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外伝P1-04-03 ドリームフィールド商会の躍進


 サリーのお父さん、商売のきっかけをつかんだようです。

 大きな商会へと発展できるといいですね。



 本物語は当初本章で公開されていたサイドストーリーになります。

 外伝として、こちらに移動しました。


 本編 パラセル - 俺が異次元娘の身元引受人になった件

 https://ncode.syosetu.com/n5859gc/


 公開時にあった場所

 1-04-01 オブライアン に3話に分けて続く形で公開されていました。 その2です

 https://ncode.syosetu.com/n5859gc/16/



 そうしたころ、珍しくお酒の香りを漂わせ、赤ら顔の薬師様が夕方ふらっと街はずれの私の店にお見えなりました。

 手にもたれた紙をおもむろに広げ、そこに書かれた絵を見せられ、これこれこういった特徴の薬草が手に入らないか? という相談を受けました。


 あとで聞いた話ですが、その日王宮で薬師の会合があり、薬草の調達が厳しい状況の時の話や、幻の薬草の話が話題になったそうです。

 薬師様は約束を守っていただき、私からの薬草調達については、その後も秘密にしていただけていたようです。

 その事もあって、その後のお酒を召し上がっての食事会で、秘密の薬草入手ルートを持つ薬師様と、他の薬師や薬商会との間で確執があったようです。


 薬師様がお帰りになると、私は早速スレイトで検索を行ってみました。

 しかしそれらしい薬草は見つけることができず、翌日薬師様のお屋敷に出向き、残念ながら見つけられなかったことをお知らせしました。


 すると、薬師様は笑いながら、


「そうか、やはり天下のドリームフィールドでも無理だったか」


 とおっしゃり、それは以前は手に入っていたそうですが、それがどの薬師もが入手困難で、今では幻の薬草と呼ばれているとのお話を聞かされました。

 その後薬師様は、探して貰った礼だと言って、薬師様の紋章が入った布包みを差しだされ、私に渡されました。


 包まれた中を見ると、金貨が入っていました。


「ただ探しただけで、しかもまだ見つけられていませんので、これはいただけません」


 と、お返ししようとしたのですが、薬師様は笑って押し戻され、


「今後も期待してるよ」


 と、おっしゃられました。

 そして、店が困窮していた私は、ありがたくそれを受け取ってしまったのです。

 そう、それが始まりでした。


 スレイトで検索するだけなので、せめて受け取ったお金の分の仕事はしたいと考え、店も暇であったので、私はその薬草の検索を続けていました。



 薬師様が幻の薬草などとおっしゃられていたので、さぞ高価で品薄な品であると考え、もし見つけたらすぐに調達ができるよう、頂いた金貨と手持ちの仕入れ資金を全てパラスとしてチャージしました。

 仕入れ資金をすべてチャージし封印することは、新たな仕入れにお金を廻すことができないことであり、商会は更に資金的悪化の一途をたどりました。


 金貨をパラスに替えようとしたときに判ったのですが、金貨はパラセルでの査定がとても低いようです。

 査定価格を見ると、宝石類はパラセルでも人気が有るようです。

 私は、金貨をパラセルに販売するのではなく、いただいた金貨で王都の質のよい宝石を買い、それをパラセルで販売する事で大きなパラスを得ることができました。


 しかし、そんなある日の事、それまで探し続けてきた条件に合う薬草がパラセルで販売されていることに、偶然気が付きました。

 仕入れのお金がほとんど残ってないので、以前のように安い野菜をパラセルで仕入れて売ろうかと思い、たまたま安い植物を眺めていた時、たまたまそれが目に入りました。


 薬草はかなり高額な商品であると思い、金額にフィルターをかけて、安い商品は除いて探していました。

 安い金額の商品は無限にあるため、すべての商品を見ることは到底無理だからです。

 それは、安い野菜にすら埋もれるほど、薬草としてはあまりにも安いものでした。


 商品入荷中のマークが付き、それは5株が売りに出されていました。

 特徴は似ているが、それが幻の品であるかは、にわかには信じられなかったので、例え違うではあろうと思ったのですが、話のネタにでもと、それを一株購入しました。

 普通にお金があれば、5株全部買ったのでしょうが、封印したパラスを使えない私は、それすら考えるほど困窮していました。


 購入したそれは、少し長い根が付いた黄色っぽい葉っぱの乾燥した草で、手の大きさぐらいの長さで何回か折りたたまれ、その中央を見たことがない薄茶色の薄い紙で巻締められていました。

 その巻きしめた草の繊維が入った封緘紙には、見たことがない模様の赤い色のスタンプが押されていました。


 私は、すぐにそれを薬師様にお届けしました。

 残念ながら、その時薬師様はお出かけ中だったので、屋敷の使用人に渡し、『ひょっとすると薬師様の探しものかもしれない』と言付けをして私は店に帰ったのです。


 その夜遅くの事でした。

 すでに閉まった商会の扉を激しく叩く人がいます。


 扉を少し開けると、思ったとおり薬師様で、そのまま飛び込んできたかと思うと、真っ赤な顔をして、私の胸ぐらをつかみながら大きな声で叫ぶように、


「貴様、どこでこの薬草を手に入れた!」


 普段温厚な薬師様からはとても想像がつかない、とても荒れたお言葉です。


 どうやら、これがお目当ての薬草で間違いなかったようです。


 これで金貨の礼を返せて、普通の生活に戻れるとホッとしたのですが、薬師様は、


「今からポーションを作るから、貴様もいっしょに来い」


 そう言うと有無を言わさず、外で待たせていた馬車に私も押し込まれ、馬車は駆け出しました。


 薬師様のお宅に滞在中、私は適当に休ませてもらっていたのですが、薬師様は飲まず食わずの徹夜で作業をされていました。

 そして、拉致?され3回目の朝、薬師工房には小さな薬瓶に入った一本の液体が置かれていました。


 もしこれが本物であれば、超高価な上級ポーションさえ遥かに凌駕する、世界伝説級の薬です。

 王宮には、それが本物であるかを調べる方法が伝わっているらしく、薬師様はできた薬を持ち馬車で王宮へ向かわれたので、残された私はようやく解放されたのでした。


 私が店に戻ってきたのは、結局3日後の昼過ぎでした。

 戸締まりもできずに連れ出され、心配であった店は、薬師様のお屋敷の方がずっと留守番をいただいていたとのことで、私の帰還と交代でお戻りになりました。



 そして、薬師様が作られたその薬は、王室に伝えられし方法により、確かにエリクサーと呼ばれる伝説級の超上級薬で間違いないことが確認されました。

 すぐに国王自らにより、わが国でエリクサーが発見されたことを、国内外に高々と宣言されました。

 そして、王室主催の国を挙げてのエリクサー祭りが夜通し行われ、多くの酒や食べ物が王都の広場で市民にも無償で振る舞われました。


 その宣言を受けてしばらくすると、他国から王宮付きの薬師達が我が王宮に使わされ、各国がそれぞれ秘匿する方法で、それが確かにエリクサーであることが確認されたので、世界的な騒ぎとなっていきました。

 かつてエリクサーは存在したと言い伝えがあったのですが、世界的にまったく存在しない時間が長らく続くことで、人々からは単なる夢物語だったのではないかとさえ言われていたのです。



 この快挙により、薬師様は正式に王宮付きの薬師となりました。

 薬師様は王様に直接お願いをしたうえで、その薬草の入手経路の秘密を打ち明け、薬草の入手の件は王様預かりの極秘事項としていただきました。

 そして王様に呼び出された私に、王として秘密を守ることを直々に伝えられ、私は王室との取引ができる御用商人となりました。


 その時、褒美として王様からということは内密にして、王都の中央に新たな商会の館をいただき、御用商人の証拠である王家の紋章も店に飾られました。


 この王国最大の後ろ盾を得たことで、ドリームフィールド商会は順調に繁盛し、人も増え、大切な家族もできました。

 ただスレイト取引については、相変わらず目立たぬように慎重に扱っています。


 商売において、常に慎重さを保つことは大事ですね。

 特に仕入れルートは大事ですね。


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