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冒険、始めちゃいました。  作者: カイナベル
第一章 始まりの町編
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第八話 初依頼、完了しました。

 集会場から出た二人はとりあえずどこへ向かうかの方針を決める。


「そういえば、ドクナオタケってこの近くだとどこに生えてるんだ?」

 

「そこらの森の中にたくさん生えてますよ。一番近くの森にも生えてますからとりあえずそこに行きましょうか」

 

「んじゃレッツゴーだ」

 

 歩き始めてしまってすぐに二人の間に静寂が訪れる。それもそうだ。この二人は出会いは衝撃だったとはいえほぼ初対面に近い。共通の話題もなく昨日何をしていたかを話すことのできない二人では会話などどうしようもないだろう。しかし、それを許容するのとはまた別の話である。沈黙を嫌ったユウキは拙い話題で場を持たせようとする。

 

「そういえば今回の報酬金額はいくらだっけか?」

 

「確か三千フェズだったはずです。ギルドからの依頼ということでやはり報酬は高いですね」

 

「やっぱり俺たちにとって嬉しい内容だな。キノコ採ってくるだけで報酬がたくさん、っていうのは」

 

「そうですね。難しいわりに報酬が少ないものもあると風の噂でを聞きましたから今回のはラッキーですね」

 

「こんなんばっかりだったらいいんだけどなあ」

 

「そうですねえ」

 

 話しの流れからつい将来的な話をしてしまう。期待もあるが、不安もある。乗り越えられる程度の不安が続くことを切に願うのだった。 

 

 適当な会話をしながら道を歩くこと一時間ほど。以前ユウキが死闘を繰り広げた森へとたどり着いた。その道中にはゴブリンの死体もいくつか転がっており、それを見るとあの時の戦いが目に浮かんでくる。それとは関係なく死体は二、三体ほどなかったため、残りはどこ行ったのだろうかと思ったが、現状特に重要でもないため深く考えることなくスルーする。

 

「やっと着いたか。しっかし、やっぱりここまで遠いな」

 

「まあ時間がかかったのはゆっくり歩いていたからですけどね。もっと速く歩けばその分だけ時間短縮できますよ」

 

 ユウキが徒歩で蓄積された疲労を吐き出すように愚痴を口に出すと、ユーナはそれをフォローする。木々がアーチを形作り、さながら門のように構えている場所から森の中に入っていくと、ユーナがいきなり声を張り上げる。

 

「あっ、早速一つ見つけましたよ!」

 

 ユーナが指し示した木の根元にはやはり毒々しい色をしたキノコがあった。実物で見るとよりその印象は強くなり、心なしか寄り添うように立っている木が元気がないように見えた。

 

「やっぱり見つけやすい色してんな」


 ユウキはポーチの中から布を取り出すとそれ越しでドクナオタケを掴んで引き抜く。そしてそれを近くで目に焼き付けるようにまじまじと見つめた。

 

「そうですね。あと四個、二手に分かれて早く見つけちゃいましょう」

 

「そうだな。じゃあ俺はこっちで」

 

 そういうとユウキは右を指さす。

 

「じゃあ私はその逆ですね。終わったまたここに」

 

 ユーナはユウキとは逆の方を指さす。

 

「それじゃあまた…と言いたいところだが、一応ここになんか印付けといたほうがいいか」

 

 もしも迷ってしまった時のための保険として、元気のない(ように見える)木に剣で大きくバツ印の切れ込みを入れる。

 

「そんじゃあこれが目印だな」

 

「了解です。ご武運を」

 

 二人は背を向け、二手に別れてキノコを探し出した。別れた後、ユウキは一つ目と二つ目を森に入ってすぐに発見しウキウキでキノコをリュックの中に放り込む。早くも自分の分を終わらせたユウキは待ち合わせ場所に戻るがユーナがまだ戻ってきていない。ユウキが明らかに早く戻ってきただけなのだが、上機嫌のユウキには時間が遅く感じられてしまい、退屈さを感じてしまう。楽しい時に時間が速く過ぎる。あれと似たようなものである。話を本筋に戻して上機嫌のユウキは、合流ついでに保険としてもう一つ探しておくことにした。ユーナが進んでいった方に向かって歩き始め、地面を物色し始める。

 

 がここからが長かった。保険としての三つ目がなかなか見つからず、かれこれ二十分は森の中をさまようこととなってしまう。

 

(なんかめんどくさくなってきたな)

 

 予想外に時間がかかってしまい諦めて元の場所に戻ろうかと一瞬考えるユウキ。しかし、なぜか意固地になってしまい、キノコの捜索を続けてしまう。やめておけ、とユウキの中の天使がささやくが、そんな小さな声はユウキの意識には届かなかった。

 

 

 

 

 

 しかし、ささやき以上の大きな音はユウキの意識に介入することに成功した。動きを止め、耳を澄ませると藪が揺れる音がする。ユウキの頭は音を捕らえた一瞬のうちにフル回転し、今起こりうる可能性を考えた。考えられる可能性としては、一つは野生動物、もう一つはゴブリンなどの敵の類。前者に関しては問題ない。刺激を与えないようにしてやれば、特に被害もなく対処できる。しかし、後者であれば大問題である。もし、ゴブリンと会敵し負傷を避けようと思ったら、不意打ち以外の選択肢はなくなる。まともにやりあっても一人ではどうしようもない。もし今近づいているのがゴブリンならばやるしかないと思った。ユウキはすぐに気持ちを切り替え、藪の死角になる木の陰に隠れる。そして背中に掛けた剣を引き抜く。


 一度大きく深呼吸をし気持ちを落ち着かせると、動きの正体の動向を観察するため、首を出し揺れる藪の様子を見る。耳を澄ませなくてもわかるほど徐々に音が近くなってくる。草むらから顔を出した瞬間一、二匹は潰す、そう決めて剣をギュッと握りなおす。最後の確認としてもう一度見直すと何かが草藪の中から顔をのぞかせた。その瞬間、ユウキは木の陰から飛び出しその命を刈り取るために雄叫びを剣を振り下ろした。

 

「うおおおおお、ぉぉおおう!?」「あああああああ!」

 

 ユウキの上げた雄叫びは即座に気の抜けた間抜けな声へと変化し、藪から飛び出したナニカは絶叫する。自身の持てる全ての力を剣の進む方向とは逆向きに込め、振り下ろした剣の運動を歓声に逆らい急停止させる。藪から飛び出したナニかは大きく乱れた呼吸をしている。

 

「何でユウキさんがいるんですか!?」

 

 腰の二本の剣に手をかけ大きく呼吸を乱していたユーナは剣から手を離しながら大声で詰め寄る。

 

「それはこっちのセリフだ!何であんたが藪の中から飛びだしてくるんだよ!」

 

 止めた剣を気怠そうに下ろしたユウキは、彼女の問いかけに答えることなく逆に問い掛ける。。

 

「わ、私はただキノコを探していただけですけど……」

 

「俺は草藪が揺れたから敵だと思って……」

 

「「………………」」

 

 つまりこれらの流れ、ほぼ全面的にユウキが悪い。合流地点から離れ、あまつさえ真面目にキノコを探していたユーナに切りかかるという、常識的に非道な行いをして見せた。ユウキは善意で行っていたとはいえこれはよくない。

 

「「………………」」 

 

 無言の状況が続く。しかし、ユウキの頭脳はフル稼働し、今どうするべきかを考え続けていた。こんなものを考えるのに本来五秒もいらないのだが、微妙に混乱していたユウキの脳はそれを導き出すのに三十秒近く有した。そしてたっぷりと考え導き出した結論は

 

「すんませんっしたぁー!」

 

 最上級の謝罪を示す動作、土下座であった。














「いや、本当に申し訳ありませんでした……」


「気にしないでください。ユウキさんも悪気があってやったわけじゃないんですから……」


 何とかしてユウキの頭を上げさせたユーナ。彼も悪気があってやったわけではないことがわかるため責められない。もともと責める気はないのだが、それ以上にあまり長い時間謝罪されるのも微妙に気分が悪かった。


 ユウキの謝罪の何とか止めさせたユーナは合流ついでに現状報告をする。


「ユウキさんはどのくらい集まりましたか?」


「俺は二つです。最初の合わせて三つ持っています」


「ごめんなさい。私はまだ一つです」


「いえ、どれもこれも私が切りかかってしまったせいです」


「……だからあまり引きずらないで下さい。あとその敬語もできればやめてほしいな、と」


 彼女らに合ってすぐに砕けた口調になったユウキの口調が固くなっており、どれほど申し訳なく思っているかがわかるだろう。しかし、彼女にとっては微妙に居心地が悪かった。


「わかりました。……わかった」


 ユウキはそれに了承するが無意識のうちに敬語になってしまう。ユーナのじろりとした視線で意識的にいつもの口調に戻すと脱線した話を元に戻す。


「まあ、サクッと見つけることが出来たのは単に俺の運が良かっただけだろ。あと一つでいいし二人で探そう。一緒にな」


 最後の一文を強調していったユウキにユーナは苦笑いを浮かべる。よほど気にしているのだろう。ふとユーナが視線を落とすと少し離れたところに目的のキノコが生えていた。最後の一つを見つけたユーナはユウキの隣をすり抜けてそのキノコを収穫した。


「それで五個そろったな」

 

「そうですね。長居する理由もないですし帰りましょうか」

 

 二人は森から出て、再び街を目指し歩き始める。行きの道中で考えられる話は出し尽くしてしまい、二人の間に沈黙が流れる。手持ち無沙汰になってしまったユウキは何となくきょろきょろと周囲を見回し景色を楽しんでいた。その最中ふとユーナの胸元に視線を落とすとそこには首からつられた変わった形のペンダントがあり、これ幸いとそれを話しの種にする。

 

「その胸のペンダント、結構かっこいいな。街で売ってたら思わず買っちまいそうだ」

 

 ユーナが胸につけていたペンダントは丸と十字が重なるようにして構成された。白銀が太陽光を反射し鈍く光っている。ペンダントを指しながら告げるとユーナはそのペンダントを手で弄びながら話し始める。

 

「ありがとうございます。これ、私が生まれてからすぐにもらったものなんですよ。私はあんまり好きじゃないんですけどね……」

 

「俺もおしゃれ程度にそういうの一つくらい買ってみてもいいかもしれんなあ」

 

「似合うと思いますよ」

 

 こうして世間話をしていると街が見え始めた。街に入る前に自分の持っていたリュックの中身を確認する。中にはしっかりとキノコが三個入っており、形が崩れている様子もない。街に入るとそのままの足で集会場に向かう。

 

 集会場に入ると、サリーナは他の冒険者の応対をしながらも視線をちらりとユウキ達の方に向ける。人だかりが消えるのを待ってユウキ達はサリーナのもとに向かう。カウンターにドクナオタケ五つを置き、初めての依頼完了の報告をする。サリーナはカウンターに置かれたドクナオタケを拾い上げて、奥に持っていく。彼女が戻ってくるとその胸元には袋を二つ抱えられていた。

 

「はい、これで依頼完了ですね。報奨金の三千フェズですね」

 

 金属音を響かせながら、袋がカウンターに置かれる。中身を確認すると中には銀貨が六枚。受け取ってポーチの中にしまっていると、依頼終了の一連の流れを終えたサリーナが顔を上げ、口を開く。

 

「他に何か回収していませんか?」

 

「他って?」

 

「依頼中に依頼品以外にも何か回収していればギルドが買取を行うことができます。売る、売らないは任意ですが。でもほどほどにしてくださいね。生態系に影響が出たりしては困りますから」

 

「もちろんだ。あと今回は特になしだ」

 

 今回彼らはキノコだけを取ってきたため本当に何も取ってきていない。特に換金するものもなく依頼を達成した二人はサリーナのカウンターから離れ、今後の予定を立てる。


「依頼も終わりましたし、宿に戻りますか?」

 

 ユウキが銀貨をしまい終わるのを見計らってユーナはユウキに問いかける。

 

「そうしよう。ついでに昼飯を食おう。詫びついでにおごらせてくれ」

 

「……わかりました。じゃあ宿の近くによさそうなお店があったのでそこにしましょうか」

 

 二人は集会場から出て宿屋の近くにある食堂へ向かう。ユーナが見つけたというその店の話を聞くと肉、野菜、それと米が一つの皿に乗っているワンプレートタイプ、というのがその店のスタイルで、食べ応えがあり金額が安いため、人気が高いらしい。空腹のユウキには食をそそる話はさらに空腹を助長させ毒にしかならない。店に着き、中に入ると評判通り、大盛況でほとんど席が空いていない。

 

 空いている席についてメニューから適当に一品頼み、ユーナは一品と追加を一品注文する。十五分ほどで来た皿の上にはサラダ、鶏肉、パンが載っている。ユウキは手を合わせて会釈をした後、鶏肉を一口分に切り分け口に入れると、味はしっかりしており触感は歯を弾くような歯ごたえながら、柔らかく、ユウキの食欲を促進する。パンはユウキにとってフランスパンに近い触感で、鶏肉とよく合う。仲良く食材たちが胃袋の中に納まったところで、顔を上げたユウキが見たのは、ユウキよりも先に食べ終え、飲み物を飲むユーナの姿であった。混んでいる店内で長居するのを避けるため二人は、さっさと立ち上がり支払いを済ませる。二人で千フェズは噂に違わぬ安さであった。

 

 店を出て宿を目指して歩く道中ではユーナが先ほどの店の評価を熱弁していた。何かに取り憑かれたように話し続けるその迫力は形容しがたいものがありユウキも口を挟めずただ黙って聞き続けていた。意外に健啖家なのかもしれない、などと考えながら歩いているとすぐに宿に着く。二人は宿に着くとすぐに分かれ、ユウキはすぐに部屋にこもった。部屋のベットに寝転がると思い出したようにリュックからあるものを取り出す。それは買ったはよかったが、まだ読むことのできていなかった冒険者マガジンだった。

 

 寝転がったままパラパラと雑誌を読み始める。その内容は面白く、どうしてやれば読者の興味を引くことが出来るかが分かっているかのような書き方で、ユウキは眼を離すことができなかった。中でも話題の冒険者紹介の記事は自分の目指すべきところが分かり、これから自分がどうすればいいかのモチベーションの向上につながっていた。現にユウキのテンションもそこで最高潮に達していた。

 

 そしてルーキー紹介の記事に書かれた内容を見て、ユウキは最高記録を更新した。そこに書かれていたのはユウキとほぼ同じの年齢の男、それにエルフの少女であった。女の方の情報は魔法を使うと書かれていたが、その前に、希少な、と書かれており、ユウキは首を傾げた。後に知ることになるのだが、魔法という技術は主にエルフのみに伝わる技術であり、エルフの魔法を使うどころか、知っている人物すらいない。魔法というものはこの世界でかなり希少なもので、使えるものは引く手数多だということを。

 

 しかし、ユウキが問題にしたいのはそちらではなく男の方だった。記事には、その男の武装が書かれており、武器は二本の細身の大砲である。大砲を武器として使っているという記事を見た瞬間、ユウキはこの男が自分と同じ転生者であると確信した。実際何の根拠もない勘によるものであったが、この情報はユウキに言葉では表せない安心感をもたらした。この世界に転生者がユウキ以外にもいるそれが分かっただけでもユウキはかなり安心した。元の世界の話ができる、と。

 

 さすがにあちらの世界のネタをこちらで言っても伝わることはない。しかし、あちらの人間がいるのであれば少しはあっちの話しができるかもしれないとユウキは安堵した。この雑誌によると、男の方はBランク、女の子の方はCランク。ユウキとは天と地の差がある。それを考えるとじっとしていられなくなり、その差を少しでも埋めようと雑誌を閉じると宿を飛び出し街の中を走り始めた。

 

 

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 死にそうになった森に来てるのに、あえて別行動でキノコを探すとうい行為に違和感しかないです。 せっかく二人居るのだから索敵しながら採取するという考えに至らない事。 だったらはじめからソ…
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