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外伝P2-02-02 本物の結界

 これは、当初「パラセル - 俺が異次元娘の身元引受人になった件」の本編「2-02-02 本物の結界」として掲載していたものですが、説明が多いためにテクニカル外伝に移動しました。


 本編の文章をお読みになりたい場合は下記をご覧ください。


 パラセル - 俺が異次元娘の身元引受人になった件

 2-02-02 本物の結界

 https://ncode.syosetu.com/n5859gc/46/


「真希さん、これからあなたに話しておきたいことがあるのですが、それについては秘密にして欲しい」


「あらたまって、何ですか?」


「真希さんの担いでいる、その大きな荷物をここに置いてもらってもいいですか?

 これって、登る途中で使うものが入っていますか?」


「いや、途中で使うものはすべてポケットに入れてある」


「この荷物、俺が預かって持っていきますが、いいですか?」


「いや重いぞ、それ。

 そういえば、君たちの荷物はどこかにあるのか?

 1週間は長いぞ」


「それでは、さっき言った秘密を守ってください。

 私は奇術を使います。 手品、魔術、魔法……」


 と、言いつつマキの荷物を指差し、「ワン、ツー、スリー」 そのまま指をスーと天に向け、その間に真希の荷物をストレージに収納する。


 真希は俺の指につられて空を見上げるが、視線を戻すと自分の荷物がいきなり消えており、ひどく驚く。


「本当に、これは奇術なのか?

 信じられない。

 私の荷物が消えてしまった」


 大事な荷物がなくなってしまったので、かなり狼狽している。


「一度目を閉じてください」


 もう一度、「ワン、ツー、スリー」 と言って、指をパチンと鳴らし、荷物を出してあげる。


 真希は、目を開けると自分の荷物が無事であることがわかり、少し落ち着いたようである。


 もう一度目を閉じてもらって、再び「ワン、ツー、スリー」と言って指をパチンと鳴らし、荷物を収納する。


「これで、俺が持っていきます。

 いいですね?」


「お、おぅ」

 まだ真希は動揺して、荷物があった場所を見つめている。


 隣にいたサリーが、俺の話を聞いていて


「こちらの世界にも、魔法ってあるの?」って質問が。


 ここで君からの質問ですか?


「いや、これは奇術で、フェイクで、本当の魔術ではないさ」


 と説明する。

 すると俺とサリーの会話を聞いていたマキが質問を。


「彼女は日本語がわかるのか?

 外人だから話ができないものと思っていた。

 あと、彼女はどこの国の人、何語を使うのだ?

 あと、こちらの世界ってどういうことだ?」


「さっきもお願いしましたが、これから不思議なことがあるかもしれませんが、いま詳しくは勘弁ください」


「あ、いやこちらこそ悪かった。

 そういう約束だったな」


「すみません。

 では、身軽になったところで、出発しましょう」


 今いる広けた場所の山側には、1メートルくらいの2つの石があり、これも婆さんに言われた目印だ。

 俺達は石の間を通って、生い茂った蔦のような草をかき分け山の中に進んでいく。


 草で進みにくい中、3人も慌てて俺の後ろをついてくる。

 少し進み、木々にまとわりつくように高くまで茂った草のカーテンをようやく抜けた場所に出た。

 この周囲だけ、ぽっかりと草が生えていなくて、地面がそのまま見えている。


 すると、アーが突然目の前にポップアップしてきた。

 スレイトは消していたので、アーだけがポップアップしてきた。


『ゲートを通過しました』

 と、アーがいう。


 俺は、やばいと思って、後ろの真希を見るが、まだ真希は茂みから出てきてはいなかった。

 どうやら、アーを見られてはいないようだ。


「アー、そのゲートってなんだい?」


『それだよ』

 と言って、草が途切れた部分にある地面から顔を出した、小さいピラミッド状の石を指差す。


 確かに、手のひらに乗るくらいの大きさの、白っぽい艶のある石が、通ってきた場所の両側に1個ずつある。


『そのゲートは、目に見えないが空間マーカに固定しており、異なる次元とのリンクが行われています。

 許可されたものが近づくと、マーカ間のゲートが開き、2つの空間の出入りができます』


「これって、触っても大丈夫かな?」


『大丈夫です』


 石は、地中深くにまで入っているのか、強く押しても全く動かない。


「こんなところに、そのゲート? マーカ? を置いてあって、誰か持って行ったり、無くなったりはしないのか?」


『大丈夫です。

 ゲートは、マーカにつながっていますので、そこの位置から動かすことはできません。

 マーカは次元空間マーカ、略して空間マーカとか、単にマーカと呼ばれるもので、次元空間の座標に配置されたものです。


 マーカは次元座標を示すために次元空間に設置されているものであり、地面に埋まっているわけではありません。

 この地球という天体の次元に対して設定されていますので、この次元の地球の地表においては、そこに固定されているかのように見えます。

 設定されている座標を変更することはできますが、マーカを物理的な力で押して動かすという概念は、それにはありません』


「思いっきり力をかけても?」


『マーカは、設置された空間座標からは絶対に動きません。 そういう物です。

 マーカを押すと言うことはできませんが、仮に地球を動かせる力があり、地球にいる人がそのマーカを押せたとしたら、動くの地球のほうです。


 厳密にいうと、ゲートとマーカは地球に置かれたように見えていますが、それは単に座標の目印のようなものです。

 同じ空間座標に重なって存在しているだけで、実際にマーカが地球の空間にあるわけではありません』


「では、これは何のための物なのか?」


『それは、マーカが置かれた空間座標を得るための物です。

 このマーカには、地表の特定の位置を示すために、天体の中心座標を基準とした相対値が設定されています。


 1つの天体上から見た場合、マーカは同じ位置で固定されているように見えます。

 しかし、宇宙空間から見た場合、天体は空間内を常に回転、移動をしていますので、天体上のマーカの空間座標は常に変化しています。


 そこで、天体の現在の絶対座標に、マーカの相対座標を加えることで、マーカの現在の空間座標を得ることができます。

 これで、動いている天体上の、現在の位置というものを知る事ができるのです。

 ゲートはマーカとマーカの空間をリンクして接続するものです』


「うーん、難しいな。 宇宙的な物の考え方が必要なのか。

 地球は自転や公転により、さらに太陽系自体も宇宙空間を動いているので、俺やマーカは地球と共に高速に移動していると。

 でも、それがわかってどうなるんだ?」


『2つの空間を継なぐときに、相手がどこにいるか判らないと継なぐことができません。

 次元は常に空間内を移動していますので、現在の絶対座標がわかっている必要があります。

 2つの空間を継なぐ次元移動や空間接続は、このマーカの位置を基準に行われています』


『そして、その空間を接続する次元空間ゲート、通称ゲートがここに作られています。

 そのマーカによりペアリングされた2つの空間の接続点がここです。

 マーカやゲートは特殊なものではなく、パラセルで普通に購入できます。

 また、マーカを使う代表的な例として、一時的に2つのマーカを接続し、次元を転移させる転送石というモノもあります』


「転送石は聞いた事があるな。

 そうだ、以前イザベラとマリアが転移に使ったやつだね?」


『正解です。 あれは簡易型でしたが、ほぼ同じ機能です。

 ちょっと難しいので、お猿さん(しんじ)にも分かり易いように、転送するものをパソコンの中のファイルに置き換えて説明します。


 転移するモノをファイルとします。

 マーカはファイルの転送元と転送先のフォルダの場所を指定するリンクだと考えてください。

 そして転送石はファイルを移動するコマンドだと思ってください。


 転移石での移動は、異なるフォルダにデータを実際に転送して移動するのではありません。

 転移の際は、ファイルの管理リンクを書き換え、ファイルが置かれたフォルダの座標情報を変更することで、ファイルの属するフォルダを移動させるものです。

 情報の書き換えだけですので、巨大なデータファイルの移動であっても、一瞬で移動が終わります。


 実際にモノを動かすのではなく、 物体 (オブジェクト)の座標情報を書き換えてしまうと言う、いわばシステムコマンド的な技ですね。

 しかし、この方法は空間状態がいきなり変化するので、その空間に歪が出来てしまいます』


 いろいろ言っているが、どうせ俺はお猿さんなので、ちょっと難しそうな説明はスルーすることにした。


『これはゲートですので、マナクリスタルが使えなくなるまで利用できます』


「そんなものを、だれが買って、どうしてここにおいたの?

 あ、俺の婆さんか?」


『いえ、どうもこのゲートと空間は、起動してからの時間が地球で言うと1000年以上経過していますので、慎二のお婆さんでないと推測します」


「はっ! そんな昔からスレイトは使われていたのか?」


『私は信じ以外のマスターについては知りませんので、それについても知りません』



 アーに聞いたら説明してくれた。


「そうか、マーカなんてものがあったんだな」


『慎二も、それと同じ物を、持ってますよ』


「えっ! どういうこと?」


 確かにサリー達は次元を超えてきたが、次元をつなぐものなんて持ってたかな?

 あ、スレイトとストレージか!


 確かにストレージは、スレイトをゲートとして異なる次元空間をつないでいる。

 スレイトとパラセルは、互いの間に次元ゲートを開くことで物流を行っている。


『慎二の考えで正解です』


 スレイトは慎二に対して座標をロックしています。

 慎二やスレイトの次元は時空間内に存在するが、ストレージは時空間とは異なる空間に存在する。

 ストレージはゲートにより時空間から接続された時は、時空間側と同じ時間が経過する。

 ストレージでのゲート接続は瞬間的であり、そこで経過する時間は限りなくゼロに近いので、現実的にストレージ内の時間は停止している事になる。


『それと、マリアさんとイザベラさんが転移の際に使われたのは、ワンタイム型の簡易空間マーカです。

 ワンタイム型は標準で目に見え、起動するとその位置に固定され、その後マーカとして一度使用されると消滅します。

 通常マーカが目に見えると邪魔ですが、ワンタイムは見えないと存在が判らなくなるので、目に見えます』


 アーとの話に夢中になり、アーとずっと話していたが、一緒に真希がいたことに気が付く。

 はっ、と後ろを見るが、3人娘以外に真希がいなかった。


 俺がここについてから、しばらく時間がたっているはずだ。

 真希が迷った?!


 俺は、アーに消えていてもらうように話し、3人にもここで待つように指示し、急いで引き返した。


『ゲートを通過しました』

 戻ることに際してゲートを抜けるが、今度はアーはポップアップしないで声だけが俺に聞こえる。


 同じように草のカーテンを抜けると、真希が広場に座り込んでいた。


「あっ! よかった!

 どうやっても草の中を進めなくて、何度この中に入っても、ここに戻ってしまったよ。

 どうなってるんだ、ここは!

 なかなか戻って来てくれないし、私一人になっちゃって、すごく心配してたんだぞ!」


「じゃあ俺の後ろについて、もう一度この先に入ってくれ」


「わかった。 すぐ後ろをついていくからお願いする」


 俺は、そうして蔦のような草が生い茂るカーテンの間を通り抜けていき、サリー達の元に出た。


「あ、お帰り! 真希さんはいた?」


「いたいた、もう来ると思うが…… あれ? やっぱり来ないぞ!

 困ったな。 本当に結界でもあるのかな? でも皆はここまで来てるしな?」


「あ、今度はサリーが行ってみるね!」


 俺が止める間もなく、サリーが草のカーテンに突っ込んでいった。

 しばらくすると、サリーと手をつないだ真希がやってきた。


「慎二、真希さんはやっぱり途中で戻っちゃったみたいだよ。

 私が手をつないで来たら入れたみたい」


 どうやらゲートは普通には通れないようだ。

 ただ、サリーと手をつなぐとゲートは通れたようで、サリーが行ってくれなかったら気が付かなかった。

 女性と手を取り合って歩くことなんて事は、俺では考えられないものね。


 ひょっとすると、マスターかメンバーと接触している場合、通れるのかな?


 多分、ここがゲートなのであとはもう大丈夫だと思うが、殿も気にしながら進むことにした。

 また草をかき分けてしばらく進むと、いきなり目前が開け婆さんの畑のあった場所に到着した。


 高い草も生えているが、今通ってきた場所よりは全体が開けて見える。

 以前来たときはもっと開けた感じだったので、きっと婆さんが草を刈っていたようだ。


 続いて3人も順にやってきた 真希も無事についてきている。


 マリアとイザベラの足も心配なので、一度休憩しよう。


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