何とかしてもらうのも考えたがあいつが暴走したらまずいからな」
「ドナルド様は少々趣味がアレですからな」
「下手するといちゃもんついけて囲い込むかもしれん、そこだけは絶対にないようにしなければならない、街長の監視もよろしく頼むよ」
「承りました、旦那様」




