表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師の杖  作者: 粉雪@4/14『魔術師の杖』コミックス1巻発売
第十三章 ネリアと死霊使い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

570/572

570.野営地

コミックス1巻14日発売です。

挿絵(By みてみん)

 オーランドに連れてこられた第二王子のカディアンに、春から竜騎士団に入団するニックやグラコスも加わって、カーター副団長が保護者代表みたいになっている。


 竜騎士団は雪の中でもサクサクと圧雪を済ませ、雪原に杭を打ち込むとロープを張って、野営用のテントを設営した。


「ほほう、中は広いな。それに暖かい」


 テントに入ってきたカーター副団長に、学園生のニックとグラコスがあいさつした。


「ええと……メレッタのお父さん、よろしくお願いします」


「副団長と呼べっ!」


「「はいっ、カーター副団長!」」


 ビシッと背筋を伸ばした学園生たちに、竜騎士団の副官デニスは穏やかにほほえんで、副団長へと手を差しだす。


「カーター副団長、今回はよろしくお願いします。後方支援にあたる錬金術師団まで参加されるとは心強いです」


「ふはははは!私はネリス師団長から、留守中の錬金術師団を任されておりますからな。よろしく頼みますぞ!」


 がっしと握手を交わすふたりの横で、ヤーンが軽口を叩く。


「カーター副団長が来ているなら、たこパも楽しみっすね」


「ふっ、期待しておるな。まぁ、見ておれ」


 たこパの普及……それはすなわち、錬金術師団開発の魔道具グリドルがアルバーン領でも売れるということ。カーター副団長はニタリと笑う。


(カディアンが成人すれば、紳士が集うカードゲームの場に、グリドルを持ちこませてもいいかもしれん……)


 なんといってもグリドルで調理したものは、酒のつまみとしても需要がありそうなのだ。ヤーンは目をキラキラと輝かせた。


「おっ、その表情は……楽しみっすね!」


「ふん、まずは仕事を済ませてからだ。輝雪結晶などの稀少素材はしっかり採集するぞ。それから同行する魔道具師を紹介しよう」


 栗茶色の長い髪をきちんと巻いた、メロディがにっこりして立ち上がる。


「ニーナたちから依頼されて参りました。メロディ・オブライエンです。軍服に採用された収納ポケットの耐寒性能を調べます。あとはグリドルの報告を魔道具ギルドに提出します」


「ありがとうございます。今回は調査を兼ねた訓練ということで、学園生たちには初級メニューを用意しています。雪上への野営や行軍といった、生活面の改善も考えて頂けるとありがたい」


「承知しました。グリドルの改良についても、カーター副団長と案を出していきましょう」


 デニスは学園生たちに向き直った。


「きみたちにはまだ、竜を乗りこなすだけの技術がない。雪中で行動するための術式を習得し、野営地の整備などに取り組んでもらう。大切なのは悪天候下で戦える状態を保つことだ。意識を失い、行動不能に陥れば死に至る。決して油断するな」


「はいっ!」


「でも私まで参加できるとは思いませんでした」


 竜騎士たちだけだったら、メロディもためらったろう。魔道具ギルドの実習で相手をした学園生たちも参加すると聞いて、彼女の迷いは吹っ切れた。


 副官のデニスはうなずく。


「むしろ実戦も想定した危険な訓練に、よく同行して頂きました。実際の戦場には、軍人だけがいるわけではありません。竜騎士たちにも、より安全に配慮するよう伝えます」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


「荷物はそれだけですか?」


 デニスがメロディの鞄に目を留めると、彼女はにっこりして鞄の表面をぽんと叩いた。


「収納鞄ですし、たっぷり入ります。それにコートの裏地には収納ポケットもたっぷりつけていますの」


「ああ、そういえばネリス師団長も、王都にやってきたときは身軽でしたね」


 彼女自身もいくつか、魔道具を持参していた。新しい魔道具のヒントになるかもしれないし、記録石も大量に用意していて、荷物は増えてしまった。


 それを聞いていたカーター副団長が、興味を持ったように身を乗りだし、じーっと彼女のコートを眺めた。


「ほう、収納ポケットか。話には聞いているが便利そうだな。私の服にもあればいいのだが……」


「あらっ、じゃあ予備の収納ポケットを、ローブに取りつけましょうか?」


 メロディが提案すると彼の目がギラリと光る。


「助かるが、そんなにすぐできるのか?」


「術式の刺繍まではできませんが、ワッペンのように取りつけるだけなら」


「ほぅ……ふむ、拝見してもいいかね」


「どうぞ。色は白いローブに合わないので、内側につけたほうがよさそうですね」


 そのままでは縫いつける前の、ただの四角い布切れを、副団長はじっくりと眺める。


 魔法陣を小さくまとめるために、刺繍糸の色や文様の配置にも工夫が見られるし、ただの装飾とは違う仕上がりになっている。


「いかがですか。これ以上小さくするのは難しいと思いますよ」


「確かにそうだな。あの師団長め……」


「はい?」


 毒づきそうになった副団長はメロディが首をかしげたので、あわてて咳払いをする。


「うおっほん。いや、なんでもない。ではローブを預けるとしよう」


「かしこまりました」


 収納ポケットの術式を書くために、ネリアが頭を抱えて悩んでいたときも、副団長は手伝いもせず観察していただけだった。


(ラクガキばかりして遊んでいると思ったら、収納ポケットの術式だったとは……)


 ネリアを師団長として認めたとはいえ、やはりおもしろくない。けれど〝収納ポケット〟など副団長は思いつかない。


 以前なら悔しくて歯ぎしりしただろうが、今の彼は少しだけ気持ちに余裕があった。グラコスがうらやましそうに、メロディが収納ポケットをローブに縫いつけているところを見ている。


「いいなぁ……竜騎士団に入団すれば、俺たちの制服にも取りつけてもらえるんですよね」


「そうねぇ、まだ予備はあるから自分でつけてみる?」


「いいんですか!」


 うれしそうに瞳を輝かせたグラコスを見て、メロディは自分の裁縫箱を開ける。


「ええ。全員分をつけるのは大変だから、自分でやってね。やりかたは教えるから。針と糸は使えるでしょう?」


「あ……」


 まずはそこからだった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 アルバーン公爵へのあいさつを済ませて野営地に戻ってきたライアスは、テントの中でみんなが裁縫をしているのに目を丸くした。


「みんな、何をしているんだ?」


「あ、お帰り団長。魔道具師のメロディさんから収納ポケットの布地をもらったんで、せっかくだからチョチョイとね……」


 ヤーンが元気に片手を挙げる横で、デニスが苦笑してライアスに説明する。


「最初はカーター副団長や学園生たちだけでしたが、雪上訓練が終わってもそのまま使えるため、みんながほしがって……」


「そのかわり、自分でつけたぶんは補償対象外ですからね。耐寒テストのデータ集めにも協力してもらいます」


「こういうのはベテラン竜騎士の俺に任せなさいって。ほらできた」


 さっさと仕上げて満足そうに服を掲げたレインに、ヤーンは不思議そうにたずねる。


「レイン、なんで腹に縫いつけてんだ?」


「子どもたちと遊ぶときにウケそうだろ?」


「あ、そっち?」


 横ではグラコスが針を指先に刺して悲鳴をあげた。


「ひー、アイリの刺繍ちゃんと見とけばよかった……あっ!」


 うっかりアイリの名を出してしまい、チラッと横目でカディアンを見れば、意外と器用にチクチク縫っている。


「メレッタからリザラの護符をもらったから、それを入れるつもりなんだ」


「ふん。おまえのはついでで、メレッタは私に護符をよこしたのだ!」


 ギッとカディアンをにらみつけたカーター副団長に、メロディが収納ポケットを縫いつけたローブを渡した。


「はい、カーター副団長。できましたよ」


「おお、すみませんな。ほぉっ、これが収納ポケットか!」


 渡されたローブをほくほくと受け取り、副団長は荷物から外したリザラの護符を眺めて目を潤ませ、だいじそうにポケットにしまった。

カーター副団長、あいかわらずです。

各書店ごとの購入特典は9種類!

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

紙の特典はなくなり次第終了ですm(_)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者にマシュマロを送る
☆☆『魔術師の杖 THE COMIC』☆☆
1巻4月14日(火)全国発売!

『魔術師の杖 THE COMIC』

コミックス1巻 購入者特典(9種類)

月曜更新ニコニコ漫画

pixivコミック

毎月1日更新!『MAGKAN』(先行配信)

『魔術師の杖 THE COMIC』
☆☆アプリ『コミマガ』でも配信中!☆☆
作画:ひつじロボ先生

小説版公式サイト
小説版『魔術師の杖』
☆☆NovelJam2025参加作品『7日目の希望』約8千字の短編☆☆
『七日目の希望』
☆☆電子書籍販売サイト(一部)☆☆
シーモア
Renta
Amazon
auブックパス
BookLive
BookWalker
ドコモdブック
DMMブックス
ebook
honto
紀伊國屋kinoppy
ソニーReaderStore
楽天
☆☆紙書籍販売サイト(全国の書店からも注文できます)☆☆
e-hon
紀伊國屋書店
書泉オンライン
Amazon

↓なろうで読める『魔術師の杖』シリーズ↓
魔術師の杖シリーズ
☆☆粉雪チャンネル(Youtube)☆☆
粉雪チャンネル
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ