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Lusta  作者: Mi2YA
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 自分が、宝石人間。今しがた、輝夜から受けた説明を頭の中で反芻する。だが、うまく呑み込めない。そもそも、透は自分のことを今までどこにでもいる人間だと思って生活していたのだ。というか、人間であることを改めて意識することがないくらい、自然に。

 だから、透は急に寂しくなった。急に、自分が世界から弾き出されたような、お前は周りとは違う生き物なのだという事実を突きつけられているような寂しさであった。


「失礼なことだとはわかっているのだけれど、貴方の治療を行うと同時に、身体検査の方もさせてもらいました。その結果、真霞さんはダイヤモンドの宝石人間であるということが分かったの。ダイヤモンドの宝石人間は、とても貴重よ。商人にとって、喉から手が出るほど欲しい存在なの」


 ダイヤモンドとは、地球上で最も硬く、希少価値が高い鉱物である。その輝きは万人を魅了し、何世紀にもわたって愛されてきた。誰しもの憧れの的であるダイヤモンドと、目立つところのない平凡な自分。その2つがどうしても結びつかず、透はまた頭を悩ませた。

 

「真霞さん、今まで生きている中で、人に注目される、つまり周りの目線を集めてしまうような経験って、たくさんあったりしないかしら?」


 輝夜の質問に、透は大きく、何回も頷く。キラキラしているという言葉と、沢山の目がこちらを見ているというぞわぞわする感覚。この感覚のせいで、眼鏡をかけていないと、外に出るのが嫌だったのだ。


「宝石人間の特徴の1つに、無意識に人を魅了するというものがあるわ。後は、無意識に同族の元へ集まってくるとかね。」


 輝夜の説明を聞いて、大学での出来事を思い出す。あの異常なまでの視線の数と、声をかけられる頻度の多さは、宝石人間である特徴だったのかと腑に落ちた。ぼおっとしたまま過去のことを思い出す透の様子を見て、輝夜は不思議そうに顔を傾けた。


「真霞さん貴方、本当に宝石人間のことを何も知らないのね……それでこの年齢まで五体満足で生きて居られていることは、本当にすごいことだと思うわ……ずっと気になっていたのだけれど、貴方、髪の毛や爪はどうしていたの?」

「えっと、髪の毛はお父さんに切ってもらっていて、爪は、やすりで削った方が爪を傷つけないって教えられていたから、やすりで長さを整えていました」


 3、4か月に1回ほどの頻度で、父親は髪を切ってくれていた。小さい時からずっと続くそれは、一般家庭ではありえないことかもしれない。だが、透にとって父親に髪を切ってもらう時間というのは、大きくなった今でも変わらず、父親に甘えることのできる大切な時間だったのだ。爪も、父親から言われていたことである。


「散髪をお父様に……?ええと、うん、なるほど。髪の毛はお父様に処理してもらえば真霞さん自身が気づくことは無いだろうし、爪もやすりで削ってしまえば細かい粒だけになるから、ぱっと見だと宝石だと分からない……ずいぶんと徹底されていたのね」


 怪訝そうな顔をしたのも束の間、考えるようにつぶやいていた輝夜はすぐに納得したようであった。


「あと説明することと言えば、そうね、ここ」


 またページを捲る。そこには、『能力について』と書かれていた。


「宝石人間は、1人1つずつ何かしらの能力を持っているの。真霞さんも宝石人間だから、何かしらの能力は持っているはずなのだけれど、能力にも強さや発現の条件など色々と複雑で、自分の能力に気づかないケースも多いみたいね。能力の発現が無かったら、自分が宝石人間であることに気づかないのも無理はないわ」


 能力が発動していたら、ここまでお父様が隠し通せるはずもないし、と輝夜は付け足していった。

 能力。この漢字2文字だけではなかなか想像できないが、どのようなものなのだろうか。


「どうやら、迷える子羊たちに手を差し伸べる必要があるようですわね」

「私が説明するよ~とおっしゃっています」

「えっと。そう?なら、お願いしようかしら。私じゃ難しいところもあるから」


 そう言って、輝夜が後ろの方に下がる。完全に、真琴達に説明を任せたようだった。


「世にも不思議な鉱物生物はそれぞれ、何かしらの力を持っていると、姫君が語っておりましたわね。そのような摩訶不思議なものを理解していただくには、やはりその奇跡の瞬間を、あなたのその目に焼き付けることが賢明、でしょう」

「百聞は一見に如かず、実演して説明しましょうとのことです」

 

 真琴が胸を張りながら声高々に話し始める。それは演説のようであった。


「わたくしは大魔女でありながらこの現世で鉱物生物研究所の研究員、となり人間たちの支援を行っているのですが、そんなわたくしも鉱物生物としてこの世に君臨した身!その真の姿は、アメシスト。与えられた能力は、思いを形にする奇跡の力!」

「魔女様は、鉱物生物研究所で研究員として支援を行っているのですが、実はその魔女様も鉱物生物__宝石人間なのです。魔女様は、アメシストの宝石人間。能力は、錬金術と呼ばれておりまして、ありとあらゆるものを作り出すことができるのです」


 真琴の話し方は相変わらず変わっていて、理解が追いつかないものであったため、鈴音が逐一解説を入れて説明してくれて、ようやく理解できた。それでも、難しいことには変わりないが。


「えっと、じゃあ、真琴さんは宝石人間ということになるんですか……?」

「いかにも。先ほどからそう申しておりますでしょう」


 目の前に、自分以外の宝石人間がいる。同族がいる。この事実は、透にとって救いのようなものであった。先程の寂しさが少し紛れて、ほっと息をつく。自分だけではない。自分は、孤独ではないのだ。


「それではとくとご覧あれ!原石の君。この偉大なる大魔女による奇跡の瞬間を!」

「今から能力をお見せしますよ~とのことです」


 そう解説を入れながら、鈴音はどこから取り出したのか、大きめの布をばさっと床に広げた。透はそれを覗き込む。布には、魔法陣のようなものが描かれていた。


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