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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
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区切り

 ロレンスは目を覚ました時、目の前で泣いているリューネに戸惑った。

 記憶はある。まるで実感は伴わないが、自分は奴隷を見下していた自分の心を恥じていたらしい。

 正直言ってその感覚は今はもう理解できない。

 ただ、天使に諭された記憶もはっきり残っている。


『お前は罪人だ。だがすぐにでも裁かれねばならぬ決定的な罪人ではない。お前には時間がある。生きている時間が。その間に罪を償うがいい。魂を磨くがいい。その権利がお前にはあたえられている』


 天使は自分の心は罪だと言った。ならば悔い改めなければならないのだろう。

 自分の心に逆らって恐る恐るリューネを抱き留める。

 リューネはそれを返してくれた。

 それはとても大切なものだ。ロレンスは久しぶりに実感を持って感じることができた。


 ……


「お世話になりました」


 ロレンスは俺に深々と頭を下げた。

 エキドナによって壊されたリューネのアミュレットはそのエキドナにより修復されている。

「この歳まで鍛錬を怠っていたんだから、例え天界に連れていかれても二年後の試験で落とされるわよ? 」とはエキドナの談だ。その程度の力だから封じるアミュレットの修復も容易だったと言っていた。


 ロレンスとリューネと従者はもといた街に帰るという。俺たちはこれから盗賊の町に向かう。ここでお別れだ。

 リューネはジェイドにお別れの挨拶をすましている。


 ロレンスは俺の眷属でありながら俺から離れる道を選ぶという。そういうのもありなのか? と俺は意外に思う。

 できれば俺の隣にべったりくっついてるエキドナにも見習ってほしい。

 俺に可愛がって欲しいハチも大変迷惑している。

 ほら、今だってハルに撫でられてとても喜んで……て、このやろう。裏切り者め。


「ねぇ、サトミ。私に新しい名前を付けてよ」


 エキドナがそんなことを言い出した。

「この名前は辛い思い出が沢山あるの。新しい名前で心機一転したいわ」とのことだ。「できれば好きな人と一緒になれて幸せになれた名前がいいわ」とも言われた。

 なんか図図しいよな。お前なんて一生罪を償う生き方がふさわしい。


「わかった。お前の名前はごんぎつね、な」


「わかったわ」


 エキドナは即答した。いやいや…


「きつねだぞ? 明らかに冗談だろう? 」


「構わないわ。あなたが初めてつけてくれた名前だもの」


 エキドナはそういうと俺から離れた。


「でも流石に狐は抵抗があるわね。普段はゴンて読んでくれればいいわ」


「駄目だ! 」


 俺は思わず叫んでいた。この世界では名前が運命に宿命に左右する。ごんぎつねの名前、その宿命は……


「私のことを心配してくれているの? 」


 エキドナはそういうと満足げにほほ笑んだ。


「やっぱり私、この名前にするわ。この名前はどういう宿命を負うのか私にはわからない。でももし不幸な宿命を負うなら、あなたが守ってね? サトミ」


 お前は、どこのヒロインだよ!

 俺は顔が青くなる。

 やばいよ、やばいよ、完全にエキドナの術中だよ……


「サトミさん! 」


 急にチウネが割り込んできた。


「悪魔と仲良くするのは感心しません! 」


 チウネが看病していたおっぱいアーマーの天使は回復すると天界に帰って行った。

 今回のことは主と相談して支持を仰ぐとかなんとか気になることを言っていたので、エキドナが記憶の一部を抜いてしまった。

 不本意ながら、仲間にいると本当に頼りがいがある。


「悪魔なんて失礼ね。こんな美しい天使を捕まえて」


 エキドナはチウネを見下して笑う。


「私はサトミのことが好きなの。アプローチ中なの。関係ない人間はひっこんでなさい」


「関係あります! 私はサトミさんを正しい道に導かなくてはなりません! 」


 ……またうざいこと言いだしたよこいつは。俺はエキドナとは別の意味でうんざりした。

 最近大人しいと思ったらそんなことを考えていたとは。


「そのためにはサトミさんにこの身を捧げることもいといません! 私の初めてを捧げます! 一生添い遂げます! 」


 ブフッーーー!!!

 俺は吹いた。

 その後チウネは「本当は嫌だけど仕方ありません! 」と胸を張って言い放っている。


 嫌だ! もうこいつら嫌だ!

 俺はその場から逃げ出した。

 これはあれなのか? 罰なのか? 蘇生術を使ってエキドナを生き返らせたとき「俺を支えてくれる異性はいないのか? 」なんて思った罰なのか?

 こんな目に合うくらいなら、まだハチに支えられていた方がよかったわ!

 俺は激しく後悔した。


 ……


 アルメリアの体調が戻らないためも瞬間移動の魔法は使えない。カルラの空間転移は距離に制限があり、チウネの空間転移は自分でも成功するかどうかわからないと物騒なことを言っている。

 もうしばらく盗賊たちと行動を共にすることになりそうだ。

 ロレンスには別れを告げられた。ジェイドはどういう選択をするだろう。今はまだわからない。


 プレセぺとヒラキンは2人で旅に出るようだ。何が目的の旅なのかはわからないが、ヒラキンは兎に角エキドナから離れたい様子は見て取れた。


 俺自身の身の振り方はまだわからない。

 アルメリアの仲間になるという約束はまだ残っているが、エキドナが仲間になった以上無視して逃げだしてもよさそうな気がする。

 それは街につくまでにじっくり考えてみようと思う。

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