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4-2話 お仕事をするのです

「う、う」


 福光まであと一歩というところで、盗賊の足が止まり、膝をつく。


「え、何」


「おええええ」


「きったねえ。吐きやがった」


 福光を斬ろうとしていた盗賊だけでなく、他の盗賊も嘔吐し始める。


「どういうこと?」


 困惑している福光をよそに猫田が命令する。


「今がちゃんすなのです! 盗賊を倒すのです」


「おりゃあ」


 黒井が覇気の無い声をあげながら、鞘で盗賊を殴る。殴られた盗賊は気を失って倒れる。

 残りの盗賊もスズと葉尾で昏倒させる。


「で、こいつらどうすりゃいいんだよ」


「・・・・・・縛って地面に置いておけば良い・・・・・・俺たちにこいつらのために戻る時間はない」


「それは名案だ」


 黒井と葉尾、スズで藤本が持っていた縄で縛る。


「スズ、怪我をしているわ。腕を出して」


「すまない・・・・・・」


 福光がスズの傷を治癒させる。すると、商人がおずおずと、近づいてきた。


「皆さん。本当にありがとうございま・・・・・・おえええ」


 商人は嘔吐した。


「大丈夫ですか」


 福光が商人の背をなでる。


「で、これはなんだ。ガキの魔法か」


「そーなのです。吐き気を引き起こさせる魔術なのです」


「糞ほど胸くそ悪い魔術だな」


「そんなことないのです」


「でも、今回はお前のおかげで助かった。ありがとな、猫田」


「礼には及ばないのです」


「っけ」


「その態度はないんじゃないの」


「そのガキいなくたってオレは勝てた」


「はいはい。でも、猫田がいなかったら、今頃私は死んでたかもしれない。私からも礼を言うわ」


「礼はいらないのです」


「そういう素直じゃないとこかわいくないわよ」


 本当なのです、という言葉は飲み込んだ。猫田は川谷から仲間同士で助け合うのはあたりまえと教えられている。一々礼を言う必要はないと考えているのだ。

 猫田は吐物の隣に縛られ転がされている盗賊たちに目を向ける。まだ吐き気が収まっていないのかえずく盗賊たち。効果が切れれば縄を振りほどいて追いかけてくる可能性がある。


「先を急ぐのです」


「なあ猫田。藤本さんのえずき治してやってくれないか」


「先ほど腹の中身を全部吐き出しましたが、まだ吐き気が収まんなくてですね、おええ」


「猫田は治し方など知らないのです」


「やっぱ糞ガキじゃねえか」


「わ、わたしがなんとかしてみるわ。できるかどうかわからないけど。藤本さん、座れますか?」


「なんとか」


 福光は藤本を座らせて、何やら呪文を唱え始める。


「・・・・・・日が暮れてきた・・・・・・暗くなる前に野営する場所を探す必要がある・・・・・・」


 スズがぼそぼそ呟いた。


「藤本さん大丈夫?」


「だいぶよくなりました」


「・・・・・・俺が引こう・・・・・・」


「あ、ありがとうございます」


 スズが藤本から手綱を受け取ると馬車を誘導し始める。


「でも、猫田おまえ本当にすごいな。あんな大人数に同時に魔法をかけられるなんて」


「別に普通なのです」


「なあ、猫田。おれたちの仲間にならない・・・・・・」


「はああ! ふざけんなよ黒井! 誰がそんな糞ガキ仲間にするかよ!」


 カウンターのように早い反応を示す葉尾。


「猫田と黒井たちはすでに仲間なのです」


「そういうことじゃなくて、契約が終わったあとも。正式におれ達のパーティーに入るって意味」


「それは無理なのです」


 即答する猫田。


「そっか。わかった」


 歯切れのよい返事をする黒井。


「だと、思った。安心したぜ。こんなガキがママのところから離れられっかよ」


「・・・・・・ママ」


 急に歩みを止めた猫田。だが、すぐに歩き始めた。


「なんだよ、あのガキ。ますますわかんねえな」



 

 


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