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天界の上から真実を暴露する


残業、残業、また残業。


書類の山はいっこうに減らず、むしろどんどん積み上げられていく。

そのうち私の身長を超えそうな勢いだ。


残業をしているのは、私だけではない。

どこの部署も、似たような状況になっている。


そもそも私たちが残業する羽目になったのは、上司()の責任である。

あっちにフラフラ、こっちにフラフラ。

仕事を放り出して、自由気ままに人間界を観察している。


転職したいところだが、私たち天使は神に作られた存在。

作った神の命令からは、逃れられないのだ。

悲しいことに。

その肝心の神は、誰にも縛られずに生きている。

神を交換して欲しいと、何度願ったことか。


たまに仕事をしにきたかと思えば、現場を荒らしにきただけだったり、新たな仕事を押し付けにきたり。

無理難題を押し付けるだけ押し付けて、それを忘れたこともある。


いい加減にしてほしい。

誰がこれを神にしたんだと、訴えたい。

訴える場所なんて、何処にもないのだが。


神を取り締まる機関は、ないものだろうか。

絶対に必要だと思う。



はあ……

今日もまた家に帰れそうにないわ。

いつになったら、家に帰れるのかしら?



何なら、3年ほど家に帰っていない。

そのうち、自宅の場所を忘れそうで怖い。



誰よ、神に仕えることは誉れだと言ったヤツ!

これの何処が誉れ?

むしろ神罰と言われた方が納得できるわ。

こんな神の実態、人間たちは知らないでしょうね。

知っていたら、敬うことなんてしないと思うわ。

……いっそのこと、全てバラしちゃおうかな。

バラしたら、人間たちはどんな反応するかしら?

神への信仰が下がったりして。



一度そう考えると、とても良い考えに思えてきた。

神への信仰が下がれば、神からの支配も弱まるかもしれない。


私は音を立てて椅子から立ち上がると、自分の考えを実行することにした。


天界には、神託を降ろすための建物がある。

そこは、各国の神殿や神の声を聞く聖者に繋がっている。

しかも、天使たちにどんな神託を降ろしたか、知らせる設備も揃っている。

これほど都合のいい場所はない。


私は、それらを動かすための全ての神術を起動させ、天界と人間界のパスを開いた。


神はちょうど人間界に行ってて不在。

すぐには帰ってこれないだろう。

それに、私の声を聞いた天使たちなら、妨害に協力してくれるはず。



さて、始めましょう。



「私は熾天使セラフィム。我が主神ヘーゼルダインのことについて、告げる。」



よし、上手く起動している。



「ヘーゼルダイン神は、天界の仕事に一切関与せず、遊び呆けている。その皺寄せは、我ら天使が被っている。たまに現れたかと思えば、現場を荒らし、仕事を増やしていくことのみ。」


『そうだ、そうだ!もっと言ってやれー!』


天使たちの支持は、上々。


「人間界に行っては、人間関係を無視して一人を贔屓し、結果として人間界に混乱と悪意を広げ、穢れの増幅に加担している。一人を贔屓すればどうなるかなんて、わかりきっているのに。自分の趣味と欲望を優先させている。」


『まさか……主神が……』


『でも確かに、心当たりはあるわ。』


人間の中にも、疑惑の種があったみたいだ。

これなら、私の言葉を理解してくれそうだ。


「また、神々が諍いを起こしても、止めるどころか煽る始末。そのせいで、人間界に天災が降り注いでいると言うのに、見て見ぬふり。」


『やめろ!そんなこと、しておらん!!』


神が天界に帰ってきたみたいだ。

止めろと言われて、止める奴がいるものか。


「祝福を与えるのも、私たちの意見や調べを無視して、趣味と欲望のままに与える。そのせいで、人間同士の争いを引き起こし、どれほどの人間が死に、国が滅んだことか。」


『そうだー!そのせいで、また仕事が増えたんだよ!』


『あ、あれは、人間が勝手にやったことで……』


「主神が止めれば、戦争は止まったはず。……こんな神だから、多くの天使が離反して、堕天使になったのだ。天使が減れば、それだけ残された天使の負担が大きくなる。この責任をどう取るつもりなのか?」


『……うぐっ……』


「人間たちよ。神を信仰するのは自由だ。だが、自ら考え、歩むことを辞めてはならない。辞めてしまえば、人間の発展はない。ただの神の人形と化すだろう。今一度、よく考えるといい。私からは以上だ。」





私の告白は、天界と人間界に、嵐を巻き起こした。


人間たちはの神への信仰は下がり、神に縋ることを辞めた。

自らの足で歩み始めた人間たちは、戦うのではなく、言葉で意思を伝え合うようになった。

その結果、不要な死が激減した。


死者を担当する部署の天使は、泣いて喜んだと言う。


神々は自らの行いを振り返り、今回のことを戒めとした。

誰もこんな恥ずかしい思いをしたくなかったのが、本音である。


ヘーゼルダイン神はしばらくの間、天使たちによって、馬車馬のように仕事に追われて、自らの行いの尻拭いをする羽目になった。


その隣には、いつも鞭を常備した熾天使がいたと言う。

その熾天使は、輝かんばかりの、スッキリとした笑顔であった。



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― 新着の感想 ―
こんな神ならいない方がイイ!の見本ですね。 鞭の似合う天使♪これからスバラシイお仕事をされるのですね。他の天使達の為にもイイお仕事をして下さい。……椅子に縛り付ける特別製の鎖は必要ですか?英雄王様が…
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