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短編読み切りSF小説『未来への報復 27 Dec 2033 Japan』

 事件から数週間以上が経過するが捜査の足取りはつかめず、被害者と言うか、加害者と言うべきかもしれないが、その母親はと言えば、やってきて進展はないと話す刑事のわたしに対してそうですかと言う失意の表情を見せた。

 中流の一戸建ての居間、夫婦関係は順調で家庭問題は存在せず、学校での交友関係も問題が無いと言うような理想的と言えば言い過ぎかもしれないこの家庭の娘が事件に巻き込まれたのは数週間前だった。


『デモ集団の中央が突然爆発! テロか? 怪しい人影見えず!』


『事件重要容疑者は14歳の少女? いじめを苦に自殺か? 証拠見つからず。』


『監視カメラがとらえた少女のリュックが爆発する瞬間。』


 事件の発端はと言えば数週間前のことで、証言によればわたしの眼の前にいる女性の娘がその日あるデモ行進の中心にいたかと思うと、背中のリュックと言うよりも、中の爆発物らしきものが爆発したらしいのだ。

 爆発したらしいと言うのも、監視カメラや鑑識の鑑定、周囲にいた人間の分析や証言で、彼女のリュックが本当に爆発したと言う確証は存在しなかった。

 彼女が被害者であり加害者であると言う理由はそこに存在するが、彼女が加害者である確証が欠けているのが現実で、犯人だと一方的には決められないのが現状だった。


 捜査を続けているが、確実に行き詰っていると言う状況で、この事件には解決する糸口がわたしたちには見つけられなかった。

デモ集団を狙ったと考えればテロで終わらせることができるが、問題は爆発物を持ち歩いていた少女で、入手経路もわからず、使用用途も不明で、どうしてあの日あの場所にいたのかもわからなかった。

事件は昼少し前の小雨の降る平日中に起きたが、当日はと言えば無論学校も休みではなく、彼女は不意にその日その場所に姿をあらわし、そして爆発が起きていた。

「SNSもアカウントも変なメールや怪しい履歴はなし、交友関係も洗ったが少しやんちゃでバイク好きな従兄がいる以外は悪い部分なし、学校でも何か大きなことが起きるほどの事件、いじめもなかった―――」

「爆弾物の入手経路も調べましたけど、そこらへんで売っている物の寄せ集めだったそうです。それこそ、子供でも買えるような―――」

「口を慎め。彼女が犯人だと言う根拠はない。犯行が可能だと言うのは証拠にならない。」

 署に戻ったわたしはと言えばもう何度も眼を通した資料を流し読みしながら、わかりきったことを言う中で、同僚が同じように返したが、わたしはそれはないと言うように返した。

 同僚の言うことは確かに事実で、爆弾と呼んでいるが、火薬やガソリン、化学物質の寄せ集めで実質的には到底爆弾とは言えず、子供にでも造れると言うよりも、子供が寄せ集めた物体だとも言えた。

 資料には彼女のわかる限りのことが書かれ、言った通りのやんちゃな従兄と一緒にバイクに乗り、走ってはいないが振り落とされないようにと言うような冗談で従兄に抱き付いている写真が存在した。

「第一動機がない。」

「動機がないのが動機。じゃダメでしょうか?」

「―――どういう意味だ?」

 わたしはと言えば考えてみろと言うように返すが、同僚はと言えば穏やかではあるが退く構えを見せず、わたしはどうしてだと言うように聞き返した。

「突発的に思いついたとか、心にずっとためていたとか、意味の解らない衝動に駆られたか。」

「それであんな大それたことを?」

「若いころなんて何があるかなんてわからないじゃないですか。」

 同僚はと言えばもしかしたらと言うように返し、わたしはあり得ないと言うように返すが、同僚はと言えばあり得るかもしれないと言うように返した。

「第一こんな時代ですよ? 10年前の国会爆破とか覚えてます? 犯人つかまってないんでしょう? 30年ぐらい前にはテロだってあったんでしょう? あれカルトと言うか、宗教集団だったんでしょう? それと戦争の後って結構荒れてたんでしょう?」

「それでどうして自爆テロなんかに到達するんだ?」

「自爆テロなんて言ってませんよ。こんな時代に絶望して、死のうと思ったけど1人で死ぬのは嫌で、ほっつき歩いていたら調度人の集まりがあってそこでここがいいと思ってドカン。」

 同僚はと言えば続けるが、わたしは腑に落ちないと言うように返す中で、同僚はと言えばそれとこれはと違うと言うように返した。

「だけどその考え道理を得てますね? 自爆テロって言うのもありえる。この言いようのない世の中に絶望して、それに対して抗議として自爆と言う一撃を与え、同じように世の中に不平不満を言う人間を巻き込んで死に世間に衝撃を与える。まさに自爆テロですね。」

「―――――」

「真実だったら戦後日本と言うか、日本初の自爆テロですね。だけど証拠なんてないですよね。」

 違うと言うように返したが、同僚はと言えば言われて見ればと言うように返し、わたしが考えている中であなたの考えはある意味正解かもしれませんねと言うように同僚は返した。

「どうしました?」

「なんでもない。と言うか、もう一度交友関係を洗い直そう。小学校にも捜査の手を伸ばそう―――」

「そうですね。自爆テロなんて飛躍し過ぎですよね?」

 言う通りと言うか言った通りかもしれないと少し考える中で同僚に呼ばれ、わたしはこれは推測にしか過ぎないと言うように思い、こんな考えは捨て去ろうと言うように同僚に言い、同僚もそうですよねと言うように返した。

 返し、調べるために動き出したが、わたしはと言えば自分で言ったと言うか、同僚も付け足した部分が存在するが、少女が自爆テロをしたと言う考えが、捨てきれない中で仕事を続けることになった。

 同僚はと言えばいつも通りで、気にしているようには見えず、わたしは心の中で深く考えすぎだと言い聞かせた。


 調べ直しをしたが結局にわかることは少ないと言うか、事態の発展に結びつくものはなく、一段落した中でわたしは仕事を終えることにして家に帰った。

 空も暗く、遅い気もしたが時計を見るとまだ7時少し前で、わたしは仕事の忙しさに季節を少し忘れていると思った。

 妻と娘が冷えるころだからと言いコートを用意し、マフラーもまいてくれ、風邪に気を付けてと言いマスクまで渡してくれるような季節になったのだとわたしは再認識する中で玄関のドアを開けた。

「あ? お父さん帰って来た?」

「あら、いいタイミングね?」

 ドアを開けると娘と妻の声が聞こえ、少し早く帰って来たから起きていたのかと思う中で、娘が玄関に向かって走って来る足音が聞こえた。

「おかえり。」

「どうした? その頭の―――」

「クリスマス。」

 姿をあらわし、出迎えてくれたのだが、娘はと言えば頭にパーティーの時に被るような三角の帽子を被り、何かあったか言うように聞くと娘はこれはと言うように答えた。

「そうか―――、て、もう終わってるぞ?」

「当日は友達といてお母さんもママ友と食事会。家では遅れてすることにしたの。そこにお父さんがナイスタイミングで帰って来た。」

 寒くなったかと思えばクリスマスかと言うように時計の日付を確認すると27日で、違わないかと聞くと娘はそんなこと関係ないと言うように返した。

「ナイスタイミング?」

「一緒に食べよう? お母さんとは再婚前にしたんでしょ? わたしに内緒で?」

「あ? おい?」

 返される中でいい時に来たと言うように言われ、どういう意味かと聞こうとすると娘は靴を脱いでいる途中のわたしの手を少し強引にとると急いでと言うように言い、わたしは手をひかれるままに進むしかなかった。

「血のつながりなんて関係ないって言ったのはお父さんでしょ? お父さんとしてのことはしてもらうからね? お母さんやおじいちゃんたちから許可ももらったからね? プレゼントも忘れないで?」

「彼を困らせないで? 毎日わたしたちやたくさん人たちのためにがんばっているんだからね? ほら、あなたの分はあるから?」

「いっぱい食べたいんじゃなくてお父さんと一緒に食べたいの。2人ともずるいよ。去年と一昨年のクリスマスはわたしに内緒でラブラブだったんでしょう? エッチなこともしたんでしょう?」

 娘はと言えば急いで言うように引っ張る中でダイニングへ到着すると、妻がわたしを困っていると言うように言うが、娘はと言えばそれはわかるけどと言うように返した。

「―――――」

「―――――」

「ほーら図星、エッチなことはわたしにばれない範囲でやるとして、みんなで楽しむことはみんなで楽しもう。」

 話しを聞けばわかると思うが妻は再婚で娘は彼女の連れ子で、わたしとは血縁はなく、わたしは前妻とは子供もなく仲も悪くなり、離婚原因も前妻の不倫で、妻にあう前はと言えばこんな生活はしていなかった。

 娘の言うことはと言えば事実で、一昨年と去年のクリスマスわたしと妻は交際の中で一緒に旅行に出かけ愛し合っていた。

言われると痛いと言うか、気恥ずかしいで、中学生の子供が言う言葉でもないと思うが、妻とお互いに顔をあわせられない中で娘は特別に許すからと言うように言って椅子に腰かけた。

「―――――」

「―――――」

「さーっカットカット、たくさん食べて脳みそ砂糖にしちゃおう。」

 娘が腰かける中で妻に眼を向けるとごめんねと言う表情で、わたしも大丈夫だと言うように眼で返す中で娘はケーキのカットを始めた。

「―――――」

「どうしたの?」

「お父さん?」

 プレゼントも考えないといけないなと思いながら腰を下ろす中で、わたしは思わず娘を見て待てよと言うように思い、妻が異常に気付き声をかけ、娘もケーキを切る手を止めわたしに眼を向けた。

「―――いや、何でもないよ? 少しおどろいて、どっと疲れが出ただけだよ。」

「大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ。」

 眼を向けられる中でわたしはまずいと思い平静だと言うように見せると妻が心配したが、大丈夫だと言うように返したが、実際はと言えばわたしの頭の中では大きな心配がよぎったのだ。

 大きな心配はと言えば、昼間に同僚と話した事件の推測の話で、だれかの手によるにしても、自己にしても、そして自爆テロにしても事件の容疑者は娘と同じ年で、娘は大丈夫かと考えたのだ。

 考えたとは言え、あの少女のように原因を見つけ、解決し、そして防止ができるかと言えば不明で、わたしは父親として、どこまでできるかわからないが、最善は尽くすことは誓わないといけないと心の奥底から考えた。

 妻もわたしの考えた微妙な雰囲気の違いに気付いたのか、本当に大丈夫なのかと言うように再度眼を向ける中で、わたしはそのためにわたしがいると言うように眼で返した。


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