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あやかしあやし  作者: 武者小路 きんぎょ
1章:昼食時の、地獄絵図
9/12

お姫様はハイスペック


「・・・・・おい、優哉!!」


いきなり首根っこを掴まれた俺は、突然忠に引っ張られる。


「さっきのことを頼むチャンスじゃないか!よし行け、親友!主に俺の明るい未来のために!!」

「げほっ・・・そんなの知ったことか!」


一瞬だけ首が締まった俺は、少し涙目になってバカを一蹴する。

定期考査の助力にしても、それを頼むのもすべて誰かに頼りきりとか、どれだけ他力本願なんだ。


そもそも妹である愛沙はともかくとして、姫に関わるとロクなことにならない。

その行動がどれだけ俺にとってリスキーなことか。それこそ主に俺の平穏と身の安全のために何が何でもそんな事態になるのは回避しなければならないのだ。


「ちょっと!何てことするんですか!」


・・・・・遅かった。


忠をジト目で睨んでいたので、油断して反応が遅れてしまった。

今度はいきなり反対方向に頭が引き寄せられ―――――何か柔らかすぎる物体に包み込まれる。


「あなた、優哉を殺す気!?可哀そうに、苦しかったでしょう?もう、大丈夫ですからね~」

「ちょちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ天河さん!何で俺、悪者にされてるの!?」

「優哉に危害を加えるなら、悪人に決まってます!あなたは私の敵に認定です!」

「姫ちゃん、落ち着いて。それから気付いて、お兄ちゃんタップしてるから。あと、抜け駆け禁止」


軽く首を絞められた直後に、俺の顔は姫の豊か過ぎる双丘(・・・・・・・)に埋められて今度は息の根を止められそうになっていた。


「あら?ごめんなさい、優哉」

「ああ・・・・・うん、大丈夫」


分かってる、悪気はないんだ。


生まれた時からお隣さん同士、という非常にベタな関係の俺と姫、そして愛沙は幼馴染というやつだ。

何をするにも一緒、どこへ行くのも一緒。幼馴染と言うよりは実の兄妹(俺の方が誕生日が早い)のように俺たちと育ってきた姫は、俺に対して羞恥心が麻痺しているのか高校生になった今でも過度のスキンシップが多い。


そりゃあ、子供の頃はさらにベタだけど一緒に風呂に入ったりもしたさ。

でもいつの頃からか俺の方が恥ずかしくなってきて、以来必死で距離を取ろうとしている。


姫が普通の子であれば『仲の良い幼馴染』というスタンスも取れたんじゃないかと思う。

まぁ・・・彼氏彼女としての関係に発展する可能性も、あったかもしれない。


けど、道を歩けば10秒に1回のペースで男に声をかけられ、人通りの多い繁華街では30分に1回は芸能関連事務所にスカウトされる美貌と。

異性を魅了し、同性からも羨まれるほどの抜群なスタイルと。

高校1年生ながら一つだか二つ、博士号を取得するほどの頭脳と。

週に1度は運動競技関係者が高価な菓子折りを持参し、破格の契約金と年棒を提示するほどの運動能力と。

それでいて決して増長することのない、誰からも好かれる温和で謙虚で社交性の高い性格と。

そして、人類の未来を託されるほどの特殊能力と。

そのすべてを兼ね備える、ウチの自慢の愛沙のスペックを各種余さず何段階かグレードアップしたような超級美少女に成長してしまった現在では、近すぎる距離は俺にとって命取りになりかねない(・・・・・・・・・・)


「・・・・・ひぃっ!」


忠と違って俺と姫の関係を知らずに呆然としていた理々が、突然に小さな悲鳴をあげる。


・・・・えぇ、俺は気付いてましたとも。

男女、学年、学科を問わずにこちらに向けられる刺すような視線を。

羨望、嫉妬、果ては憎悪っぽいのまで混じっている。


分かってもらえるだろうか。

別に俺は姫のことが嫌いだとか、そんなんじゃないんだ。


親しげに話すだけでその後廊下でのすれ違いざまに方々から舌打ちされるほどの人気者に関わると、絶対に俺の身に直接間接の危険が迫るんだ。

愛沙は妹だから、という点でかなり緩和されるが、姫の場合は俺たちの認識がどうであれ、他人。シンパやら親衛隊やらファンクラブやら―――――


「ちょっと、あんた!!」


―――――取り巻きやらに絡まれる、という結果に繋がる。


「あんた、一般クラスの生徒よね?何調子に乗って『聖女』様と話をしてるわけ!?」

「いや、別に俺は」

「立場をわきまえなさいよ!あんたみたいなのは『聖女』様のお姿を拝見できるだけで幸せなんですからね!話をするなんて身の程知らずもいいところだわ!!」


ああ、取り巻きじゃなくて狂信者の方でしたか。


「はいはい、俺が悪ぅございました。忠、理々、行こうぜ」


こんなことにも慣れっこだけど、もちろん気分のいいものじゃない。

それは俺だけじゃなくて姫もそうだろうと思う。


一度だけだが、『聖女』でいることに疲れた、と俺たちだけに漏らしたことがある。

確かにもろもろ高次元スペックの超級美少女でも、つまるところは16歳の女の子だ。周囲の期待を通り越した、崇拝に近いような扱いには正直辟易しているんだろう。


でも、逃げることは許されない。きっと、死ぬ瞬間まで。

タイトルの『お姫様』は『おひいさま』とお読みください。

・・・特に意味は変わりませんが(笑)


愛沙は妹なので鉄板、姫は幼馴染なので鉄板だったんですね~

次の鉄板は何にしましょうかね?


・・・え、教師?

出るかもしれませんね~(ニヤニヤ)

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