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外伝P1-04-04 ドリームフィールド商会の危機

 順調であったドリームフィールド商会に、どうやら暗雲が漂いだ出したようです。



 本物語は当初本章で公開されていたサイドストーリーになります。

 外伝として、こちらに移動しました。


 本編 パラセル - 俺が異次元娘の身元引受人になった件

 https://ncode.syosetu.com/n5859gc/


 公開時にあった場所

 1-04-01 オブライアン に3話に分けて続く形で公開されていました。 その3です

 https://ncode.syosetu.com/n5859gc/16/



 ドリームフィールド商会も安泰で、オブライアンも会頭の地位を息子に譲ったころ、今まで薬師様もお世話になっていた王様が突然亡くなり、王子が新たな国王となりました。


 そのころ、オブライアンは会頭を引退し、薬師様にはこれまでのように薬草の入手はできなくなることを伝えました。

 さらに、エリクサーの原料となる特別な薬草の入手が難しいことは以前からお伝えしていたのですが、今後もたぶん絶望的である事はお話ししてあります。


 以前は野菜程度の価格で買えていた特別な薬草ですが、その後パラセルでも人気が出たのか、手に入る価格がどんどんと高騰するようになりました。

 本来パラセルの通常販売であれば高騰などありえないはずなのですが、通常に販売されるものの量が極端に減って入手ができなくなり、残る入手手段としてオークションから購入するしかない状態になっていました。

 オークションで購入できる値段は決まってはおらず、推測ですが、通常販売されている数少ない薬草を手に入れた人物が、それをオークションに転売をして、大きな利ザヤを稼いでいるようです。

 そのために、通常販売の商品としての入手は困難となっていました。

 最初はそれでもオークションで非常に高い程度で落札可能でしたが、気が付くと通常販売の薬草が完全に途絶えてしばらくたっていました。

 薬草自体は、オークションに出たことで、その競り上がる金額から、多くの注目を浴びてしまったようで、今や国家レベルの予算を組んでも競り落とせなくなってきています。

 実際、国の王が病気であれば、例え国家予算級の価格であっても競り落とそうとしてきます。

 しかし、元となる薬草の枯渇と共に、オークションで見かけることはできなくなり、すでに長き日が経ちました。


 以前からこの国にはオブライアンを通じて納められた薬草がそこそこの量あり、王宮にはそこから作られた何本ものエリクサーのストックがあるものと考えていました。

 オブライアンは、彼が特別な薬草から手を引くことで、しばらくはエリクサーは作る事が出来なくなるかもしれないが、そのうちにどこからか別の入手が可能になるだろうと思っていました。


 しかし、どうやら王様が亡くなった一つの要因だが、エリクサーさえあればどのような病気であっても治せると考えられていたため、王様自身がいつでもエリクサーが使えると思っていたようで、王医もエリクサーの対象である王様に対しては、治療が少しおざなりになっていたようです。


 そして、いよいよエリクサーを使う段階となった際、国が所有するはずのエリクサーが、それも王族のみが管理する王宮の保管庫に、なぜか1本も見つからず、そこから慌てて探し始めたのだが、それでは見つからず、その結果王様は亡くなってしまいました。


 既に床に臥せていた王様ですが、病床から内密に調査を行ったところ、なんとその犯人は王子でした。

 どうやら新しく国王となる前の王子が、国の物は王を継ぐ自分の物だと勝手に考えて、遊ぶ金欲しさにこっそりと他国へ売り払っていたようです。

 王様はそれを真に必要としたとき、初めてそれらが全て無くなっていることに気が付きました。


 国の財産である宝を勝手に売り払ってしまったバカな王子ですが、継承権を持った王子ですので、王様は自分の病気よりもその事実を隠し(かば)う事をしました。

 しかし、王の急な死亡になぜエリクサーが用いられなかったかの疑問を持ち、調べた結果により王子の不正に気が付いたものがいました。

 そして、国の財産であるエリクサーが失われた事実を公表し退位し、王の座を譲位せよと、戴冠したばかりの王を脅してきました。


 新たな王は、エリクサーの件を隠す為に、新たなエリクサーをこっそりと手に入れて、保管庫に戻そうとしました。

 もともと遊ぶ金程度の金額で売ったエリクサーなので、(そそのか)されて売った相手からであれば、すぐに買い戻せるなどと考えていました。

 そして糾弾してきた人間に対し、傀儡とされることを恐れた王は、近く王室に伝えられし方法でエリクサーの存在を公開の場で示すと、その場しのぎに言ってしまった。

 1本でもエリクサーを世間に見せれば、何とか事を抑えられると考え、王宮が持つお金があれば何でも手に入ると思っている、戯け(たわけ)な王は、その時はそう考えていたようです。


 ところが、内密の中、八方に手を回したのですが、自国の市場はおろか他国に至っても、金額にかかわらずエリクサーを手に入れることができません。

 焦った、新たな王は、前王様のエリクサーの入手経路をあらゆる手を使って、数いる王宮の薬師達に吐かせました。

 その結果、ある王宮付きの薬師が薬草を入手してきていることを突き止め、拷問の結果、ある商会の前会頭から入手したことを口を割らせました。


 入手経路が分かり、喜んだ王様は商会に注文を出しましたが、当然それは無理という回答が来ました。

 徐々に提示額を上げながら交渉するが、商会の無理という回答に対して、国家の物を勝手に売り払うような王であるので、商会が値段を吊り上げるために商品を出し渋っていると考えました。

 結局自分が出せる額を提示してもウンと言わない商会が悪者と考えた王は、現会頭を捕らえ幽閉し、入手経路を知る前会頭であるオブライアンに対し何とか入手しろと迫りました。

 そして、エリクサー公開に間に合わなければ、それはオブライアンが悪いので、全員処刑だと言い放ちました。

 また、このことは内密で、それが漏れた場合もやはり処刑だと言われてしまいました。


 このようなことを恐れて、スレイトによるパラセル取引はなるべく隠してきたオブライアンでしたが、今さらどうすることもできません。

 さらに、他人に聞くことは、王の不正を漏らす結果となり、やはりそれを行う事はできません。


 オブライアンは封印していたスレイトに、再び頼ることにしたようです。

 商会が、一から大きくなることの陰にパラセルがあったことは否めません。

 しかし、それがもとでこのような悲劇になってしまいました。

 自分の世界には存在しないはずのパラセルの商品によるトラブルが起きないようにと、少し前から会頭職すら息子に譲り、スレイトを封印したオブライアンでしたが、皮肉なことにやはり最後に頼るものもパラセルでした。


 そして、必死になったオブライアンがスレイトで調べた情報から、ヘルパーを通じて他のヘルパーとの情報を繋ぐ裏技を得ました。


 各スレイトやヘルパーは独立した存在であり、異なるスレイトやメンバーの情報を得る方法は本来ありません。

 しかし、パラセルではない空間に掲示板のような情報共有サイトみたいなものがあり、そこにアクセスできる専用の通信チャンネルが存在しました。

 さらに、そこにつなぐことができるコードをオブライアンは彼のヘルパーから手に入れました。

 彼のヘルパーは、本来そんな裏情報を知っているはずはないのですが、ヘルパーによると何故かヘルパーの記憶バンクにお告げとしてそのコードが突然書き込まれたと話されました。

 藁にもすがりたいオブライアンは、それを疑っている余裕は全くなく、それに飛びつきました。


 非常に怪しげなその掲示板でしたが、その中には驚くような内容がいろいろと書き込まれていました。

 どこまで本当の事かはわかりませんが、いや全て嘘なのかもしれませんが、とにかくたくさんの知らない情報であふれていました。


 書き込まれた掲示板の日付のような数字があるのですが、オブライアンの世界の日時ではなく、それですら太古の世界ではないかと思われる頃から続いています。

 また書き込んでいる人達は、すべてパラセルのスレイトを持ったメンバーのようであり、書いている内容からオブライアンの世界とは異なる世界の人と思われました。

 不思議なことに、言語が違うはずの世界の人が書いた掲示板の内容を、オブライアンは普通に読むことができました。


 その掲示板を書き込んでいる相手は誰だかはわかりませんが、それ以外に頼る情報もなく、必死で掲示板の検索を行い、関係ありそうな内容を片っ端から読み漁りました。

 そうしている中、薬草を求めているひとが多いことや、パラセル自体もそれを探している、そしてパラセルが薬草の調達のために新しいスレイトを交付するという情報を得ました。


 そして、これから発行されるスレイトの交付先であれば、そこの地で薬草を手に入れられる可能性があるのではないかという書き込みも見つけました。

 その話に希望を賭けることにしたのですが、そのスレイトの送り先という場所には、どうすれば行けるのかわかりませんでした。


 ヘルパーに聞いても、いくらお金が積んでもパラセルに生きた人間を売ることはできないとヘルパーに言われました。

 しかし、オブライアンは商会が持つ商品をすべて売り払い、必死でお金をかき集めました。

 チャンスはほとんどありません。

 お金は関係ないと聞かされても、もし可能性の中で、お金が必要となればいつでも使えるように準備しておいたのです。


 最初に薬草の噂を流していた人物が気になり、その人物をフィルター条件として検索すると、この人物はなぜか他では知られていないような事をいくつか書き込んでいます。

 そこで、彼の書き込みから、スレイトの裏技として、生きた人間を商品である奴隷とすることで、パラセルに売る方法がある事を知りました。

 また、同じ記述で、奴隷として打った人間を、新たなスレイトのマスターに届ける方法も併せて知りました。

 そして、彼は自らを奴隷という商品とし、薬草があるのではないかという世界へ行く事を覚悟しました。


 しかし書き込みを最後まで読むと、残念なことに奴隷を送り出すマスターは、自分の世界にいて商品のストレージへの収納やパラセル査定、そして売却の指令をヘルパーに行う必要があります。

 そのため、自分自信をスレイトに売ることはできないことを知りました。

 まあ、冷静に考えれば、パラセルへの販売についての操作は、マスター以外できないので、すぐに気が付きそうなことですが、焦っているオブライアンにはそんな簡単なことすら気が付いていませんでした。


 悩んだオブライアンは、娘であるサリーに、ここで初めてスレイトの事やパラセルの事を打ち明けることにしました。

 この事は今の会頭となった息子にすら話していませんが、その息子は既に王宮に幽閉されています。


 娘は驚きましたが、その話を受け入れ奴隷となり、薬草があると言われる地へ赴くことを覚悟しました。

 とにかく残された時間はあとわずかであり、たとえこの賭けが失敗しても、娘も含めた一家処刑ですので、最後の希望として娘に託すしかありません。


 たいした準備もしてあげられずに、どのような事が待ち受けているかわからない未開の地に娘を突き落とすオブライアンの気持ちはわかりません。

 娘に焼き印を入れさせるという、なんとも惨いことを、親であるオブライアンがどのような気持ちで見つめていたかはわかりません。

 多くの旅を一緒にして来た日々だけが、むなしく思い出されます。

 そして、奴隷の処置を行い、知っているパラセルの情報を話し、掲示板で知った方法をその日のうちに試す事となりました。


 せめて、この娘一人だけでも生き残ることができれば…… と、願うオブライアンの目の前から、娘はストレージに吸い込まれて、そしてストレージからも消え去りました。


 サリーの悲しい過去の話でした。

 閑話休題、話は現代へと戻ります。


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