パワーアップできます
「落し物を見つけたら速く返してあげないと逆切れされるのです。私は今からこれを届けに行かないと」
自称神様は呪いのアイテムと化した落し物の石板をもってそう言った。
「落し物を速く届けてやらないと逆切れするって……それはどこの野蛮人だ? 」
そのアイテムはもう普通のアイテムじゃないんだ。正直に話そうと思ったが、神様の言ってることがあまりにおかしかったので思わず突っ込んでいた。
「実はこの石板はうちの寺に来たものに無償で与えている物なのです。1回くるごとにポイントも付きます。ポイントを掘るために一時預かるのですが……私忘れたのではないかと逆切れするものもいるのです」
「えーと……ポイントカード的な物なのか? 」
「そう思ってもらえれば間違いありません」
間違いないんかい!
神様が本当にいる教会……というか寺がやるにしてややることがせこいんじゃなかろうか?
「サトミさんはもしかして、我々神様がパワーアップする方法をご存じではないのですか? 」
「パワーアップ? 」
そういえばまだまともに身分証明証を見ていたころ、俺のレベルの上りが悪いなと思ってぶーたれていたことがあったのを思い出す。あんまりレベルが上がらんのでいまはもうほとんど見てないけど。
「私たち神様は信仰によって力を増すことができるのです」
自称神様は信仰を得ることによりポイントがもらえてそのポイントを自分のステータスにふることにちょって強さが増したりスキルを得たりすることができるのだと教えてくれた……て、ちょっと待てよ。
「ポイント振り分けって何? そんなポイント俺は持ってないんだけど? 」
「はぁ……なるほど。それでですか」
自称神様は納得したように意味ありげに俺を見た。
「サトミさんの能力上昇のポイントは全く減っていません。しかもかなりの値を使わないでもっている状態です。そのポイントを能力に変えることができればかなりパワーアップできますよ」
できますよ……て、いきなりそんなゲームチックなことを言われても反応に困る。
「何を言ってるんですか? これはゲームの中ですよ? 」
「ええっ? 」
俺はこの世界に来て生前のトラウマやらなんやらを見つめなおしていたりしたんだけど……この世界がもしゲームの中だとしたらとんだ勘違いやろうという事になってしまう。
「私はゲームをやっててこの世界に召喚されました。なのでこの世界はゲームの中だと思っています。だから一刻も早くここから出なくてはならない。元の自分の肉体がどうなっているか心配でならない。この世界は居心地がいいですが、都合のいい夢を見ながら死ぬなんて御免ですからね」
「それって仮想現実に意識だけはいってプレイするようなゲームのことか? 」
俺が元いた世界ではそんな高度なゲームはなかった。俺が亡くなってからできたのか? だったらこの自称神様と俺とは子供と孫くらい年が離れていることになる。
「いいえ、違いますよ。ただのゲームです」
しかし神様はそう言って首を振った。
彼からなぜこの世界をゲームの中だと思っているのか聞いたところ、ゲームの内容とこの世界が酷似していたからだという。それなら逆にこの世界を知っている人物がゲームを作った可能性もある。
この世界がゲームかどうかは何の裏付けもないらしかった。
「サトミさんは何も知らないようですね。ゆっくり説明したい所ですが、時間がありません。続きは帰ってからという事で」
そう言うと寺から出ようとする。
「ちょっと待った! そのアイテムなんだが実は……」
俺は今度こそ落し物の石板が呪いのアイテムに変わっていることを伝えた。
「なら新しいのを持っていきましょう」
神様はあっさり言うと信者に配る新しい石板を大量に持ってきて見せてくれた。なんかもう石板のありがたみも何もない。
「それから一つ言い忘れましたが、まもなくここに天使がやってくると思いますが決して中に入れてはなりませんよ。面倒なことになるでしょう」
最後にそう言い残すと、今度こそ本当に落し物を届けに行ってしまった。
……
トントン
障子をたたく音が聞こえる。
「任せて! こうするんだよね? 」
ハチは障子に穴をあけて外を確認した。
変なことを教えたガルムはもう間違いに気が付いたようだったが、ハチには説明しなかったらしい。
外には数人の人間がいた。旅の途中らしくとても疲弊しているらしい。彼らは止まる場所を求めて教会に立ち寄ったのだという。
「こいつらが天使ってことか」
俺はその一団の中に……というかリーダー格にソロネがいるのを確認してそう悟った。
ソロネは世界改変前に俺達を襲った天使だ。男か女かわからないあの顔。間違いない。
「俺あいつと戦ったことがあるよ? 」
ハチも別の天使を指差して言った。
神様の言うとおり天使達が訪ねてきたようだ。




