表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師の杖  作者: 粉雪@4/14『魔術師の杖』コミックス1巻発売
第三章 ネリアと王都の錬金術師たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
93/580

93.竜騎士団訓練場

「竜騎士団……えっ、いきなり行ってもだいじょうぶなの?」


 わたしはあわてたけれど、オドゥは気にする様子もない。


「ネリアは師団長なんだから遠慮なんていらないよ。さぁさぁ!」


 オドゥに急き立てられたわたしは、後片づけを副団長に任せ(押しつけたともいう)、竜騎士団に彼と転移した。


「ネリア、こっちこっち。この時間なら、やってるハズなんだよねぇ。チケット代取って公開すればいいのにさぁ、もったいないよねぇ」


 オドゥはわたしの肩に両手をかけ、どんどん訓練場へと進んでいく。


「えっ、訓練の邪魔じゃない?」


 とまどうわたしに彼は眼鏡の奥からほほえみかける。


「いいからいいから」


 訓練場には竜騎士たちのほかに、けっこう人が集まっていた。みな興奮しており、密やかなささやきが交わされている。


 確かにこれなら、わたしたちが紛れこんでも大丈夫そうだ。


「はい、ちょっと通して……せっかくだから、いい場所で見ようよ」


 錬金術師団の白いローブのおかげか、人垣が割れて道ができ、わたしたちは最前列にでることができた。とたんに冷気にさらされる。


「ひょ~、今回は一段とすごいねぇ!」


 訓練場の中央で相対しているのは、竜騎士団長のライアス・ゴールディホーンと、魔術師団長のレオポルド・アルバーンだ。


 長身のふたりが真ん中にいると、広いはずの訓練場も狭く感じる。


 冷気を発して訓練場の気温をぐんと下げるのは、銀髪をきっちり束ねたレオポルドだった。


 彼はいつもの黒いローブではなく、紺の簡素な訓練着と防具だけの姿で、両手には細身の双剣を握っている。


 対するライアスも同じ訓練着で、こちらは長剣を両手でかまえていた。


 双方とも武器はミスリル製なのか、冴え冴えと輝く冷たい光を放っている。


「ネリス師団長、観にいらしたんですか。こちらへどうぞ!」


 わたしたちを見つけた副官のデニスが、すかさず駈け寄ってきて、少し高くなった見晴らしのいい観覧席に案内してくれる。


 そこには先客の……アーネスト陛下が座っていて、わたしたちを笑顔で手招きする。


「おお、ネリス師団長きたのか。こっちだこっち!」


「さっ、座って。はじまっちゃうよぉ!」


「何がはじまるの?」


 わたしをうながして国王の隣に座らせると、オドゥもちゃっかりと反対に腰を下ろす。先にきていた陛下が教えてくれた。


「訓練ではあるが、団長同士の手合わせだ。見応えがあるぞ」


「団長同士って……ライアスとレオポルドが戦うの!?」


 わたしが身を乗りだすと、横に座ったオドゥも眼鏡のブリッジを指で押さえて、楽しそうに訓練場を見下ろす。


「関係者以外、非公開なのがもったいないよねぇ。このふたりなら絶対、チケットが高額で売れるよぉ」


 陛下もわざわざ見学するぐらいだものね。わたしはレオポルドが剣を持っているのが気になった。


「レオポルドも剣を持っているけど、物理で戦うってこと?」


 ふたりとは同期だから、オドゥは学園時代から何度も手合わせを見ているらしい。レオポルドはときどき、竜騎士団の訓練にも参加していて、珍しいことではないそうだ。


「魔法剣に近いかな。レオポルドの魔法攻撃は多彩だから見応えがあるよ。火属性が得意ではあるけどね」


「魔法剣……?」


 どんなものか想像がつかなくて首をかしげると、オドゥが解説してくれる。


「あいつは『実戦で何があるかわからないのに、魔術師だからと戦えなくてどうする』って言ってて。魔術師は後衛って常識は、あいつにはあてはまらない。〝銀の死神〟なんて異名もあるぐらいだよ」


「そういえば、レオポルドはドラゴンにも乗れるって、ライアスも言ってた……」


 ドラゴンに乗って剣を振りまわす彼なんて、ふだんの黒いローブ姿からは想像もつかない。


 そしてライアスとレオポルドは、訓練場の中央で互いに見つめ合ったまま、微動だにしない。冷気も相まってすごい緊張感だ。


 ふだんは快活なライアスも口を真一文字に引き結び、射るような眼差しで剣をかまえ、レオポルドを見すえている。


 緑髪の副官デニスは、わたしたちが座る席の真正面、訓練場の中央に引かれたライン上に立ち、それに向かい合うように、ベテラン竜騎士のレインが反対側に立っている。


 紺の髪のレインが笛を取りだすと、訓練場がシン……と静まりかえった。場の緊張感がどんどん高まる。


「はじめっ!」


 ピピーーッ!


 デニスの合図とともに、鋭い笛の音が鳴り響き、ライアスとレオポルド双方が動きだした。


 ふたりとも速度強化しているのか動きが速い!


 一直線にレオポルドがライアスの懐に飛びこみ、剣を振りぬく。


 ビシビシビシビシッ! と振りぬいた先の地面が扇状に凍りつき、ライアスが横っ跳びに避ける。


「あの魔法は触れると凍りついて動きを封じるんだ。ライアスはうまく避けたな」


 ライアスの動きは予測していたのだろう、レオポルドはもう片方の剣を振りかぶり、着地したライアスに叩きこむ。


 シュバッ!


 ……ザシャアッ


 風の盾を出現させてライアスが剣を弾くと、レオポルドの剣から繰りだされた氷が、音を立てて砕け散った。


 ライアスはリーチを生かして、自分の長剣を前へと突きだす。


 キィン!


 鋭い金属音を響かせて、双剣をクロスさせたレオポルドがライアスの突きを受け、その勢いで弾かれるように後ろに跳ぶ。


 すかさず前方に展開した魔法陣から、火炎の連弾がライアスに向かって撃ちだされた。


 そのすべてをライアスが避けても、レオポルドがまたも切りかかる。


 彼の動きに合わせて上空に魔法陣が展開し、出現した氷柱がライアスに降り注ぐ。


 ザンッ! ザンッ! ザンッ!


 動きを封じるように、氷柱が地面につぎつぎに刺さるなか、俊敏にそれを避けたライアスは、地面を蹴ると姿勢を低くし、飛ぶような速さでレオポルドへ突っこんでいく。


 ガキィッ! キン! ギィンッ!


 重たそうな長剣をライアスは軽々と振りまわし、レオポルドと何度も切り結ぶ。


 そのすさまじい勢いに、こんどは〝銀の魔術師〟が防戦一方になった。うまく角度をつけて受け流していても、〝金の竜騎士〟の剣を防ぐだけで精一杯に見える。


 ライアスの動きも早いが、レオポルドも身軽だ。そのまま何度か切り結んだあと、後ろに大きく跳んだ。


 跳びながら繰りだした魔法陣から、こんどは火焔の渦を噴きだして、ライアスの追撃を封じることも忘れない。炎の熱気が観客席まで押し寄せてきた。


 ゴオオオオッ!


 見守っていたわたしが、目の前で繰り広げられる戦いに息をのんでいると、隣でアーネスト陛下が教えてくれる。


「まもなく北のモリア山へ、採掘のために遠征があるからな。彼らの手合わせを見ると、ほかの団員たちが引き締まるのだ」


「そんなに危険な場所なんですか?」


「険しい山で地形がやっかいなうえに、でてくる魔獣は凶暴でな」


 ミスリルが採掘されるモリア山……どんな場所なんだろう。ポーションもたくさん用意しないといけないかも。こんな戦いは心臓に悪い。


 ほかにも何か……戦いが必須の場所で、彼らの助けになるものが作れないだろうか。


 グワンッ!ギィンッ!ザシャアッ!ガンッ!


 長身のライアスが繰りだす長剣の一撃もすさまじいけれど、レオポルドの双剣は片方をかわしても、すかさずもう一方で切りつけてくる。


 ライアスはナックルガードと風の盾を駆使して、彼の攻撃を防いでいるようだ。


「こうして見るとライアスのほうが防御重視で、レオポルドは盾もなく双剣で、捨て身の戦法なんだね」


「持久力や身体強化、膂力などはライアスが上だからな。レオポルドは短期決戦を狙っておるのだろう」


「竜騎士だけあって、ライアスは風魔法に特化してるからねぇ。攻撃や防御のパターンが決まっている。ただ、なかなか隙はないよねぇ」


 オドゥはいつもの軽い口調だけど、訓練場を見守る目つきは真剣そのもので。


 レオポルドの剣が氷のつぶてを生めば、ライアスの風魔法がそれを吹き飛ばす。

挿絵(By みてみん)

金の竜騎士ライアスと銀の魔術師レオポルド、そして竜騎士団のメンバー

コミックス1巻の電子書籍販売サイトでの購入特典です。

ライアスとレオポルドは昼と夜の対比になっていますね。

レオポルドがロウソクを持っているのも、イルミエンツを連想します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆☆シリーズ発売5周年!トートバッグ発売しました!☆☆
トートバッグ
☆☆『魔術師の杖 THE COMIC』☆☆
1巻4月14日(火)全国発売!

『魔術師の杖 THE COMIC』

コミックス1巻 購入者特典(9種類)

月曜更新ニコニコ漫画

pixivコミック

毎月1日更新!『MAGKAN』(先行配信)

『魔術師の杖 THE COMIC』
☆☆アプリ『コミマガ』でも配信中!☆☆
作画:ひつじロボ先生

小説版公式サイト
小説版『魔術師の杖』
☆☆NovelJam2025参加作品『7日目の希望』約8千字の短編☆☆
『七日目の希望』
☆☆電子書籍販売サイト(一部)☆☆
シーモア
Renta
Amazon
auブックパス
BookLive
BookWalker
ドコモdブック
DMMブックス
ebook
honto
ソニーReaderStore
楽天
☆☆紙書籍販売サイト(全国の書店からも注文できます)☆☆
e-hon
書泉オンライン
Amazon

↓なろうで読める『魔術師の杖』シリーズ↓
魔術師の杖シリーズ
☆☆粉雪チャンネル(Youtube)☆☆
粉雪チャンネル
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ