神様の遺体
「どなたかおりませんか? 」
障子越し、に天使達が話しかけてくる。
雰囲気からいって俺たちに気が付いてきたわけではないっぽい?
自称神様はハチに気が付いてやってくると言っていたが、どうもそんな風ではないようだ。
ならなぜ人間の姿をしているのだろう?
「オリンポス人によって解体された神様の身体を回収してまいりました。もう魂はこの地にはありませんが、身体に別の魂が宿ることがあるやもしれません……」
天使達の話を総合すると、自称神様はその「回収された神様の身体に別の魂が宿った存在」であり、今回回収された新しい体もそうなったら面倒を見てほしいという目的でやって来たようだった。
「天使は行動が決まってる……ゲームでいうとNPCみたいなもんなんだよな」
天使って神様の定めた未来を守る特別な存在なんだな……と思っていたけど、自称神様から「この世界はゲームの中尾世界説」を聞いて改めて考えてみると、そんなありがたみがなくなって感じてくる。
この世界がゲームの中というのはあまり信じれないけど、自称神様が言う「ポイントがたまっている。ポイントを使えば強くなれる」というのには興味があった。本当にそのポイントで強くなれるのか……でもそんなことで強くなったらこの世界を現実として受け入れられなくなるのではないのか?
俺はハルやハチのことを愛着を持って接している。それは相手が意思を持つ存在だからだ。意思がない存在に愛着は持てない。アニメやドラマの登場人物のように作られた存在なら心を許すことはできない。アニメやドラマの登場人物に本気で恋をする人もいるくらいだから、気にしない人は気にしないのかもしれないけれど。
「サトミ……話が関係のないところにいってるわよ。今は天使達をどうやりすごすかじゃない? 」
ガイアが見かねてつっこんできた。
確かに話が脱線しまくっていた。
天使達はこのままやり過ごせば問題はなさそうだ。定められた行動しかとれない天使達は「俺たちのことに気が付く」という行動がとれないようだ。
俺たちの正体を明かせば天使の行動が変わって世界改変が起こるかもしれない。でも俺は世界改変をコントロールできない。下手に刺激して状況が悪化すると不味いからやめておこう。
「じゃあ、やりすごそうか」
そう、俺が決めたときだった。
「ソロネ様、この中に現住の神がいます」
天使達の中で一番さえない感じの奴がそんなことを言い出した。現住の神っていうのはハチのことだろう。
「教会に現住の神がいるのはさすがにまずいと思います」
教会は天界と下界の教会と決められているが、現住の神にそんなルールを守る義務はない。教会の中の神様……お出かけ中の自称神様が危険な目にあってはまずい、と言うことだろう。
「なんだと? 」
ざわつく天使達。強制的に教会に入ろうと提案しているものもいる。
不味い……中に入ってくる? でも教会……っていうか寺だけど、は、天界と下界の中間にあるから安全なんじゃなかったのか? すっかり油断していた俺は慌てた。
「ちょっと待ってください」
そんな俺たちを見ていたガルムが唐突に話を仕出した。
「天使様達は行動が決まっているはずです。ここで教会に侵入することが定められたことなのですか? 」
「貴様は? 」
「私はガルム。ニュール様に使える者です」
ガルムはあっさり正体をばらした。この場で正体がバレテよくないのはハチともしかしたら俺だけだから名乗っても問題ないという結論に達したようだ。
ニュールの名を聞き、ざわつく天使達。
ニュール……お前結構有名人なのか?
当のニュールは難しい顔をして考えてます風な表情をしているが、特に何も考えていないみたいだった。
「全ては主の掌の内にすぎない。私たちがどんな行動をとろうとも、全て予定されたことなのだ」
だから教会は入るのも問題ないと言い出す天使達。
なんか、なんか嫌だな。この天使達。天使なら天使らしくしてほしい。プレセぺとか最初に会った天使とか。力はあまり強くはなかったのかもしれないけど、行動は天使らしかったぞ。
「あなたの言うことも一理あります。私達は私達の役割を果たしましょう」
以外にも立ち去ると言い出したのはソロネだった。他の天使達を引き連れて一時離れるといいだした。
「主が現住の神を亡ぼせと言うのならすぐに会うことになるでしょう。それと、この教会の神様にこれを……」
ソロネはオリンポス人によって殺されてバラバラになった神様を再び繋ぎ合わせた……ややこしいが見かけは人間の遺体を置いて去って行った。
「とりあえず危機は去ったのか? 」
「さぁ」
ガイアはうやむやに言った。天使の心は読まなかったのだろうか? それとも読めなかったのだろうか?
「本当に主に一任しているみたいだからわからないのよ」
なるようになるってことらしい……それにしても、これどうするんだ?
力なく横たわる神様の遺体。直視するのが嫌な俺は視界の隅に追いやりつつ思った。触るのも運ぶのも放置するのも嫌だ。




