会津大戦の恩賞
館林を会津大戦第一の功と定めると、氏治は玉座より立ち上がった。
「戦功を定めた以上、恩賞を定めねばならぬ。」
広間は静まり返る。
氏治は館林の前まで歩み寄った。
「館林。」
「そなたは赤井の一族でありながら、祖は新田の流れを汲む。」
「されど長き歳月、傍流として埋もれてきた。」
館林は静かに頭を垂れる。
氏治は高らかに告げた。
「今日より赤井の姓を改め、新田を称することを許す。」
その瞬間、広間はどよめいた。
新田。
坂東武士にとって、その名は源氏嫡流に連なる名門である。
氏治はさらに続けた。
「新田家再興の証として、上野東部一円を与える。」
「館林を本拠とし、新田郡、利根郡、片品、尾瀬へ至る山道まで、その一切を預ける。」
「坂東北門を守り、会津への道を子々孫々まで護れ。」
館林は思わず膝をつく。
「このような大恩……。」
氏治はなおも言葉を止めなかった。
「だが、それだけでは新田家は立たぬ。」
「家は領地だけでなく、家格もまた子孫へ残すものである。」
そう言うと氏治は結城朝基へ目を向ける。
「結城。」
「そなたには妹がおったな。」
朝基は一歩進み出る。
「はっ。」
「余は、新田家再興の証として、その妹を新田へ嫁がせたい。」
広間に穏やかなざわめきが広がる。
館林は驚いたように顔を上げた。
「わ、私に……。」
氏治は静かに頷く。
「名門には名門の縁が要る。」
「結城家との婚姻は、新田家再興の礎となろう。」
館林はしばらく言葉を失っていたが、やがて照れくさそうに笑った。
「朝基の妹君であれば……。」
「学友の妹君ならば、喜んでお受けいたします。」
朝基も穏やかに笑う。
「兄としても異存はございませぬ。」
「新田殿ならば安心して妹を託せます。」
氏治は満足そうに頷いた。
「よし。」
「これより新田家は坂東北方の柱石となる。」
「尾瀬を越え、会津へ至る道を守り、祖先の名を再び坂東へ轟かせよ。」
館林――いや、新田は深く頭を下げた。
「新田の名に恥じぬよう、この命尽きるまで坂東をお守りいたします。」
広間に集う諸将は、一斉に祝意を示した。
こうして会津大戦最大の功労者・館林は、新田への復姓、上野東部の大領、そして結城家との婚姻という三つの恩賞を授かり、新田家再興の第一歩を踏み出したのであった。




