ある日森の中聖女ちゃんを拾った。
こちらは「なろうラジオ大賞2」の参加作品で、「ある日森の中おねぇさんに出会った。」の姉妹作品です。
「で、あなたはそこでなにをしてるの」
リュシアンが森の中で出会ったのは、やたらと小さな女性だった。
いや、女性というよりは少女だろう。
だがその瞳を見たときにその素性を察し、たしか成人をいくつか過ぎているはずだ、と頭の中の情報と照合する。
生真面目な視線を真っ直ぐに向け、彼女はうずくまったままリュシアンを見上げる。
「はい、足を痛めてしまい、木の根元にかがんでおります」
「ええ、そう見えるわ」
そのまんまやん、と内心つっこみつつ頷き、「問題は、なんでこんな森の奥で、あなたが足を痛めているのかということよ」と疑問を述べる。
「とても込み入った事情がございますので、ひとことでは説明しかねます」
「そうでしょうとも」
そりゃ込み入った事情がなかったらこんなとこにいないだろ、と大きく頷き、リュシアンは彼女の傍らにしゃがんだ。
「見せてご覧なさい」
恐る恐る手を離した左足首は、触れると熱を持っていた。
彼女は痛みに声を上げる。
こんなところまで散歩に来るような靴ではない。
「腫れてるわね。
とりあえずあたしの小屋に行きましょう。
立てる?」
「……ムリです」
「そう、じゃあちょっと失礼するわね」
リュシアンは彼女を抱え上げると、慌てた早口で彼女は言った。
「いえ、大丈夫です、おかまいなく、大丈夫ですから!」
意に介さずリュシアンは自分の森の拠点へと足を向ける。
そしてため息混じりに言った。
「大丈夫なわけがないでしょうし、おかまいなくで済むわけもないでしょうが。
一体どうしてあなた様がこんなところに居るのかしら」
その一言で彼女は身を固くした。
「……わかっちゃいましたか?」
「わかっちゃったわね」
「見逃してくださいませんか?」
「それは難しい相談だわ」
「お願いします、後生ですから」
「供もつけずに森の中で怪我をして動けないでいる女性を、見ぬふりできるほどあたしも悪人じゃないのよお」
厩には二頭の馬がつながれたままだが、相棒の従者の姿はなかった。
あいつがいると騒がしいから都合がいい。
中に入りリュシアンは彼女を椅子に座らせた。
「靴を脱いで、冷やしましょう」
桶に水を汲んで手ぬぐいをしぼり、彼女の足首に当てる。
安堵のため息を洩らすその姿は、色素の薄い茶髪と相まってごく普通の少女に見えた。
真っ直ぐに彼女の『黄金色の瞳』を見てリュシアンは言った。
「さあ、ちゃんと説明してもらうわよ、聖女エヴリーヌ様。
いったいどうしてあなたはこんなところにいるの?」




