フミ
車の中でクスクス笑いが堪えられない。
「フミ?」
父さんがミラー越しに問いかけてくる。
「なんでもなーい。ユウに姉ちゃんの誘導頼んだんだよ」
「一緒に来れば良かったのに」
母さんが少し不満そうだ。
まぁ、姉ちゃんは方向音痴だから慣れない道を外すとダメなんだよな。
でも、だからこそ、ユウに任せたんだ。
姉ちゃんにとってユウはもう一人お姉さんぶれる相手。
ユウにとっては惚れた相手。
ずっと横で見てたんだ。わからないはずがないだろう。
転んだユウじゃなくて姉ちゃんが泣いた。「痛そう」と泣く姉ちゃんを泣き止ませれなくて三人で大泣きしたあの出会い。
あの日からユウは姉ちゃんを見てる。
いくらユウが親友でも姉ちゃんを困らせるだけなら排除する。
でも、ユウなら、ユウだったらいいと思ったんだ。
だから、お膳立てしたデートだ。
というか、ちゃんとデートにしろって思う。
今頃、告白しているか、しそびれて、もどかしく過ごしているか、どっちだろう?
ああ。もう、男ならキメとけよ。
「え?」
窓のむこうになにか影が迫っていた。
試合会場になかなか辿りつかない。
ユウと姉ちゃんはもう辿りついたろうか?
『フミ……』
ユウの声?
『セキは俺が守るから……』
ユウ?
『……ごめん、な。フミ……』
ごめん?
ユウ?
なんであやまるんだ?
勝手にお膳立てしただけだろ?
お前が姉ちゃんを守るのは姉ちゃんが好きだからだろ?
わかんねぇよ。
泣くなよ。
誰にもどうしようもなかったんだ。
事故だったんだ?
事故?
ああ。そうだ。
試合会場につかないんだ。
今日の試合は引退試合で。
同窓会に顔を出すって言う姉ちゃんに無理に応援に来てって駄々こねてユウに迎えに行かせて。
最後の試合だから、すっごく楽しみなんだ。
父さんだって時間に都合をつけて応援に来てくれた。
カッコいいとこ見せなくっちゃ。
盛り上がれば、ユウと姉ちゃんの距離だってさ。
試合を見るべきか姉ちゃんとユウの様子を見るべきか悩む父さんも面白そうだし。
そこも含めて姉貴と兄貴に報告すんのも楽しみだ。
……それなのに。
なかなか、試合会場につかないんだ。
「父さん、母さん、まだかなぁ」




