坂東大評定 ― 新たなる国の礎 ―
鎌倉・鶴岡八幡宮にて「武家の都の盟約」を結び、小田城へ帰還した氏治は、間を置くことなく坂東諸将を集め、大評定を開いた。
静まり返った評定の間で、氏治はゆっくりと立ち上がる。
「盟約は成った。」
「されど、坂東はここで歩みを止めぬ。」
「まずは戦功を定める。」
家臣一同は深く頭を垂れた。
最初に名を呼ばれたのは宇都宮尚綱であった。
「宇都宮。」
「佐竹との一連の戦、その働きは勝敗を決した。」
「よって館林を預ける。」
評定の間に小さなどよめきが広がる。
氏治は続けて渡良瀬川流域の絵図を指した。
「さらに渡良瀬川流域を下野へ編入する。」
「今後、この地は上杉と向き合う最前線となる。」
「其方は館林を要として守りを固めよ。」
「また、那須より白河へ至る街道には、兵の宿営と狼煙を兼ねる陣所を整備せよ。」
宇都宮は深く頭を下げた。
「命に代えましても。」
氏治は静かに頷き、次に三人を前へ呼ぶ。
「水戸頼治、宍戸政繁、鹿島政道。」
三人が進み出る。
「那珂湊城築城の功、誠に見事であった。」
「海はこれより坂東の命脈となる。」
「その働きを賞し、感状を与える。」
三人は揃って平伏した。
続いて氏治は大掾家へ視線を向ける。
「大掾。」
「嫡子を大洗へ配す。」
「今日より小田家直臣とする。」
「大洗を守り、那珂湊を支えよ。」
大掾は深く礼をした。
最後に氏治は真壁兄弟を見た。
「真壁幹久。」
「笠間領を正式に編入し、真壁・笠間を一つの領国として治めよ。」
幹久が静かに頭を下げる。
氏治は弟・幹永へ向き直った。
「幹永。」
「盾の整備に尽力し、北浦にて温泉の源泉を見出した功。」
「そして前橋の戦では兄とともに身を挺して余を守り、対上杉戦勝利の表と裏を支えた。」
「その忠義と功績を高く賞する。」
氏治は北浦の絵図へ手を置いた。
「これまで預けていた北浦一帯を正式に其方へ与える。」
「行方郡をはじめ、竹原、堅倉、羽鳥、鉾田へ至る北浦西岸一帯を大幅に加増する。」
評定の間は静まり返る。
氏治は穏やかな口調で続けた。
「ただし、この地はなお荒れ地が多く、人も少ない。」
「余が与えるのは豊かな領国ではない。」
「未来である。」
「己の力で村を興し、街道を開き、港を築き、牛を育て、盾を造れ。」
「北浦を坂東の宝へと育てよ。」
幹永は深く平伏した。
「必ずや、ご期待にお応えいたします。」
氏治は家臣たちを見渡した。
「以上をもって論功を終える。」
「これより坂東の新たな国造りについて評定を始める。」
その一言により、戦の恩賞は終わりを告げ、新たな時代を築くための坂東大評定が静かに幕を開けた。




