11月編 第1話 クラスからの祝福
1週間お休みをいただきました。
大変お待たせしました。
今話より11月編に入ります。
11月に入り、だんだんと寒さを感じるようになってきた。
治験にも少しずつ慣れていき、つい先日治験のことを伏せるという条件で面会が許可された。
また友人と会える。
1ヶ月ぶりの再会。
この1ヶ月は大きなことが起こりすぎて、体感的には1年経っているようにも感じる。
「洋一さん、本日も面会者がいらっしゃいましたよ」
「わかりました」
近づく足音。
今日は誰だったっけ。
人数は……複数。
「え、嘘でしょ!?」
クラス全員がやってきた。
病室に入りきらない。
「遼子さん、どうしてこんなことに?」
遼子も困っている。
さては受付は少数人数でやって、後から全員流れ込んできたな?
いくらなんでもやりすぎな気がする。
「やっほー」
「久しぶりだね!」
「元気だった?」
俺は聖徳太子じゃねえぞ?
みんながみんな俺に話しかけてくる。
「み、皆さん落ち着いてください!」
遼子が止めに入る。
当たり前の対処だ。
「みんな来てくれて嬉しいけど、一回病室を出てくれ。後で俺もいくから」
「わかった。待ってるね」
ぞろぞろと病室を出て行く。
部屋に静寂が戻る。
「はあ……」
「はあって……それ、私のセリフですよ。なんですか、これ」
俺にだってわからない。
どうしてクラスメンバー全員が病室に来たのか……。
「と、とりあえず俺が対処してきます。時間になったら教えてください」
「わ、わかりました」
「あ、遼子さんはこのまま病室にいてください」
「言われなくてもそのつもりですよ」
俺のベッドに腰をかける。
そしてため息をつく。
俺は立ち上がってみんながいる廊下に出る。
クラスの皆はガヤガヤ騒いでる。
ここ、病院だぞ?
「みんな、聞いてくれ。まずここは病院だ。頼むからあんまり騒がないでくれ。遼子さんも困ってたから」
「あ、あのナースの人遼子さんっていうんだぁ。結構可愛いよな?」
頭の中がお花畑なやつが数名。
そいつらは放っておくか。
「面会時間は30分しかない。全員と話すのは難しいから、すぐそこに待合所がある。そこで代表者と話そう。どうしてみんなで来たのかも含めてみっちりとな」
「えー?」
「片瀬くんと話したかったよぉ」
話したいなら個人で来い。
「仕方ないだろ? じゃあ先に行ってるから代表者が決まったら来てくれ。ちなみにもう面会時間は15分しか残ってないからな」
「やばいじゃん、早く決めようよ!」
また騒ぎ出した。
お前らこれでも高校生かよ。
もうすぐ社会人になる人の集まりかよ。
そう思いながら、俺は待合所の椅子に腰掛け、テレビを見ながら代表者が来るのを待つ。
5分後。
誰も来ない。
何やってるんだよ。
あと10分だぞ?
さらに5分後。
「おまたせ」
来たのは委員長の莉花だ。
「遅い!」
莉花は手を合わせる。
「ごめん、みんな洋一くんと話したいって譲らなくて……」
どれだけ俺と話したいんだよ。
まだ死ぬわけじゃあるまいし、慌てる必要もないぞ。
「そうか、んじゃあと5分しかないから簡潔に話してくれ。まずはどうしてこんなことをしたんだ?」
「それはね……みんな洋一くんがいるクラスに戻したかったからなの」
俺がいるクラス……か。
確かにもう俺はクラスには戻れない。
俺だって戻りたいと思う時期はあった。
それはクラスの奴らも同じ……ということか。
莉花は話を続ける。
「だからね、先生にも許可をもらって全員で行くことにしたの」
先生ゆるすぎでしょ。
ここ病院だよ?
静かにするところだよ?
それをわかって許可したの?
「ふーん」
ポーカーフェイス……とまではいかないが、できるだけ戸惑いを見せないようにしよう。
「……で、クラスから話したいことって何だ?」
「あ、忘れてた。ちょっと待ってて」
いや、もう時間ないぞ?
待つ時間すらないんだぞ?
いいのか?
「わ、わかった」
莉花は立ち上がってクラスのみんながいるところに向かう。
それと同時に遼子が病室から出てきた。
面会時間はあと1,2分ほどかな。
「委員長、もう時間ないから早くしてくれ」
迷惑を承知で少し大きな声で梨花を呼ぶ。
莉花が急いでこっちに来る。
「もう、そんなに急かさないでよ」
手を後ろに隠して少し怒り口調で言う。
なぜ怒るんだ。
俺、なんか悪いことしたっけ?
「はいよ。で、何か持ってきたってことか?」
「うん。はい、これ」
莉花が出したのはプレゼントボックスだ。
中身はなんだろう。
「何だ、これ」
「忘れちゃった?もうすぐ洋一くんの誕生日でしょ?」
忘れてた。
11月8日は俺の誕生日。
今日が11月2日だから、約1週間早い誕生日プレゼント……というわけか。
まあ、嬉しい。
「開けてみて!」
「ああ」
プレゼントボックスを開けると中には1つの腕輪と30枚以上に及ぶ封筒が入っていた。
封筒にはクラス全員からの手紙が入っているのだろう。
「クラスのみんなでお金を出し合って買ったんだ。みんなー、おいで!」
クラスのメンバーが走ってこっちに来る。
病院だから走るなよ……。
「片瀬くん、誕生日おめでとう!」
声を揃えてかけられた言葉は、今まで感じたことのないものだった。
こんなの初めてだ。
クラス全員からお祝いされるなんて……。
「ありがとう、みんな」
俺は先月失い、取り戻したばかりの満面の笑みを見せた。




